文献情報
文献番号
200301175A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオテクノロジー応用食品の安全性確保に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
長尾 拓(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
- 小関良宏(東京農工大学)
- 米谷民雄(国立医薬品食品衛生研究所)
- 手島玲子(国立医薬品食品衛生研究所)
- 菅野純(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 食品医薬品等リスク分析研究(食品安全確保研究事業)
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
遺伝子組換え食品の安全性に関し消費者の関心が高まり、その安全性確保が強く求められる一方国際的な基準作りが進められている。本研究では、バイオテクノロジーを応用した食品の安全性確保のための科学的知見の蓄積、当該食品の検知法の確立及びリスクコミュニケーションに関する調査研究を行うことを目的とする。具体的には、遺伝子組換え(GM)植物の遺伝的安定性からみた安全性評価、組換え食品の検知法、アレルギー性に関する安全性評価手法、慢性毒性試験のあり方、リスクコミュニケーションに関する調査研究を行うとともに、ポストマーケッティングに関する調査研究や遺伝子組換え微生物を用いた食品、遺伝子組換え魚に関する国際動向等の調査研究を行うことにより、遺伝子組換え食品の安全性のより一層の確保を目的とした。
研究方法
遺伝子組換え植物の遺伝的安定性では、市場に流通している輸入大豆の穀粒の中から PCR法によって遺伝子組換え体を検出し,その穀粒から DNA を抽出し,導入遺伝子プロモータ領域及び、内生コントロール遺伝子β-コングルシニンサブユニット(β-conα)遺伝子由来のプロモータ部分のDNAを PCR法にて増幅し、塩基配列を決定し、突然変異の有無を確認した。遺伝子組換え大豆におけるポストゲノム解析では、プロテオームは、二次元電気泳動で、トランスクリプトープ解析は、DNAマイクロアレイで、メタボローム解析は、超高精度・超高感度の質量分析器であるフーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分離装置(FT-ICRMS)を用いて、解析を行った。組換え食品の検知法に関する研究では、PCRによる定性並びに定量分析法を作成するためのプライマー設計を行った。また、ハイブリッド品種の混入率を明らかにするための粒単位での定性分析法の開発を行った。さらに、定量分析法の加工食品への適用可能性について、大豆、とうもろこしそれぞれ3種のモデル加工食品について検討を行った。アレルギー性に関する安全性評価手法の開発では、バイオインフォーマティック手法を用いたIgEエピトープを考慮したアレルゲン予測の解析法の検討、ELISA法による6個の連続したアミノ酸合成ペプチドによる患者血清と固相抗原との反応の阻害の解析、マウスを用いる経口感作による食物アレルギー動物モデルの開発を行った。ラットへの遺伝子組換えとうもろこしの混餌投与による慢性毒性試験では、2年の期間の1年目が終了し、各群10匹を対象に、血液学、血液化学検査等を行った。また、遺伝子組換え食品の動向調査として、諸外国における遺伝子組換え食品に関する法制度等の調査、組換え微生物を用いた食品の安全性に関する国際動向の調査研究、遺伝子組換え魚に関する文献調査等による情報収集を行い、現状の把握を行った。また、リスクコミュニケーションに関する調査研究として、遺伝子組換え食品ホームページの情報がわかりやすく提供されているかどうかの検討を行い、ポストマーケティング(PMM)に関する調査研究に関しては、国内、国外での実態調査を行った。
結果と考察
遺伝子組換え植物の遺伝的安定性では、安全性審査済みの遺伝子組換え大豆(ラウンドアップレディー大豆)についての、後代交配種における導入遺伝子の安定性を、内生遺伝子(β-conα)の突然変異率との比較で解析し、突然変異率が、内生遺伝子とほぼ同様であること、また、導入遺伝子においてアミノ酸置換を生じさしめるような突然変異は非常に少なく、安定性が高いことを確認した。また、ポストゲノム解析として、
導入遺伝子及び内生遺伝子の発現産物の変動の幅を解析することを目的としたプロテオーム及びトランスクリプトープ解析、並びに非タンパク性成分の組成と含量を比較するためのメタボローム解析を開始したが、特に大豆のメタボローム解析において、FT-ICRMSを用いた解析で400の化合物イオンの検出が可能となり、プロファイルの比較解析への応用が期待された。遺伝子組換え食品の検知に関する試験法の確立では、安全性審査の終了した遺伝子組換えとうもろこし系統の定量分析法の改良並びにハイブリッド品種についての定性検知法の開発、及び遺伝子組換えじゃがいもの系統別定性検知法の開発を行った。また、モデル加工食品を使用した遺伝子組換え食品定量分析法の適用可能範囲の検証を行った。アレルギー性に関する研究では、IgEエピトープ゜を考慮したアレルゲン予測の解析法の検討の結果、アミノ酸の疎水性、親水性だけでなく、エピトープの出現頻度も考慮にいれた方法の有用性が示された。また、マウスを用いた食物アレルギー動物モデルの開発では、経口感作に用いる溶媒の脂溶性を高めることで、感作能の上昇することが認められた。慢性毒性試験としては、ラットへのMon810とうもろこしの混餌投与による2年の慢性毒性試験の1年目が終了し、1年目までの検査結果では、遺伝子組換えとうもろこしを摂取したためと考えられる毒性学的異常所見は観察されていない。リスクコミュニケーションに関する調査研究では、遺伝子組換え食品ホームページにつき、市民にわかりやすいものにするための具体的な改善提案を行った。また、ポストマーケティング(PMM)に係る国内、国外の調査研究では、PMMを組織的・継続的に実行している国・地域はみあたらなかったが、今後開発されてくる商品のPMM論議も含め更なる調査が必要であると考えられた。遺伝子組換え微生物を用いた食品に関する調査研究では、2003年夏に開催されたコーデックス委員会総会において採択された組換え微生物を用いて製造された食品の安全性評価の実施に関するガイドライン作りに参画し、情報交換を行った。遺伝子組換え魚に関する国際動向等の調査研究では、組換え体の対象生物の範囲が、魚類以外に貝類、エビ・カニ類、海草類と広がりつつあることが明らかとなった。
導入遺伝子及び内生遺伝子の発現産物の変動の幅を解析することを目的としたプロテオーム及びトランスクリプトープ解析、並びに非タンパク性成分の組成と含量を比較するためのメタボローム解析を開始したが、特に大豆のメタボローム解析において、FT-ICRMSを用いた解析で400の化合物イオンの検出が可能となり、プロファイルの比較解析への応用が期待された。遺伝子組換え食品の検知に関する試験法の確立では、安全性審査の終了した遺伝子組換えとうもろこし系統の定量分析法の改良並びにハイブリッド品種についての定性検知法の開発、及び遺伝子組換えじゃがいもの系統別定性検知法の開発を行った。また、モデル加工食品を使用した遺伝子組換え食品定量分析法の適用可能範囲の検証を行った。アレルギー性に関する研究では、IgEエピトープ゜を考慮したアレルゲン予測の解析法の検討の結果、アミノ酸の疎水性、親水性だけでなく、エピトープの出現頻度も考慮にいれた方法の有用性が示された。また、マウスを用いた食物アレルギー動物モデルの開発では、経口感作に用いる溶媒の脂溶性を高めることで、感作能の上昇することが認められた。慢性毒性試験としては、ラットへのMon810とうもろこしの混餌投与による2年の慢性毒性試験の1年目が終了し、1年目までの検査結果では、遺伝子組換えとうもろこしを摂取したためと考えられる毒性学的異常所見は観察されていない。リスクコミュニケーションに関する調査研究では、遺伝子組換え食品ホームページにつき、市民にわかりやすいものにするための具体的な改善提案を行った。また、ポストマーケティング(PMM)に係る国内、国外の調査研究では、PMMを組織的・継続的に実行している国・地域はみあたらなかったが、今後開発されてくる商品のPMM論議も含め更なる調査が必要であると考えられた。遺伝子組換え微生物を用いた食品に関する調査研究では、2003年夏に開催されたコーデックス委員会総会において採択された組換え微生物を用いて製造された食品の安全性評価の実施に関するガイドライン作りに参画し、情報交換を行った。遺伝子組換え魚に関する国際動向等の調査研究では、組換え体の対象生物の範囲が、魚類以外に貝類、エビ・カニ類、海草類と広がりつつあることが明らかとなった。
結論
バイオテクノロジーを応用した食品のより一層の安全性確保のための科学的知見の蓄積に関して、わが国に流通する遺伝子組換え植物の遺伝的安定性についての確認、ポストゲノム解析、アレルギー性に関する安全性評価手法の高度化、ラットを用いた慢性毒性試験が実施されている。遺伝子組換え食品の検知については、安全性審査の終了した遺伝子組換えとうもろこし系統の定量分析法の改良、並びにハイブリッド品種についての定性検知法及び遺伝子組換えじゃがいもの系統別定性検知法の開発を行った。リスクコミュニケーションに関する調査研究では、ホームページを通じた情報提供の具体的あり方に関する検討が行われ、ポストマーケティングに係る国内、国外の調査研究も実施された。さらに、組換え微生物を用いた食品の安全性に関する国際動向、遺伝子組換え魚の諸外国での開発動向についても調査が行われた。
バイオテクノロジー応用食品については、安全性に関する研究を中心に、当該食品の検知に関する試験法の確立及びリスクコミュニケーションに関する研究等を持続するとともに、透明性を確保しつつ、より一層の安全確保、消費者の不安解消に努める必要があると考えられる。
バイオテクノロジー応用食品については、安全性に関する研究を中心に、当該食品の検知に関する試験法の確立及びリスクコミュニケーションに関する研究等を持続するとともに、透明性を確保しつつ、より一層の安全確保、消費者の不安解消に努める必要があると考えられる。
公開日・更新日
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