医療と福祉の産業連関に関する分析研究

文献情報

文献番号
200400112A
報告書区分
総括
研究課題名
医療と福祉の産業連関に関する分析研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
宮澤 健一((財)医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 坂巻 弘之((財)医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)
  • 山崎 学((財)医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
5,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、2000年産業連関表に基づき、医療と介護・福祉の経済産業システム全般の中での機能連関を究明することを目的としたものである。特に、独自に開発した物財-サービス部門間交流の「内部乗数=外部乗数の産業連関モデル」を活用し、物財=サービスの相互誘発、生産誘発に加え、所得=消費の追加波及、介護と医療との連関についての詳細な分析を行った。
研究方法
本研究は、以下の視点の検討を加えながら、「公共経済と医療=介護・福祉分析用産業連関表」を作成した。①サービス経済化の動向は、公共サービス化を伴い、少子高齢化はその傾向をさらに強めるが、その影響はどのように現れ、医療と介護および福祉の活動はその中でどのように位置付けられるかを分析。②生産波及効果を公共サービス部門間で比較。また、最終需要の配分と波及効果、誘発の需要項目別依存度を検討。③各産業の雇用係数を基礎データとし、各産業への雇用誘発を検討し、部門間・部門特性からみた雇用誘発効果を比較。④二次・三次の追加波及を考慮し、所得形成・消費誘発のフィードバックの究極効果を考慮した分析。⑤公共事業から福祉医療介護施設の住宅・非住宅建築へのシフト・投資配分比率の変更について、その効果を検討。
結果と考察
民間サービスはサービスがサービスを呼ぶ内部乗数が高いのに対して、公共的サービスは内部乗数が低く、物財産業誘発的な特性を持つ活動も多い。また、製造業は一般に非製造業の諸部門に比べ、「もの」の生産が「もの」の投入と生産を呼ぶ「物的産業内部乗数」の波及効果は大きく、サービス産業の誘発を通じて製造業にはね返る「物的産業外部乗数」の波及効果は低いが、医薬品産業は製造業のこうした一般的傾向に逆行する特性を示す。
医療や介護・福祉の生産波及の一次効果は、公共事業よりも全般的に1~2割低いが、生産増が所得増・消費増を呼んで生産に「追加波及」する効果を加えると、結果は逆転する。また、雇用誘発係数は、全産業平均に対して公共事業はやや高めであるが、社会保障諸部門は全てがこれを上回り、社会保障関連の公共事業に対する雇用効果の優位性が表れている。
結論
本研究は、経済産業システム全般の中での機能連関を究明することを目的として、産業連関表を活用し、産業ごとに特有の投入-産出の依存関係を明らかにすることができた。さらに、本研究では「介護」部門を新設し、医療と福祉・介護の関係を分析することに一つの力点を置いたところである。また、政策的にも、経済社会全体における医療福祉介護政策を検討する際の重要なデータを提供するものであり、重要な研究意義をもつものであると考える。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400112B
報告書区分
総合
研究課題名
医療と福祉の産業連関に関する分析研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
宮澤 健一((財)医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 坂巻 弘之((財)医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)
  • 山崎 学((財)医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療と福祉をそれ自体として検討するだけではなく、経済社会全体の中での課題・問題点を点検することは極めて重要である。医療と福祉を広く公共サービスの中に位置付け、全体的な機能連関の視点から、その働きとあり方を解明することが求められる。本研究では、この経済産業システム全般の中での機能連関と、活動毎に特有の投入-産出の依存関係を究明することを目的とし、併せて公共政策との関わり方を明らかにする。
研究方法
研究は2年研究で実施し、初年度は、産業連関表1995年表と2000年表における「医療・保健・社会保障・介護」部門の変化を点検した。2年度は、2000年表をもとに、独自に開発した物財-サービス部門間交流の「内部乗数=外部乗数の産業連関モデル」を用いて、公共経済のなかの医療と介護、福祉の機能連関を究明し、物財-サービス部門間の誘発と「内部乗数=外部乗数の波及効果」の分析を行った。
結果と考察
2000年における「医療・保健・社会保障・介護」部門の国内生産額は約44兆円(全体の4.6%)で、粗付加価値額は約26兆円(同5.1%)であり、国内生産額とともに32部門中8番目に位置した。また、サービス化・公共サービス化の中の医療・介護・福祉についての検討では、公共的サービスは内部乗数が低く、むしろ、物財産業誘発的ないし物財部門依存的な特性を持つ外部乗数が高い活動も多く、物財産業への下支え的な側面を持っているなどの特徴を明らかにした。社会保障制度の基本機能に関しては、今日の少子高齢社会に対応できる、安定かつ信頼できる制度誘引が欠かせない。また、医療・介護、福祉・保育分野の、伝統的な既存産業分野に対する先端・創造分野としての事業誘引も重要である。産業構造調整の中での、新産業・新市場の展開方向に着目し、この新動向が与える波及効果変化への影響にも留意しながら、その中での医療・介護・福祉など社会保障活動の制度と方向をどう位置づけるかが考察される。
結論
経済社会の中で相互に影響し合う諸活動は、個々の活動特性に応じて、それぞれ異なる他産業からの投入比率と、他産業への産出の比率をもち、各活動特有の投入-産出パターンを示しながら、経済社会全体への波及・交錯が生じている。医療と福祉が示すその特性も、需給バランスと収支バランスの枠組みで表示される産業連関表を用いることで、実証的・計量的に描き出すことが可能である。

公開日・更新日

公開日
2005-04-25
更新日
-