女性の健康寿命延長のためのホルモン補充療法活用に向けての基礎的・疫学的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301343A
報告書区分
総括
研究課題名
女性の健康寿命延長のためのホルモン補充療法活用に向けての基礎的・疫学的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
本庄 英雄(京都府立医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 矢野 栄二(帝京大学)
  • 寺本 民生(帝京大学)
  • 山岡 和枝(国立保健医療科学院)
  • 田宮菜奈子(帝京大学)
  • 芦田みどり(生活福祉研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 がん予防等健康科学総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
9,590,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
女性は一般に男性より長生きだが、障害や痴呆の期間は男性の数倍は長い。女性の寝たきり期間を短く、自律を目的として、健康寿命のためのホルモン補充療法(HRT)の適応と限界、それ以外の方法の活用を求め、“女性センター"研究、基礎・疫学・臨床・医療サービス・国際比較研究を初年度、次年度に引き続き継続している。
1)女性センター研究班 カウンセリングを引き続き行ない、HRTをはじめ、自律訓練法や認知療法を積極的に行い、カウンセリングの重要性が改めて認識された。また婦人科(女性センター)外来待合室におけるリフレッシュ運動プログラムを実験的に導入、指導ビデオを作製し、その効果を確認した。
2)基礎研究班 Alzheimer病におけるエストロゲンの影響、有効性を基礎的に検討しているが、エストロゲンのastrocyteを介しての細胞外Amyloid βの沈着抑制効果はAlzheimer病の発症予防や進行遅延に寄与する多因子中の一因と考えられた。神経原線維変化の成分であるリン酸化タウを定量することにより、エストロゲンがアルツハイマー病における痴呆の改善に役立つことが示唆された。植物性エストロゲン(ワァイトエストロゲン)の摂取・血中濃度調査―京都市と福島県郡山市との比較をM.K. Melby氏を中心としてワァイトエストロゲンが更年期・老年期女性の内分泌・症状にいかに影響を及ぼすかを引き続き検討した。結果は強い季節性が存在し、さまざまな良好あるいはそうでない影響があることが認められた。
3)疫学斑 第3年度は乳がんや子宮がんの市区町村を単位とした経験ベイズ推定に基づくEBSMRを指標として、検診受診率(平成7年から11年までの総和)との関連性を回帰分析により検討した。その結果乳がん、子宮がんともに検診受診率が高いと死亡率が低いという関連性が認められた。この結果は検診受診率の影響は経年的に変わらないという仮定の下で検討したものであり、今後、県単位などの地域差や他の交絡要因や環境等の違いも含めてさらに詳細に検討する必要があろう。一方、女性の自覚的健康満足度に及ぼす社会文化的要因の影響の分析を、最近行われた東アジア国際比較の調査結果から、自覚症状の比較分析を行った。その結果、他の東アジア諸国と比べても欧米諸国との比較結果と同様に自覚的症状の訴えは少なかったが、日本人では男性に比べ女性の方がいずれの年齢層においても訴えは高かった。これらの訴えは生活満足度の高さや信頼感、不安感とも関連し、そのほか、不眠の訴えでは高年齢等も関連していた。
4)臨床斑 高脂血症で外来通院中の患者を対象に、生活習慣病の背景とその動脈硬化症へのリスクを男性と比較・検討した。女性は男性に比較して喫煙率は低いものの、喫煙を継続している割合が高いことが判明した。また高血圧,糖尿病,高脂血症などの生活習慣病は女性は男性より3-5年遅く指摘されていた。またこの3年間で血清脂質をさらに厳格にコントロールする傾向にあることが判明した。しかし虚血性疾患の発症者数はむしろ女性の方が多かった。
5) 医療サービス研究班 受診行動の男女差を明らかにするために、ある協同組合員名簿から無作為に抽出した男性300人,女性297人を対象とし,郵送法による自己記入式質問紙票を用いた横断研究を行った.女性88人(回収率29.6%,平均年齢47.4才),男性74人(回収率24.6%,平均年齢48.5才)から回答を得た.いつも,または場合によって,かかりつけ医として女性医師を希望すると答えた女性は合計73.3%,同様に男性医師を希望すると答えた男性は39.4%であり,有意な男女差があった(p<0.0001).また,女性特有の健康問題で女性医師を希望する割合は,性器の問題(75.3%),性交の問題(70.6%),月経の問題(67.6%)の順に多かった.乳ガン検診や子宮ガン検診で女性医師を希望する女性はそれぞれ68.2%,65.9%であった.女性特有の問題で過去に男性医師を受診した女性のうち,できれば女性医師に診てほしかったと答えたのは59.6%であった.かかりつけの医療機関で診察医の性別を選べない,わからないと答えた割合は男女あわせて76.9%であった.
また、受診を妨げる理由としては、育児・介護が女性のみに多かった。 女性の4人に3人ほどが,かかりつけ医として,常にまたは場合によって女性医師を希望していた.また,性器,性交,月経の問題などは女性医師に診てほしいと考えている女性が多かった.プライマリ・ケアの現場では女性患者が6割を超えていると言われており,女性家庭医の役割が大きいと考えられた.医師の性別を選ぶことができない状況が明らかとなり,また、育児・介護などの負担も多い女性においては、託児や介護中でも受診時間が確保できるような患者ニーズに応えられる診療体制やサービスの改革も必要と考えられた.
6)国際比較研究班 3年度はカナダと日本の女性保健について調査した。カナダの保健医療制度については昨年度の調査に基づき、今年度はとくに中高年女性の健康に焦点をあて、3つの州および連邦保健局で担当者のインタビューを行った。カナダは国民皆保健制度によって全国民に無料で歯科など一部を除く医療を保障しているうえ、男女の平均寿命・健康寿命・そして女性のエンパワーメント水準においても世界でトップクラスにある。さらに、1986年のWHOオタワ憲章にもとづく「ポピュレーション・ヘルス」政策と、1995年国連開発会議の北京行動計画における「生涯にわたる女性の健康」の原則にもとづき、科学的根拠にもとづいて保健医療における「ジェンダー公正」の実現がはかられている。日本でも最近、医療施設において「女性外来」など新しい試みが広がってきた。その現状と分析を報告する。


研究方法
結果と考察
結論

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