介護予防対策の費用対効果に着目した経済的評価に関する研究

文献情報

文献番号
200400123A
報告書区分
総括
研究課題名
介護予防対策の費用対効果に着目した経済的評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
新開 省二((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団東京都老人総合研究所(地域保健研究グループ))
研究分担者(所属機関)
  • 川渕 孝一(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医療政策学講座)
  • 藤原 佳典((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団東京都老人総合研究所(地域保健研究グループ))
  • 渡辺 修一郎(桜美林大学大学院国際学研究科老年学専攻)
  • 寺岡 加代(東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科口腔教育学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
6,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、介護予防対策を全国で先駆けて実施してきた群馬県草津町および新潟県与板町をモデルとして、介護予防対策の費用対効果に着目した経済的評価を行うことを主な目的としている。本年度はこれまで構築してきたデータベースを活用して、「介護予防健診」と「介護予防事業」の経済的側面からの効果分析を行った。
研究方法
群馬県草津町における平成14年、15年の介護予防健診を受診した群(512人と428人)と受診しなかった群の2群間で、平成13年から15年までの老人医療費および介護給付費の推移を観察した。また、2群間の身体、心理、社会的特徴を比較し、群間での医療費、介護給付費の差異をもたらす要因を探った。さらに、新潟県与板町における平成13年から15年に開催された介護予防事業(交流サロン、転倒予防、痴呆予防)に参加した70歳以上の住民149人と非参加群983人の2群の間で、平成12年度から15年度の老人医療費と介護給付費の推移から、介護予防事業による医療・介護給付費の増加抑制効果を算出した。
結果と考察
介護予防健診の受診群は非受診群に比べ、健診前後の期間(平成13年から15年)を通じて平均医療費や介護給付費が低く、その傾向は健診前後で変わらなかった。性、年齢、健康度(生活機能や疾病の有無など)を調整しても、2群間の医療費の差は有意であった。このことは、健診受診そのものはその後1、2年の医療費や介護給付費に影響を及ぼさない、②健診受診群は、もともと医療や介護サービスの消費が少ないことに関連する何らかの健康意識や健康行動を有していること、を示唆している。一方、介護予防事業への参加群は非参加群に比べ、医療費の水準は高いもののその伸びは抑制され、介護給付費は低く増加の程度も小さかった。非参加群に比べた参加群の医療・介護給付費の増加抑制の総額は3年間で約1億円(性、年齢、生活機能の自立度の違いを調整すると6,461万円)と算出され、これは介護予防事業の独立した効果とみることができる。
結論
介護予防事業は費用対効果の優れた保健事業である。今後、介護予防健診でハイリスク者を効率よくスクリーニングし、介護予防事業へと結びつけることができれば、地域全体の老人医療費や介護給付費の増加を抑制することが可能であろう。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-