社会福祉サービス利用契約の法的研究

文献情報

文献番号
200400098A
報告書区分
総括
研究課題名
社会福祉サービス利用契約の法的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岩村 正彦(東京大学大学院法学政治学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 倉田 聡(北海道大学大学院法学研究科)
  • 丸山 絵美子(専修大学法学部)
  • 嵩 さやか(東北大学大学院法学研究科)
  • 中野 妙子(名古屋大学大学院法学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、社会福祉サービス利用のために、利用者と当該サービス提供事業者との間で締結されることになる社会福祉サービス利用契約をめぐる法的諸問題を、比較法的観点も取り入れ、法政策的観点および法解釈論的観点の両面から検討し、今後の法解釈、制度運営および法制度設計の指針を得ることを目的とする。
研究方法
主任研究者および分担研究者が、研究協力者の協力も得つつ、担当する領域について、本研究全体を通しての基礎作業として、関連する文献・資料の収集を実施した。主要国の福祉サービス利用の法制度に関する研究については、上記の文献・資料の収集と検討のほか、海外での現地調査の方法によった。
結果と考察
ドイツの介護保険法では、報酬面でかなり細かい決定がなされているが、他方で、提供されるサービス内容にはあまり関心が払われていなかった。こうした状況は2001年改正法によってかなり劇的に変化することになろう。施設給付については、ドイツでは、サービスの具体化にあたって関係当事者間の共同決定に大きなウエイトが与えられている。
 フランスでは、在宅サービスの提供方式は派遣方式と委任方式とに分かれており、多くは派遣方式を採用しているのが実態である。認可をうけた施設への入所も非常に詳細な契約にもとづいて行われている。
 スウェーデンのルンド市の場合、高齢者福祉サービスはコミューンの直営事業であって、パブリックサービスに対する志向が強い。いわばスウェーデンの古典的・伝統的な社会福祉制度を維持しているといえよう。
結論
わが国では、社会福祉サービス利用契約に関する私法上の規制と厚生労働省による行政規制・監督との連携が十分に練られていない。行政規制で福祉サービスの利用開始時に重要事項説明書を提示することが義務づけられているが、これに記載すべき事項が適切に選定されているかが問題である。福祉サービス利用契約の内容は何かについても、重要事項説明書の内容との関係も含めて、それほど解明が進んでいない。契約内容の一方的変更を、一定の条件の下で認める条項がモデル契約書に入っており、契約例にはこれを踏襲するものが見られる。今後、契約内容の変更に関するルール作りと紛争解決のあり方を早急に検討することが必要である

公開日・更新日

公開日
2005-04-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200400098B
報告書区分
総合
研究課題名
社会福祉サービス利用契約の法的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岩村 正彦(東京大学大学院法学政治学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 倉田 聡(北海道大学大学院法学研究科)
  • 丸山 絵美子(専修大学法学部)
  • 嵩 さやか(東北大学大学院法学研究科)
  • 中野 妙子(名古屋大学大学院法学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
利用者と当該サービス提供事業者との間で締結される社会福祉サービス利用契約をめぐる法的諸問題を、比較法的観点も取り入れ、法政策的観点と法解釈論的観点の両面から検討し、法解釈、制度運営および法制度設計の指針を得ることを目的とする。
研究方法
本研究全体を通しての基礎作業として、関連する文献・資料の収集を実施した。主要国の法制度に関する研究については、上記の文献・資料の収集と検討のほか、海外での現地調査の方法によった。海外の現地調査は、ドイツ、フランスおよびスウェーデンを対象として実施した。
結果と考察
ドイツの介護保険法の状況は、2001年改正によりかなり劇的に変化した。今後はドイツでも介護サービスの定型化が進むと考えられる。在宅給付については、ドイツでは介助行為の類型化がかなり進んでいる。施設給付は、サービスの具体化にあたって関係当事者間の共同決定に大きなウエイトがある。
 フランスでは、在宅サービスは、実施主体が分立しており、サービス利用の法律関係が必ずしも統一的に整備されているわけではない。サービス提供方式は派遣方式が多い。認可をうけた施設への入所も詳細な契約にもとづいて行われている。
 スウェーデンでは、コミューンによって社会サービスの提供体制に大きな違いがある。ストックホルムのように、サービス提供の民間委託が積極的に進められている市とルンド市のように高齢者福祉サービスはコミューンの直営事業のところがある。コミューンによるサービス決定通知が高齢者サービスの利用契約書になる。
 以上の各国いずれについても、高齢者等が判断能力が低下したり、行為無能力となった場合の成年後見制度が整備され、かつよく利用されている。
結論
わが国では、社会福祉サービス利用契約に関する私法上の規制と厚生労働省による行政規制・監督との連携が十分に練られていない。重要事項説明書の内容の選定が適切かが問題である。福祉サービス利用契約の内容になるのは何かも解明が進んでいるわけではない。契約内容の一方的変更を認める条項がモデル契約書に入っており、これを踏襲する契約例がある。介護保険法等による規制で利用者の保護として十分かは問題があろう。契約内容の変更に関するルール作りと契約紛争を専門に扱うADRなどを検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-04-12
更新日
-