福祉契約と利用者の権利擁護に関する法学的研究

文献情報

文献番号
200400111A
報告書区分
総括
研究課題名
福祉契約と利用者の権利擁護に関する法学的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
本澤 巳代子(筑波大学大学院人文社会科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 新井 誠(筑波大学大学院ビジネス科学研究科)
  • 秋元 美世(東洋大学社会学部)
  • 品田 充儀(神戸市外国語大学外国語学部)
  • 小西 知世(筑波大学大学院人文社会科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険制度・支援費制度の下での福祉契約の在り方、判断能力が不十分な認知症高齢者・知的障害者等のための権利擁護の在り方について、民法・社会保障法の総合的観点から検討する。
研究方法
福祉契約研究会での共同研究(年6回、10報告)
ドイツ人研究者・実務家の講演と意見交換
訪問介護事業所・特別養護老人ホームの契約書・重要事項説明書のサンプリング調査
サンプリング調査対象の訪問介護事業所・特別養護老人ホームに対する聞き取り調査
結果と考察
研究会での共同研究とドイツ人研究者・実務家との意見交換を通じて、①契約という手法の限界把握、②高齢者・障害者の特性に配慮した契約書の作成・利用、③福祉契約の必要的記載事項の法定が必要であることなどが明確になった。利用者の権利擁護のためには、④成年後見制度と福祉サービス利用援助事業の相互補完、市町村長申し立てと措置の連携、任意後見制度の活用、⑤消費者団体による団体訴訟、⑥入所施設の運営への入所者代表・入所者の代弁者の参加、⑦専門性の高い審査者による介護の質に関する指導・助言、介護報酬への反映等により事業者内部からの質向上意欲の高揚などが有効であること等である。聞き取り調査により明らかになったことは、①事業者は契約締結時、本人のほか家族など第三者の立ち合いを求めること、②本人の判断能力が不十分な場合でも成年後見制度の利用は進んでおらず、家族等が契約締結を代行していること、③契約内容である介護サービスの説明に担当者は苦労するのに、訪問介護では契約内容がすぐ変更されること、⑤訪問介護契約に規定されているキャンセル料は請求されていないこと、⑥解約原因には「死亡」など説明しにくい事項があること等である。
結論
福祉契約の特性からして、利用者の選択権保障のためには公的責任による関与、特に契約締結のための支援、契約内容の履行確保のための支援、契約トラブルの迅速な解決のための支援などが必要である。具体的には、①介護保険改正法施行に向けて、契約書・重要事項説明書のモデルの早急な見直し、②利用者の権利擁護のため重要な事項を公法上明記すること、③消費者団体が福祉契約の内容を団体訴訟で争えるようにすること、④市町村長による成年後見申し立てや任意後見の活用促進、⑤介護の質の審査が事業者の質の向上意欲を高めるように審査者の質の向上・介護報酬への反映など、省庁が連携して横断的施策を講じる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400111B
報告書区分
総合
研究課題名
福祉契約と利用者の権利擁護に関する法学的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
本澤 巳代子(筑波大学大学院人文社会科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 新井 誠(筑波大学大学院ビジネス科学研究科)
  • 秋元 美世(東洋大学社会学部)
  • 品田 充儀(神戸市外国語大学外国語学部)
  • 小西 知世(筑波大学大学院人文社会科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険制度・支援費制度の下での福祉契約の在り方、判断能力が不十分な認知症高齢者・知的障害者等の権利擁護の在り方について、民法・社会保障法の総合的視野から検討する。
研究方法
福祉契約研究会での共同研究(3年間で23回、31報告)
H15年11月日本社会保障法学会第44回秋季大会シンポジウム「社会福祉と契約」での報告4件(共同研究成果の中間報告)
H16年10月ドイツ人研究者・実務家の講演と意見交換
H14年度:東京都の指定訪問介護事業所を対象としたアンケート調査
H15年度:指定訪問介護事業所と特別養護老人ホームの契約書・重要事項説明書のサンプリング調査とアンケート調査
H16年度:サンプリング調査対象の訪問介護事業所と特別養護老人ホームに対する聞き取り調査
結果と考察
研究会での共同研究、学会報告、ドイツ人研究者・実務家の講演・意見交換を通じて、①契約手法の限界と公的責任による関与の必要性、②高齢者・障害者の特性に応じた契約書の作成・利用の必要性、③重要な契約事項の法定、④市町村長申し立てによる成年後見制度の利用促進や任意後見制度の活用、⑤消費者団体による団体訴訟の必要性、⑥入所介護施設の運営への入所者代表・入所者代弁者の参加の必要性、⑦専門性の高い審査者による介護の質に関する助言、介護報酬への反映等による事業者の意欲高揚の必要性が明らかとなった。アンケート調査・サンプリング調査・聞き取り調査によって明確になったことは、①事業者は契約締結時に利用者のほか家族等の第三者を立ち合わせ、②本人の判断能力が不十分な場合にも成年後見制度の利用は少なく、家族等が契約締結を代行していること、③契約トラブルの中心は保険対象サービスの範囲と料金に関するものが多く、④事業者は契約内容の説明に時間的労力的負担を感じていること、⑤訪問介護の場合は介護サービスの内容の変化が多く契約方式での対応が難しいこと、⑥事業者・利用者ともに人間的信頼関係に契約は馴染まないとの意識が強いことなどである。
結論
介護保険改正法施行に向けて早急に契約書・重要事項説明書のモデルの改訂が必要である。契約の重要事項の法定と消費者団体による団体訴訟、成年後見制度の普及と任意後見制度の活用、介護の質の審査により事業者内部からの質向上意欲を高揚させる介護報酬や指導・助言システムの構築など、省庁の枠を超えた横断的対策が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-