総合的な地域保健サービスに関する企画立案及び事業管理に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301385A
報告書区分
総括
研究課題名
総合的な地域保健サービスに関する企画立案及び事業管理に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 十四郎(財団法人日本公衆衛生協会)
研究分担者(所属機関)
  • 新田則之(島根県出雲健康福祉センター)
  • 角野文彦(滋賀県湖北地域振興局地域健康福祉部)
  • 岡田尚久(島根県松江保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 がん予防等健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
36,816,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、具体的な問題点を分析整理し、各保健所等における事業推進及び人的資源の配置等のための参考に資することを目的とし平成15年度から3か年間で実施している。
研究方法
分担研究者(主として保健所長)が、それぞれのモデル地域(原則として地域保健医療圏をベース)を選定し、地域保健に関する特定の課題を定め、その解決のための体制を構築し、具体的に事業を実施し、問題点を明らかにするものである。
結果と考察
本研究は、具体的なシステムづくりを指向しており、各分担研究の概要については以下のとおりである。1.総合的な地域保健サービスの提供に関する研究(企画立案)① 精神障害者の在宅支援ネットワークの構築に関する企画研究 障害者基本計画における重点課題の一つに、精神障害者施策の総合的な取り組みが打ち出され、入院医療中心から退院・社会復帰を可能とするための地域サービス基盤の整備が望まれる中、地域における保健・医療・福祉のネットワークを構築し、精神障害者に対して地域全体での支援を促進した。② 精神障害者の地域医療の推進を目指した退院支援のための企画立案研究 精神障害者の地域支援を支えるためには、適切な医療を継続しながら、リハビリテーションを受けつつ地域の中での生活をよりよいものにしていくために、どの時期にどのような支援が有効であるかを探り、クリティカルパスを作成し、それが患者・家族にどのように有効であったかを検討し、患者・家族の生活や関係者の資質の向上を目指した。③ 保健所における介護保険施設の感染予防の企画立案に関する研究 介護保険施設を利用する高齢者は、とりわけ免疫力が低下した人が多く、感染症のリスクが高いため、その発生予防が重要である中、保健所の多岐にわたる専門職種の専門性を総合的に発揮し、介護保険施設における感染症予防対策を推進することを目的に保健所が施設を指導するためのマニュアルを作成するための、実態調査を行った。④ 地域と職域との連携の企画立案(小規模の事業所の健康状況と地域の関わり) 小規模事業者と農業従事者が多い地域において、小規模事業所労働者の健康に関する問題点を明らかにし、地域保健と連携しながら、お互いの資源を活用し、働き盛り世代への効率的な健康づくりを推進するため、管内関係機関との連携、各種健康状況の把握を行った。⑤ 学校保健との連携による健康教育の推進研究 近年、子どもたちの性行動の活性化に伴い、若年層での性感染症罹患率の上昇、10代の人工妊娠中絶の増加等さまざまな問題が発生している中、保健所、学校、地域が連携を取りながら対策を進める必要があることから、性意識調査を実施するとともに、ピアカウンセリングを取り入れることにより意識・行動の変容がどのように達成されるかの効果を見るために、ピアカウンセラー養成を図った。また、併せて、防煙教育関係者の連絡会を開催した。⑥ 青森県市町村における自殺予防システムの構築 県の自殺死亡率は全国ワースト2位となるとともに国内平均寿命の短い地域でもあることから、こころの健康において日本で最も問題のある地域となっている中、県の「心のヘルスアップ事業」が展開され、県内の市町村を中心とした自殺予防システムの構築を目指すため、各種調査や予防活動を行った。2.総合的な地域保健サービスの提供に関する研究(事業運営)① 精神障害者ホームヘルプ事業を中心とした在宅支援に関する事業運営とその評価 川崎市において、知的障害・身体障害のホームヘルプ事業等在宅支援
事業との違いで、特に支援費制度適応のない精神障害者の場合はどのように捕らえるかが問題となっている中、ホームヘルプ事業を受ける前後で精神障害者のQOLがどのように変化するか、入院回数或いは入院期間の減少にどのように役立つか、バックアップ機能あり方などを明らかにした。② 地域における介護予防システム構築に向けての調査研究事業 全国の市町村で取り組まれている介護予防事業の多くは単発的な事業実施にとどまっており、総合的な地域ケアシステムとしての展開が必要である中、総合的な地域ケアシステムとして展開する課程において、保健所に期待される役割、課題、その解決策を明らかにするため、介護保険・介護予防の最新情報の入手、先進的支援事例の聞き取り調査などを行い検討した。③ 地域糖尿病患者支援ネットワーク運営に関する研究 糖尿病患者の治療中断することなく、効果的な医療が受けられるようなシステムを検討し、大都市における糖尿病患者支援システムの構築を図るため、地域糖尿病支援システムの基盤整備を行った。④ 地域における少子化対策の試み 「健やか親子21」の理念を実現化することで、地域での子どもの安らかな発達を促進し少子化対策とすることを目標に、各種調査や少子化対策地域シンポジウムの開催などを行った。3.総合的な地域保健サービスの提供に関する研究(評価)① 精神障害者に対する傾聴ボランティア及びピアカウンセラーの育成支援評価に関するモデル事業 少子高齢化が進む中で、高齢者による高齢者のための話し相手としての傾聴ボランティアやシニアピアカウンセラーの重要性が考えられてきている中、精神障害者が安心して地域で生活できるよう行政と一般市民が協働し支援するしくみを整備して行くことが重要であることから、相談活動、傾聴ボランティア、ピアカウンセラーの活動の実態を把握し、現状と課題を明らかするとともに、傾聴ボランティア及びピアカウンセラー育成講座の内容を検討した。② 在宅高齢者(ハイリスク者)を対象とした介護予防活動評価に関するモデル事業 地域での要介護状態の住民を増やさないために、保健サービス・福祉サービスが有機的に連携し利用者本位のサービス提供となるよう、また、自立を維持するための効果的な介護予防対策を構築するため、要支援者の比較的多い地域をモデル地域として選定し、要支援者の生活の実態把握や分析を行った。③ 情報技術(IT)を活用した健康診査データを用いた保健指導の評価に関するモデル事業 市の保健所情報システムにおいて、基本健康診査記録票に保健指導の項目を新たに設け、医師の指示をデータベース化し、これを基に保健所より保健指導プログラムを本人に提示し、参加者において既存の保健指導プログラムの有用性について、心身両面からの評価を行うものである。④ 子どもの事故予防の推進の評価に関するモデル事業 子どもの死亡原因の第一は「不慮の事故」であり、県はその死亡率が全国より高かったために「子どもセーフティーセンター」を設置し不慮の事故のための医療機関を受診した子どもの事故情報を把握しているが、これまでの集積結果では入院を要する情報が把握しにくいシステムとなっていることから、入院を必要とする事例についての事故情報を把握、事故原因や事故が起きた状況を分析し事故予防につながることを目的に、各種事業を実施した。
結論
この研究は3年計画ということで進められているものであり、3年計画の初年度では、前述に示したとおり、各々の地域における実践的研究のための組織づくり、基本的計画の策定と現状分析や基盤整備等を展開したところである。今後は、具体的な事業展開とその評価を加え、分担研究者ごとに事業を進めるとともに、各研究者の情報共有化を図りまた、研究班会議を必要に応じて開くことにより総合的な地域保健のモデル事業として発展をさせていく計画である。

公開日・更新日

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