食品用器具・容器包装等の安全性確保に関する調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301202A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用器具・容器包装等の安全性確保に関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
河村 葉子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 荻野周三(東京都健康安全研究センター)
  • 田口信夫(東京都健康安全研究センター)
  • 高野忠夫(財・化学技術推進戦略機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 食品医薬品等リスク分析研究(食品安全確保研究事業)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の器具・容器包装の規格基準及び安全性確保のためのシステムのうち、合成樹脂の規格基準、溶出試験法、ポジティブリスト作成のための安全性評価ガイドラインについて、海外とのハーモナイゼーションを踏まえ今後の方向性を検討する。また、再生プラスチックの安全性確保のため、ポリエチレンテレフタレートの各種再生品に残存する揮発性物質、アセトアルデヒド、金属類等の調査を行う。食品衛生法の器具・容器包装の規格試験には、有害試薬を使用しているものや分析精度に問題があるものなどがあることから、より安全で精度の高い代替試験法を開発する。また、木及び竹製割りばし中の防かび剤および漂白剤の残存実態の調査のための通知試験法について検討を加える。さらに、国際標準化機構(ISO)の玩具の安全性規格について、上市前玩具の調査及び溶出基準値や分析補正値の根拠について検討する。
研究方法
規格基準等に関する諸外国及び我が国の情報を収集し問題点や今後の方向性等を検討し、再生プラスチックについては残存する揮発性物質、アセトアルデヒド、金属類等の分析を行った。規格試験法については、試験法の改良または代替試験法の開発を行い、割りばしについては測定法や溶出傾向を調査した。また、玩具ISO規格については、上市前玩具の試験を行うとともに、溶出基準値や分析補正値に関する調査を行った。
結果と考察
1)我が国の器具・容器包装の合成樹脂規格、溶出試験法、ポジティブリストの安全性評価基準について検討した。その結果、我が国の規格基準では、14種類の合成樹脂は安全性が評価され個別規格が設定されているが、個別規格が設定されていない樹脂は一般規格の3項目の試験のみで食品衛生法合格となり、安全性の面から同等なレベルで規制されているとは考えにくい。食品と接触して使用されるすべての合成樹脂について、安全性評価を行い個別規格を設定することが望まれる。またそれまでの過渡的な措置として、個別規格のない樹脂にも蒸発残留物試験を課すとともに、材質表示や用途制限も必要と考えられる。一方蒸発残留物規格の溶出試験において、試験条件を実際の器具・容器包装の使用条件に近づけることを優先している欧米に比べ、大きな差異がみられた。そこで、試験温度及び試験時間を欧州に準じた場合の蒸発残留物量について検討を行ったところ、個別規格の定められているすべての樹脂で特に問題は生じないことが確認された。このことから、溶出試験は6段階の試験温度(5、20、40、70、100 及び121℃)と7段階の試験時間(5及び30分、1、2及び4時間、1 及び10日)から使用条件に応じて選択し、また片面溶出法または充填法で試験を行うことが適当と結論された。また、合成樹脂のポジティブリストを設定するための安全性評価について、欧米を参考にしながらガイドライン案を作成した。 2)リサイクル包装材について、昨年度は再生プラスチックの安全性確保のための基本的な考え方を先にまとめた。そこで、今年度は全国50ヶ所の物理的再生工場の再生品約90検体、化学的再生の試験品の2検体、超洗浄再生の試験品2検体、及び新品樹脂、新品ボトル、使用済みボトル、再生品を使用したシート等について、残存物質の調査を行った。物理的再生品からは、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドが検出されたが、その含量は新品のボトルと同程度であった。また、清涼飲料にしばしば含有されるリモネンが検出されたが、その平均値は欧州での調査よりも低く、さらにシートに成形すると検出されな
くなった。また、カドミウムおよび鉛はいずれも検出されておらず、我が国の物理的再生品の品質はかなり高いと判断された。さらに、化学的再生品及び超洗浄再生品においては新品ペレットと同程度にまで除去され、残存物質に関しては新品と同等と評価された。一方、PETからは必ず重合時の触媒であるゲルマニウムまたはアンチモンのいずれかが検出されるが、物理的再生品においては全試料から両者が同時に検出され、物理的再生品使用の有無判別の指標となることが示された。3)食品衛生法の規格試験法のうち、塩化ビニリデン試験法は現行法では有害試薬である四塩化炭素を用いて抽出を行っているが、バイアル瓶中にジメチルアセトアミドとともに密封し90℃で加熱することにより溶解し、そのヘッドスペースを測定することにより、高感度でしかもカラムの劣化や装置の汚染を抑えることができた。また、塩化ビニル試験法は極めて煩雑であったが、塩化ビニリデンと同じ方法で測定可能となり、操作を大幅に簡便化することができた。一方、現行法でガスクロマトグラフィー測定時にパックドカラムを用いている揮発性物質、カプロラクタム及びメタクリル酸メチルについては、汎用性の高いキャピラリーカラムに変更することにより、現行法以上の感度が得られしかも分離能が優れる試験条件を確立した。4)木及び竹製品に使用される可能性がある、防かび剤のオルトフェニルフェノール、チアベンダゾール、ジフェニール、イマザリル、及び漂白剤の亜硫酸類に関する厚生省の通知法について検討した。防かび剤は20%エタノールで60℃30分間溶出試験を行いHPLCの蛍光またはUVで定量、亜硫酸は水95℃30分間溶出試験を行いイオンクロマトグラフィーまたはHPLCのUVまたは電気伝導検出器で定量するのが、最も適していた。5)国際標準化機構における玩具の規格では、鉛、カドミウム、ヒ素など有害な8元素の溶出が規定されている。この規格に準じて上市前の輸入玩具について試験を行ったところ、約1%の塗装部分で鉛が基準値を超えた。また、基準値以下の検出頻度も鉛が高く、続いてクロム、まれにカドミウムであった。また、バリウムは基準値の1/2以下であるが大部分の検体で検出された。しかし、アンチモン、ヒ素、水銀、セレンはいずれの検体からも検出されなかった。また玩具の塗装以外の本体部分について試験を行ったところいずれの金属の溶出も認められなかった。一方、ISO規格における溶出基準値及び分析補正値の設定根拠について調査を行った結果、現在の安全性評価法とは異なる方法で行われているなど疑問点がみられた。以上のことから、玩具、とくにその塗装部分については金属類の溶出規格の設定が必要不可欠であるが、その基準値や分析補正値についてはさらに検討が必要であると考えられた。
結論
器具・容器包装の規格基準のハーモナイゼーション、リサイクル包装材の安全性確保、規格試験法の安全性と精度向上、木及び竹製品中の漂白剤及び防かび剤、及び玩具の安全性に関わるISO規格について研究を行い、器具・容器包装及び玩具の安全性確保の上で重要な知見を得ることができた。これらの研究成果が厚生労働行政の施策に反映されることが望まれる。

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