健康日本21・歯の健康における健康指標の開発とその評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301337A
報告書区分
総括
研究課題名
健康日本21・歯の健康における健康指標の開発とその評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
宮武 光吉(鶴見大学)
研究分担者(所属機関)
  • 安井利一(明海大学)
  • 尾崎哲則(日本大学)
  • 福田雅臣(日本歯科大学)
  • 青山旬(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 がん予防等健康科学総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
4,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各都道府県において策定された健康日本21の地方計画、特に、それらの中の歯科保健計画および歯科保健状況についての調査報告書などを収集し、各地域における歯科保健の状況や、設定された目標とそれらを実現するための実施計画などについて分析する。さらに共通項目や、地方特性について分析し、全国的に実施可能な評価指標の検討を行い、歯科疾患実態調査をはじめとする歯科保健に関する調査結果について分析する。また、地域間の比較方法についての検討も行い、地方計画の現状値、目標値から全国の現状や、目標の算出方法についても、人口などを考慮して分析する。これらの研究結果から、健康日本21の地方計画や、地域計画における共通評価指標を、各都道府県において設定の多い目標や、健康指標およびリスク提言目標の評価方法の検討を行い、比較可能性について考察する。また、歯科保健の状況が都道府県の人口構成などの影響をどのように受けているかについて検討を加える。さらに、先進諸国における歯科保健目標なども調査し、わが国との比較により、今後追加すべき理念、目標などについて検討する。以上の研究により、健康日本21・歯の健康における健康指標およびその評価に際しての基礎的な資料を得ることを目的とする。
研究方法
1.都道府県において策定された健康日本21地方計画、歯科保健計画および歯科保健状況などの調査報告書を収集し、各地域における歯科保健の状況や、設定された目標とそれらを実現するための実施計画などについて分析する。2.各都道府県における調査(評価)法について比較検討を行い、現状値と目標値について分析し、全国の現状ならびに目標値を算出するための方法について検討する。3.都道府県間の比較に際して歯周病検診の市町村における実施率を例として、間接的に比較できる指標を検討する。4.オーストラリアおよびフィンランドにおける、国および地方の歯科保健目標の策定状況について調査し、わが国の目標などと比較検討を行い、今後追加すべき理念および目標設定について検討する。
結果と考察
1.健康日本21地方計画については、全ての都道府県の計画を入手し、歯科保健計画の有無や、基準値および目標値について分析した。歯科保健に関しては、全ての都道府県において目標が設定されているが、共通の項目の他に地方独自の歯科保健状況の調査を行い、それに基づく目標値が設定されている地域もみられた。都道府県においては地方計画で歯の健康についての記載はすべてなされていたが、市区町村の計画においては、記載されていないところも見られた。このことから、歯の健康については地域により認識に差があることが認められた。 2.都道府県ごとに、幼児のう蝕有病者の状況について分析した結果、例えば3歳児における、う歯の有病状況をみると、第2子以降の出生数の少ない地域ほどう蝕も少なくなっており、少子化の傾向が、その地域のう蝕の減少に影響していることが明らかとなった。すなわち、両者の間に、有意な正の相関関係がみられたことから、今後、少子化対策の推進により、う蝕の減少傾向が緩やかになることが予測された。 3.各都道府県における歯科保健計画のうちで共通している項目について分析した結果、国の健康日本21の「歯の健康」に関する項目と一致する項目が多く、評価に当たっては、歯の健康に掲げられている健康指標とリスク低減目標を基礎にして、地域間の比較を行うことが可能であることが明らかとなった。 4.歯周病検診の市町村における実施率を見ると、人口規模が大きくなるほど実施率が高く
なる傾向が認められた。このことから全国の歯周病検診実施率と比較すること等により、各都道府県における重点的な推進が必要な市町村を抽出することが可能であることが明らかとなった。 5.先進2カ国の調査結果から、主としてハイリスク者に対して個別的な施策を実施している国と、集団的な歯科保健対策を実施している国とがあるなど、それぞれの国の事情が明らかとなり、わが国の今後の方向を検討するに当たって参考になる事項が示唆され、地域特性に応じて対策を樹立し推進していくことが効果的であることが明らかにされた。
結論
1.都道府県などにおける健康日本21地方計画について検討した結果、市区町村においては、歯の健康についての記載が見られないところもあった。2.歯周病の評価法の検討の結果、歯科疾患実態調査結果と比較して、中程度以上の歯周炎を有する者の割合が高く、選択バイアスなどの影響があることが示された。3.歯周病検診の実施率を市町村別に分析した結果、人口規模との関連が見られたので、これらを考慮して実施状況を把握する必要がある。4.う蝕のない幼児の割合についての検討の結果、第2子以降に対する有効な対策の必要が示された。5.オーストラリアとフィンランドの歯科保健対策のわが国との比較により歯の喪失にたいしては集団的な、また、小児のう蝕対策には個人的な予防管理が必要であることが示された。

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