社会保障における少子化対策の位置付けに関する研究

文献情報

文献番号
200400114A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障における少子化対策の位置付けに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
勝又 幸子(国立社会保障・人口問題研究所(企画部))
研究分担者(所属機関)
  • 田中 徹(国立社会保障・人口問題研究所(企画部))
  • 千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所(国際関係部))
  • 守泉 理恵(社会福祉法人 恩賜財団母子愛育会、国立社会保障・人口問題研究所客員研究員)
  • 上枝 朱美(東京国際大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
少子化対策の視点として世代間の私的援助関係に着目し、その実態と意識を調べ、従来の少子化対策をより大きな枠組みで次世代育成支援対策へと発展させるためにどんな施策が提案できるかを検討することを目的とした。
研究方法
政策研究で少子化対策の現状を確認し、実証分析の基礎となる社会調査では、世代間の私的移転の実態を明らかにするため、『親子世帯間の援助の実態と意識に関する調査』を行った。調査では、祖父母の世帯とその孫のいる子世帯(成人子世帯と呼ぶ)の間にどのような援助(支援)関係があるかを明らかにした。調査の視点は金銭的な移転として経済的援助の側面と養育支援として世話的援助の側面の二側面から実態をあきらかにすることであった。経済面ではいわゆるシックスポケットといわれる傾向の実態を調べた。また、「援助関係」の理解のために、心理学や社会学の分野における研究蓄積をサーベイした。
結果と考察
政策研究では、児童手当制度の少子化対策における位置付けをその財源の平成12年度改正の変化の整理とともに明確化する必要を指摘した。社会調査では、世代間の援助関係について調査結果から実態を明らかにするとともに、どのような要因によって援助関係が説明できるのかを、家族や公的支援に対する意識の違いなども踏まえて分析した。経済的支援においてはこづかいとプレゼント以外はほとんど孫への移転は行われていないことがわかった。経済的援助は成人子世帯の所得の低さなどとは無関係でることがわかった。一方、高額贈与については、祖父母世帯の経済力が大きく影響しており、住宅取得のための生前贈与などを通じて間接的に成人子世帯へ移転される実態がわかった。世代間の世話的支援関係では、娘と両親の間の援助関係が頻繁で密接であること、意外にも娘の父親の支援も多いことがわかった。また、成人子世帯の夫が家事・育児に関われない状況にあるときに夫の母親の援助があることがわかった。成人子世帯の予定子ども数を達成するのに良い影響を与える事項として、日常的な援助や家計援助や教育費援助などがある。
結論
経済的な移転は日常の援助よりも高額贈与を通じた資産形成によって成人子世帯へ移転される傾向があることがわかった。世代間の援助関係は必要に応じて行われているというよりも、各親子間の住居の距離や祖父母の意識の違いに応じて行われている。世代間の意識の違いに配慮した対策が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200400114B
報告書区分
総合
研究課題名
社会保障における少子化対策の位置付けに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
勝又 幸子(国立社会保障・人口問題研究所(企画部))
研究分担者(所属機関)
  • 阿萬 哲也(国立社会保障・人口問題研究所(企画部))
  • 田中 徹(国立社会保障・人口問題研究所(企画部))
  • 千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所(国際関係部))
  • 守泉 理恵(社会福祉法人 恩賜財団母子愛育会、国立社会保障・人口問題研究所客員研究員)
  • 上枝 朱美(東京国際大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
少子化対策の視点として世代間の私的援助関係に着目し、その実態と意識を調べ、従来の少子化対策をより大きな枠組みで次世代育成支援対策へと発展させるためにどんな施策が提案できるかを検討することを目的とし、政策研究と実証研究を行った。
研究方法
政策研究では次世代育成支援対策や子育て支援対策の定義や位置づけの国際比較と我が国の児童手当制度の改正とその背景についてまとめた。実証分析では、まず先行調査データによる予備的分析を行い、その考察を踏まえて、世代間の私的移転の実態を明らかにするため、『親子世帯間の援助の実態と意識に関する調査』を行った。調査では、祖父母の世帯とその孫のいる子世帯(成人子世帯)の間にどのような支援関係があるかを明らかにした。調査の視点は経済的援助の側面と養育支援として世話的援助の側面の二側面から実態をあきらかにすることであった。
結果と考察
次世代育成支援対策としては諸外国と変わらない政策を実行しているが、財源投入が小規模なことが特徴である。児童手当についても、財源の求め方など次世代育成支援を明確に打ち出した制度の充実が必要である。世代間の私的移転の実態を踏まえた実証分析からは、世代間の経済的移転が日常的には孫へのこづかいやプレゼントといった小規模なものに限られている一方、生前贈与を通じて豊かな高齢者(祖父母)世帯から成人子世帯へ多額の移転が行われていることわかった。どんな時に経済的援助関係がより密になるかについては、経済的な必要などのニーズではなく、祖父母世帯の孫に対する意識に影響される部分が多く、成人子世帯と同居していると他の孫に対するこづかいが減るなどの影響があった。世話的援助関係では、成人子の妻方の祖父母との関係が密であり、特に娘(成人子の妻)と母親(祖母)の関係が精神的にも実際の援助においても密であったが、父親(祖父)の援助も夫(成人子の夫)とその両親に比べて密であることがわかった。子育て支援への意識では成人子世帯はより公的な援助を期待し、祖父母世帯では家族内の援助を期待しているというギャップがあることがわかった。
結論
少子化対策を次世代育成支援対策へと発展させるためには、政策面では児童手当などの既存の制度の位置づけの確認とその充実が重要である。世代間の子育て支援に関する意識の差と所得再分配効果を踏まえて私的支援関係を阻害しないような配慮が社会保障政策上あるべきである。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-