サービス利用モデルを用いた給付実績分析による介護保険政策評価研究

文献情報

文献番号
200400105A
報告書区分
総括
研究課題名
サービス利用モデルを用いた給付実績分析による介護保険政策評価研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(筑波大学 人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 荒井 由美子(国立長寿医療センター研究所  長寿看護・介護研究室)
  • 矢野 栄二(帝京大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
  • 濱田 千鶴(鹿児島県串良町役場 福祉課 福祉係)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最終年度では、レセプトデータ分析においては、次期改変の中心である介護予防の観点から、介護予防対象疾患について、その発生予測因子や介護サービスの有効性を検証することを目的とした。ドイツ介護保険制度との比較では、昨年度までの成果からわが国がとりいれるべきと考えられた介護の質の保証のしくみおよび介護者支援制度について、制度の詳細および問題項目を明確化することを目的とした。
研究方法
昨年まで収集した介護認定・給付情報のデータベース化を行い、既存データとあわせて、介護予防対象疾患について、その発生予測因子などの抽出を試みた。また、初回から3年後の地域該当全例を対象とした在宅介護実態追跡調査を実施した。さらに、これまでの成果を実際の事業に反映するために、昨年度に引き続き、介護保険制度の見直し論議を踏まえて、居宅介護支援事業所の質の向上とケアプランの標準化などをめざし、鹿児島県肝属郡5町の介護支援専門員を対象とした研修会を実施した。ドイツにおいては、介護の質の保証政策の重要点である介護の質審査に同行し、さらに、介護者支援においては、介護における労災事故保険適用条件について、現地研究者からの情報収集、文献検索により明らかにした。
結果と考察
 新予防給付の対象となる要支援・要介護度1の認定要介護高齢者について、介護度悪化率の要因分析を行った結果、訪問介護・家事援助などの福祉系サービスの利用者は、訪問看護・リハビリなどの医療系サービスの利用者より悪化率が高いこと、住宅改修サービス受給者は介護度が悪化していたこと、転倒によると思われる大腿頚部骨折の発生が要支援からの悪化に多く、転倒予防が重要であることが示された。
 ドイツ介護保険の実態調査の結果、介護の質の審査を推進すること、警察や法医学を含んだ多職種間の意見交換システムにより質の保証に取り組んでいることが明らかになった。また、今まで具体例がわが国には紹介されていなかった家族介護者の労災事故保険適用条件がより明確になり、家族介護を労働とみなす政策の具体例が明らかになった。
結論
最終年度では、在宅介護実態追跡調査も実施することができ、この結果とレセプトのリンクにより、種々の縦断的分析が可能なデータセットを整備することができた。次期見直しにむけて、介護予防対象の推移との関連要因なども探ることができ、適切なサービス利用の重要性が改めて示された。また、ドイツの介護保険制度においては、質の保証制度および介護者支援制度においてわが国でも取り入れるべきものがあると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200400105B
報告書区分
総合
研究課題名
サービス利用モデルを用いた給付実績分析による介護保険政策評価研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(筑波大学 人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 荒井 由美子(国立長寿医療センター研究所  長寿看護・介護研究室)
  • 矢野 栄二(帝京大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
  • 濱田 千鶴(鹿児島県串良町役場 福祉課 福祉係)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①サービス利用開始およびその後の決定要因、②介護度変遷への影響要因、③施設入所のリスク要因、④介護負担軽減への要因 の4点に影響する要因を、給付実績・行政データおよび独自の調査に基づく多要因をもとに明らかにすること、ならびに、⑤ドイツの介護保険における家庭介護者支援システムを明らかにすることを目的とした。
研究方法
介護者である市町村行政との連携のもと、2600人の認定者に対する、介護保険レセプトデータ、実態調査データ、要介護認定情報、医師の意見書、さらに、人口動態統計(死亡脱落者の把握のため)をもとに構築したデータベースによる実績の評価分析を行った。
結果と考察
①サービス利用開始およびその後の利用への決定要因 においては、独居者、経過措置などの低所得者対策、高所得者が利用開始およびその後の利用を促進していた。また、家族形態によってサービス利用が異なっていた。また、ケアプラン作成者が公的機関かどうかによって利用サービスが異なっていた。初期の3段階の保険料発生の影響の検証では、女性利用者において段階別発生に伴い利用が増加しており、保険料発生による権利意識によって利用が促進された可能性が示唆された。 ②介護度変遷への影響要因においては、性別・疾病ごとに変遷タイプが異なり、疾病別の介護予防対策の実施の重要性が示された。また、介護度変遷には1)家族の要因・疾病の種類の影響が大きいこと、2)利用サービスの比較では医療系サービスの方が福祉系サービス利用者に比べて介護度悪化率が有意に低くかったこと が明らかになった。 ③施設入所のリスク要因については、低所得・独居であることが利用の最大要因であった。④介護負担への要因 断面調査では、介護者の続柄によって異なることが示された。⑤の国際比較においドイツの介護保険における家庭介護者支援システム(保険保障・労災など)が、現在のわが国にはない検討すべきこととして重要であると考えられた。
結論
介護保険レセプトは、全国的にすべて電算化されている。本研究は、これをデータ化したものに、要介護認定調査結果、医師の意見書データをリンクすることにより、これまでのわが国では得られなかった時系列データベースが構築でき、そのヘルスサービスリサーチとしての分析により、数々の有用な結果が得られることが示された。このように、市町村と研究機関が連携することにより、実証データに基づき公的な介護保険をよりよいものにしていくことが今後ますます重要であろう。

公開日・更新日

公開日
2005-05-09
更新日
-