リスク管理アプローチを応用した安定的年金制度設計に関する研究

文献情報

文献番号
200400130A
報告書区分
総括
研究課題名
リスク管理アプローチを応用した安定的年金制度設計に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 眞理子(東京大学先端科学技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、公的年金制度の財政運営にリスクをもたらすさまざまな要因の影響について分析し、制度の基本と財政収支を安定的に維持するメカニズムの設計方策について、フィードバック・ルールの設定も含め、その方向性、可能性を研究することを目的としている。
研究方法
2003年度においては、1980年以降の公的年金財政について、財政再計算を中心に主要な変数に関する想定をその後の実績推移と比較・検証するとともに、シミュレーションを可能とする財政収支モデルの骨格の構築を進めた。
2004年度においては、2004年改正制度とこれに伴う最新データに基づき、2060年までの財政収支モデルを構築し、モデルの精度の検証と経済変数を中心としたシミュレーションを行った。財政収支モデルは、2004年改正制度に基づく財政見通しと比較可能な形で国民年金勘定、厚生年金勘定の財政収支が分析できる年次モデルとして構築されている。代替的な経済環境や人口動態の下でのシミュレーションを行い、感度分析やリスク分析等により公的年金の動態的な財政構造を分析した。
結果と考察
上記財政モデルを用いて賃金上昇率、インフレ率、運用利回りに関する感度分析を行うとともに、これら変数を確率的な変動を有する形でモデル化することによってリスク分析を行い、合わせて支給開始年齢変更の効果についても検証した。シミュレーション等の分析を通じて明らかになった点は、21世紀前半を展望した場合、第1に現在進行している少子化に対しては早急に対策をとることにより20世紀後半の見通しを変えてゆく必要があること、第2に今回検証した範囲では賃金上昇率変動の影響が大きく、厚生年金財政における所得変動リスクが大きいこと、第3に経済変数の年々の変動に伴う財政収支変動リスクの大きさはモデルのパラメータの値などに依存するものの、軽視できる規模ではないことなどである。
結論
厚生年金においても世代間移転の割合が高まる傾向がみられるが、シミュレーションの結果は、その中期的な動向は2004年改正制度の下でも賃金上昇率の推移に大きく左右されることを示している。このため報酬比例部分を中心とした厚生年金財政の安定的な運営方策に関する研究が次年度課題の重点の1つである。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-