残留農薬分析の効率化と精度向上に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301199A
報告書区分
総括
研究課題名
残留農薬分析の効率化と精度向上に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
外海 泰秀(国立医薬品所食品衛生研究所 大阪支所)
研究分担者(所属機関)
  • 外海泰秀(国立医薬品所食品衛生研究所 大阪支所)
  • 根本 了(国立医薬品所食品衛生研究所)
  • 岡 尚男(愛知県衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 食品医薬品等リスク分析研究(食品安全確保研究事業)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
9,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
残留農薬分析法には個別分析を主とした告示試験法とスクリーニング法としての局長通知法があるが、食品輸入量とその検査項目の増加に対して既存の試験法だけで対応することは困難な現状にある。そこで、より簡便で信頼性が高く効率的なスクリーニング法の開発と、個別試験法へ新しい技術導入を図り、より簡便で質の高い試験法を作成し、行政検査のニーズに適する試験法開発を目的として、下記の3課題の研究を実施した。
研究方法
1)安定同位体を内標準物質として用いるタンデムマススペクトロメトリーによる食品中残留農薬の効率的スクリーニング法の開発、2)LC/MSによる残留農薬分析の効率化と精度向上に関する研究、3)各種手法による残留農薬分析の効率化と精度向上に関する研究
結果と考察
1)については、試料精製法として双方向向流クロマトグラフィーを、検出法としてタンデムマススペクトロメトリーを用いる試験法を検討した。植物油、柑橘類及び葉菜類中のカルバメート系農薬(メソミル、フェノブカルブ、カルバリル)の効率的で、迅速な分析法を開発した。 2)については、約270 種農薬について基本条件でのESI-LC/MS分析を実施した。保持時間、ピーク形状、検出極性及び検出イオン質量数などの情報を検索し、どの程度の農薬がLC/MSで分析可能かを見極めた。3)については、昇温気化GC大量注入法と共にスターラーバー抽出(SBSE)法の抽出効率に影響を与える因子について検索を行った。その結果、SBSEは極性の高い農薬に対して抽出効率が低く適用できない他、熱分解しやすい農薬に対しては測定に際して注意が必要であるが、その他の大多数の農薬については良好な結果が得られた。また、GC-ECDやGC-FPD(Sフィルター)で測定するには妨害が多い含硫黄作物(ネギ類、きのこ類)中の32種農薬(有機塩素系、含硫黄系)を、フロリジルミニカラムで簡易に精製後、GC-AEDで測定する試験法を作成した。
結論
新分析技術である双方向向流クロマトグラフィーとタンデムマススペクトロメトリーやLC/MS、GC-AED、PTV大量注入法、SBSE抽出法とGC/MSなど、最新の機器を農薬分析に導入することにより、試験の効率化と精度を飛躍的に向上させる試験法を作成することができた。本研究で検討し確立した各種の試験法を行政検査の現場で用いることにより、食品中の残留農薬を効率的にスクリーニングし、且つ精度の高い分析ができるようになる。その結果、検査に要する時間の短縮と省力化とともに、分析値の精度向上が期待できる。ひいては検査件数の増加、出荷前検査の実施等の残留農薬に関する監視体制の充実につながり、食の安全性確保のより一層の向上が期待でき、食品中の残留農薬に対する国民の不安を軽減することができると考えられる。

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