健康増進効果の高い保健指導の方法等に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301169A
報告書区分
総括
研究課題名
健康増進効果の高い保健指導の方法等に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 勝美(聖マリアンナ医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田行恭(桐蔭横浜大学)
  • 杉森裕樹(聖マリアンナ医科大学)
  • 須賀万智(聖マリアンナ医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
5,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活習慣病対策には健康診断で早期発見されて早期治療につなげることよりも、疾病発症時期を回避するように健康増進対策を立てることが有用である。本研究では、健康増進効果を高めるために、情報技術IT化を図ることが、健康支援活動の時間的空間的制約をはずれて実行できることを期待して、情報化による保健指導方法について以下の点を検討した。第一に、ネットワークは保健指導を提供する基盤として重要であり、現在までネットワーク上で提供されている保健指導システムを総括することで、その特性を考察した。第二に、健康診断結果はスクリーニングとして利用されることから、更に保健指導の健康評価に利用されることが期待される。現在の生活習慣病を対象とした保健指導を考えるには、食生活栄養指導に対する適切な保健指導が必要である。今年度は栄養ケアマネジメントシステムの人間栄養学の評価法を取り入れて、健康診断結果から保健指導コメントを提供するシステムの開発を行った。第三には、昨年度来「糖尿病治療支援システム」を開発してきたが、効率的な保健指導を行うためには、チーム医療を目指した情報共有化が必要であることから、システムに追加機能を持たせることで全体の効率を向上するよう検討した。
研究方法
飯田分担研究者は、MEDLINEを用いて文献発表されているシステムをレビューして、既存のインターネットを介した保健指導システムの特徴を整理した。キーワードとしては、network, internet, telemedicine、healthcare, health promotion, health educationとした。疾患としては肥満、飲酒、高血圧、糖尿病、高脂血症、循環器疾患とした。
伊津野研究協力者と杉森分担研究者は、適切な保健指導コメントを自動的に作成するアルゴリズムの開発した。検査項目として、BMI、GOT、GPT、γ-GTP、総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、空腹時血糖、HbA1cとした。保健指導内容は食生活栄養指導に関して26項目とした。
須賀分担研究者と市村研究協力者は、糖尿病治療支援システムにチーム医療を支援することで、保健指導の効率化を図る検討を行った。糖尿病治療支援システムは、(1)食事・運動療法計画の作成(Guideline-based Decision Support; GDS)、(2)食事・運動療法計画の実行の支援(Tele-Consultation; TC)をおもな機能にする。(1)のGDS機能は来院時の主治医と患者の対話を通して、主治医による医学的判断と患者による実行可能性の評価を反映した食事・運動療法計画を作成する。(2)のTC機能はインターネットを介した自動化された対話的交流を通して、在宅時の患者の実行度を評価して、それによるアドバイスを提供して、食事・運動療法計画の実行を支援する。本システムの利用により、①専門医でも非専門医でもおなじレベルおなじ方針の治療を提供できる、②在宅時の患者をフォローして、治療コンプライアンスを向上できる。
結果と考察
ネットワークを介した保健指導について文献調査を行ったところ、以下の点が明らかにされた。調査期間は、1980年から2003年である。発表論文の件数は、インターネットの普及と大きな相関を持っており、1995年から急激に発表件数が増えており、国別の発表件数では、アメリカの発表件数が最も多く、検索した論文の4割を超える。論文内容は、生活習慣病患者に対してインターネットを使った喫煙、食事、飲酒等に関する教育効果を分析しているものが多かった。具体的な疾患としては、糖尿病、心臓疾患、高血圧である。海外におけるネットワーク対応の保健指導、健康教育に関しての発表論文を分析した結果、論文発表件数は、インターネットの普及してきた1995年代から急激に増えており、論文発表が一番多い国も、インターネットが最も普及しているアメリカで、検索した論文の中の4割以上を占め、論文の発表件数とインターネットの普及とは、強い相関をもっていることが分かる。論文のアブストラクトの内容からの分析では、調査・分析に関する論文が多く、これらは、インターネットを利用した健康教育、患者教育の効果に関する研究が各国で行われていることを反映している。保健指導のコメントは栄養食生活に関した26項目とした。カロリー摂取、夕食と運動、筋腫、つまみと野菜、魚と飲酒、飲酒と食物繊維、夕食後の間食、乳製品、外部での飲酒、緑黄色野菜と脂肪分、緑黄色野菜と間食、脂肪分と運動、飲酒とつまみ、肉類の摂取、食物繊維、緑黄色野菜と海草、夕食の摂取量と間食、夕食後の間食と減量、つまみのエネルギー抑制、食物繊維と野菜、ムラ食い、間食の内容、飲酒量と野菜摂取量が作成された。糖尿病治療支援システムにおけるチーム医療環境への適応については、以下の効果が確認された。チーム医療において、治療方針を決定するのは医師であるが、治療の実践をサポートするのはコワーカーである。また、コワーカーからの情報は治療方針を決定するに際して有用である。すなわち、(1)のGDS機能は医師の役割を、(2)のTC機能はコワーカーの役割を支援すると考えられる。チーム医療における本システムの有効的活用を目指すならば、①GDS機能から得られた食事・運動療法計画を医師とコワーカーが共有すること、②TC機能から得られたアドバイスをコワーカーが把握して、不足している部分や対応しきれていない部分を補足すること、そして、③それらの情報を食事・運動療法計画の見直しや変更につなげることが必要である。まず、チームの構成員が情報を共有できる環境の整備が図られた。
結論
効率的な保健指導システムを構築することは従来のスクリーニングとしての健診から健康度評価に基づく健康増進を推進する上で重要な課題である。本研究では、従来のネットワークを介して提供された保健指導システムをレビューすることで、ネットワーク上での保健指導の特性を整理した。また、複数の検診項目を用いて栄養食生活指導を提供するアルゴリズムを開発した。糖尿病治療支援システムは、チーム医療として医師以外の専門家にも情報を提供することで効率的な保健指導が可能になった。

公開日・更新日

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