地域における健康危機情報の伝達、管理及び活用に関する研究

文献情報

文献番号
200301389A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における健康危機情報の伝達、管理及び活用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
下田 智久(独立行政法人福祉医療機構)
研究分担者(所属機関)
  • 門脇謙(秋田県成人病予防センター)
  • 宮崎元伸(福岡大学医学部)
  • 福田次郎(株式会社三菱総合研究所)
  • 浅見泰司(東京大学空間情報科学研究センター)
  • 相良毅(東京大学生産技術研究所附属戦略情報融合国際研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 がん予防等健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
25,820,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の最終目標は国民が安全で安心できる社会環境の確立を目的としており、次世代の健康危機対策を行うにあたっての情報活用方法を確立することを総合目標として、健康危機管理に関する情報に関する①健康危険情報に関する実態(意識、情報内容、個人情報等)に関する調査研究、②健康危険情報の伝達手段及び経路に関する研究、③健康危険情報の有効な活用を可能とする地理情報を含む総合的な分析・予測・収集・検索を可能とする基礎システムの構築の3分野(5研究)について具体的手法及び支援システムの開発及びガイドラインの作成を本研究の具体的目標としている。
研究方法
健康危機管理に関する情報に関して1.健康危険情報に関する実態調査研究として、①健康危険情報に対する国民意識、情報内容に関する調査研究(宮崎元伸)、②健康危険情報に含まれる個人情報に関する調査研究(門脇謙)、2.健康危険情報の伝達手段及び経路に関する実態及びセキュリティー能力に関する調査研究(福田次郎)、3.健康危険情報の有効な活用を可能とする地理情報を含む総合的な分析・予測・収集・検索を可能とする基礎システムとして、①社会状況を付加したGISシステムの基本構築(浅見泰司)、健康危険情報のGISプロッティングシステムの開発(相良毅)の構築の3分野5研究について実態の把握、具体的手法開発、システム開発及び健康危険情報の取扱ガイドラインの作成をおこなう。(倫理面への配慮)本研究においては、健康危険情報に含まれる個人情報等を対象とすることから、非調査対象者等に対しては口頭及び書面による研究の趣旨等に関するインフォームドコンセントを行ったうえ、書面による同意を得た者のみを調査の対象とした。また、研究において取得した個人情報にかかる情報については調査票及びデータ等に関する管理を厳重に行い漏洩等の不測の事態に備えた。なお、本研究においての個人情報を含む調査等に関しては、それぞれの研究者の所属する機関の倫理審査委員会等の承認を得たうえで実施した
結果と考察
本研究では、①健康危険情報に含まれる個人情報に関する実態把握及び取扱の検討、②健康危険情報及び健康危機情報に関する国民ニーズ調査に関する研究、③健康危機発生位置における曖昧な情報の空間検索及び空間推論技術の開発、④健康危機情報等の通報と共有のための情報システムの開発及び⑤IT関係情報端末等社会資源等に関する実態把握とその健康危機管理面からの分析の5つの課題について調査及び開発を実施した。
①及び②の個人情報及び健康危険情報に関する調査については、国民に関して一度も実施されたことがない事から、時期、質問内容を含めた調査方法の検討に基づく検討を行い調査の実施をおこなった。
③の研究では、方向性に基づく位置探索手法の開発として、現象の伝達過程に関する事例調査および方向性の検討をおこないパラメータの推定及び感染症の流行過程の調査分析に基づく感染の拡大・衰退モデルの分析を行い数理モデルの定式化を行った。
④の研究では、健康危機情報には、位置情報がほとんどの場合存在していることから、地理的分布を図化するための地図のデータベース化とシステムの構築を行った。
⑤の研究では、関係機関に対してヒアリングを行い、健康危機管理に対する情報基盤の把握を行った結果、災害を想定した対応は図られているが、健康危機を想定した対策は図られていなかった。
アンケート調査においては、インターネットで実施し、Web上から入力により回収した結果、短時間でのアンケートにも係わらず24時間で80%以上の回答があった。
海外における事例の研究では、組織対応及び情報公開が重要である事が判明した。
IT端末の評価では、今年度はテレビ付携帯電話の評価を行い、少人数における健康危機管理担当者においては有効な端末であるとの評価を得た。
D.考察
健康危険情報は、対策実施に際して必要不可欠なものであり、個人等に関する情報は対策に際して非常に重要な要素であるが、情報の報告、分析、還元、管理等の各段階での管理徹底の確保が不可欠である。現状で健康危機管理に含まれる個人情報については研究途中である事から不明確であるが、明確化とあわせて健康危機事例における必要情報を分析することで、効率的な対策が可能となると考えられる。
また、情報の活用においては地図上に空間的、時間的情報を含めて掲示することにより、対策の効率化、原因の効率的解明に加え健康危機の早期の発見の可能性も示唆された。
この地図表示の機能に事態の拡大等に関する方向性予測を加えることにより、対策等の効率化が一層図られると考えられる。
情報に関する社会基盤においては、健康危機に対する想定がないことから、規模に応じた対応が必要と考えられる。
また、伝達される情報の秘匿性については機材面に加えて、使用する人間に関する分析が今後と考えられる。
現在の情報機器には情報提供のための社会基盤としては有効であることが示唆された。]
結論
[健康危機に関する情報は情報の内容及び通信基盤双方とも多数の要素により構成されている。
通信基盤においては、通信インフラは使用する側が考える以上の複雑な構造となっている。
また、国民は健康危機に際して早く正確な健康危険情報の提供を望んでいる。
以上のことから、共通した健康危機情報に関する概念と、より正確で迅速な情報提供を行うためには担当者間の人間的ネットワークを中心にそのネットワークを支援するGIS、プロッテイングシステム、移動体通信等のIT技術が有機的に連携する総合的なシステム開発による健康危機担当者の支援が重要であると考えられる。
来年度以降の研究においては、より詳細な分析を行い、健康危機情報における概念の形成と、より具体的な情報、機器に関する取扱のための基準の検討を行っていきたい。

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