要介護高齢者の介護サービス需要とその影響要因に関する調査研究

文献情報

文献番号
200400108A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護高齢者の介護サービス需要とその影響要因に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
南部 鶴彦(学習院大学経済学部)
研究分担者(所属機関)
  • 菅原 琢磨(国際医療福祉大学 医療福祉学部)
  • 野口 晴子(東洋英和女学院大学 国際社会学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
9,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険制度では、要介護高齢者は、主体的にサービスや提供者を選択することが可能な「サービス利用者」として位置付けられたが、介護サービスの利用実態、需要に関する影響要因について検討した研究は未だ限られている。本研究では個票レベルのデータを用いて、その利用実態を検討した。また介護サービス需要関数の推定等を通じて、いかなる要因が介護需要に影響を及ぼすのか定量的に明らかにすることを目的とした。
研究方法
介護サービス利用状況の正確な把握の為、自治体が所蔵する「介護保険給付管理レセプトデータ」に注目した。協力自治体からは、2000年4月~2004年7月(利用月)の介護保険データを入手した。これらを時系列で整理し、段階別所得情報なども加えて分析データセットとし、これを用いて介護サービス需要関数を推計した。さらに要介護度が推移(上昇・下降)した利用者のサービス利用の特徴などについても時系列データを用いて検証した。
結果と考察
1)2003年度報酬改定の効果と利用者の所得情報を反映したデータを用いて、訪問介護(「家事援助・生活援助」)サービスに対する需要の価格弾力性を推定したところ‐0.09という値を得た。2)利用する事業所によって訪問介護利用者の利用回数に大きな差が生じていることが判明した。3)初年度の計測同様、低所得段階における利用回数格差は認められなかった。4)個票データを時系列で整理し、要介護度推移(「上昇」・「維持」・「下降」)で区分してサービス利用状況を検証したところ、要介護度が上昇した層で「居宅療養管理指導」や「訪問看護」など医療的色彩の濃いサービスの選択率が高いことが判明した。要支援や要介護度1といった「軽度」利用者のうち、要介護度が「維持」或いは「下降」している利用者は、「通所リハビリ」と「訪問介護」の選択率が高い傾向にあった。
結論
介護サービス需要に関する価格改定効果を検討する際に重要な、価格弾力性について「非弾力的」という結果と目安の数値を得たことは、今後の介護サービスの価格改定における重要な参考資料になると思われる。またサービス価格の影響と同時に介護サービス需要に影響を与える要因や程度、要介護度の推移状況とサービス利用状況について、その傾向を把握できたことは今後の介護サービスの需要予測を含め、制度設計上の参考になるものと期待できる。

公開日・更新日

公開日
2005-06-29
更新日
-

文献情報

文献番号
200400108B
報告書区分
総合
研究課題名
要介護高齢者の介護サービス需要とその影響要因に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
南部 鶴彦(学習院大学経済学部)
研究分担者(所属機関)
  • 菅原 琢磨(国際医療福祉大学 医療福祉学部)
  • 野口 晴子(東洋英和女学院大学 国際社会学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険制度では、要介護高齢者は、主体的にサービスや提供者を選択することが可能な「サービス利用者」として位置付けられたが、介護サービスの利用実態、需要に関する影響要因について検討した研究は未だ限られている。本研究では個票レベルのデータを用いて、その利用実態を検討した。また介護サービス需要関数の推定等を通じて、いかなる要因が介護需要に影響を及ぼすのか定量的に明らかにすることを目的とした。
研究方法
介護サービス利用状況の正確な把握の為、自治体が所蔵する「介護保険給付管理レセプトデータ」に注目した。厳密な守秘義務契約のもと、2自治体に研究協力を仰ぎ、継続的にデータの収集・蓄積をおこなった。一方の自治体からは、2000年4月-2003年7月の介護保険データとともに2002年4月までの老人保健データも併せて入手した。もう一方の自治体からは、2000年4月-2004年7月の介護保険データを入手した。これらを時系列で整理し、段階別所得情報なども加えて分析データセットとし、これを用いて介護サービス需要関数を推計した。さらに介護サービスと老人保健サービスの利用関係の検討をおこなったほか、要介護度が推移(上昇・下降)した利用者のサービス利用の特徴などについても時系列データを用いて検証した。
結果と考察
現実のサービス価格変化(介護報酬変化)の影響を反映した訪問介護サービス需要(「家事援助・生活援助」)の価格弾力性は-0.09であった。当該サービスについては、男性の利用が有意に多かった。また所得段階の差によって利用回数に大きな差はなく、低所得者層の利用抑制は、今回の分析では認められなかった。また介護保険利用額と老人保健支出額との関係では、緩やかな負の相関が認められた。「在宅」と「外来」の関係では相関が認められないものの、「施設」と「入院」の関係では負の相関が確認された。また要介護度が重い層で負の相関がより顕著であった。
結論
推定された価格弾力性はさほど大きな値ではなく、2003年実施の報酬引上げに伴う需要への影響はきわめて限定的であったと推測される。性別、要介護度といった要因は、サービス需要に影響を及ぼしていることが確認されたものの、所得の影響は本分析では明確ではなかった。以上の結果を得たデータは、2自治体に限られるため、個人情報の保護に留意しながら、より広くデータの蓄積をおこない、結果の頑健性、一般性を確保することが今後の課題となる。

公開日・更新日

公開日
2005-06-09
更新日
-