リサイクル品・廃棄物処理工場での粉塵爆発災害の防止に関する研究(総括研究告書)

文献情報

文献番号
200301162A
報告書区分
総括
研究課題名
リサイクル品・廃棄物処理工場での粉塵爆発災害の防止に関する研究(総括研究告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
荷福 正治(独立行政法人産業技術総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口貞茲(独立行政法人産業技術総合研究所)
  • 山隈瑞樹(独立行政法人産業安全研究所)
  • 児玉勉(独立行政法人産業安全研究所)
  • 竹内学(茨城大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
11,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
粉塵の着火性、爆発強度、着火源形成要因、災害防止対策等の解明。
研究方法
平成15年度は、粉塵の着火エネルギー、粉塵の爆発強度、粉砕・破砕に伴い発生するガスの爆発性、粉塵移送ダクトの静電気危険性、粉塵の流送帯電、着火源の形成・観測、破砕・粉砕工程における粉塵爆発災害防止対策等の評価・検討をした。このため、以下の内容の研究を行った。①吹上げ式粉塵爆発試験装置、Godbert-Greenwald型炉(加熱部は内径60mm、長さ526mm)、着火エネルギー測定装置等を用い、粉塵の爆発下限濃度、爆発特性曲線、浮遊粉塵雲着火温度、粉塵の粒度が最小着火エネルギーに及ぼす影響、放電電極部の条件(放電持続時間、放電電極間隔、放電電極の先端角度)が粉塵の着火に及ぼす影響等を検討した。②粉塵の爆発強度、粉砕・破砕に伴い発生するガスの爆発性の評価・検討のため、初めにレーザシート光学システムを用い、吹上げられた粉が空間に分散する挙動を調べた。そして、可燃性粉塵単独の場合と可燃性ガスが混合したハイブリッド状態の場合について最大爆発圧力、最大圧力上昇速度、爆発指数を実験的に測定し、爆発性の評価を行なった。③粉体循環装置及び関連機構を用いて、粉塵移送ダクトに関連した静電気危険性の評価・検討を行った。粉塵移送ダクト内での沿面放電による堆積粉塵への着火の可能性,粉塵着火後の火炎状態の観測を行うとともに、バグフィルタ式集じん機へ移送後の静電気危険性を評価するために、粉体とフィルタの剥離帯電量測定及び金属粉塵が付着したフィルタからの放電現象を観測し、着火性の有無を検討した。④粉塵の流送帯電量の測定をトリボ帯電方式の静電スプレーガンを使用して行った。実験にはリコポデューム、ポリアクリロニトリル、ナイロン11、酸化鉄粉を使用した。これらの試料粉体のイオン化ポテンシアルも測定した。⑤粉塵の帯電に起因する着火源の形成・観測のため簡易型の装置を使用して粉塵の着火性試験を行った。本装置では、超音波振動を加えて試料粉体をホッパーから落下させて、一様な粉塵雲を形成した。電極間に高電圧パルスを印加し、発生した火花による試料粉体の着火を観測した。⑥破砕・粉砕工程における粉塵爆発災害防止対策に関し、物体の破砕・粉砕工程において発生する静電気量の測定を行った。具体的には、二種類の粒子の混合系を撹拌、摩擦したときに発生する電荷量をブローオフ法により測定した。
結果と考察
①家電製品リサイクル工程で大きな爆発性を有すると考えられるポリウレタン粉塵の爆発下限濃度は約40-50g/m3程度、浮遊粉塵雲着火温度は概ね500℃、最小着火エネルギーは約11mJであり、爆発しやすいことがわかった。また、放電持続時間が約0.2 ms程度以上になると着火エネルギーが最小となり、放電電極間隔約5 mm、放電電極先端角約30度で最も爆発しやすいことがわかった。②用いたポリウレタン粉の平均粒子径D(v、0.5)は159μmである。このポリウレタン粉塵雲濃度C=100~250 g/m3においては、最大爆発圧力Pmax=5.5 bar、最大圧力上昇速度(dP/dt)max=260 bar/s、爆発指数Kst=70bar・m/sであった。ハイブリッドの場合でシクロペンタン2,020 ppm一定に対して,C=100~250 g/m3においては、Pmax=5.6 bar、(dP/dt)max=247 bar/s、Kst=67 barm/sであった。ハイブリッドの場合でシクロペンタン5,270 ppm一定に対し、C=100~175 g/m3においては、Pmax=5.7 bar、(dP/dt)max=220 bar/s、Kst=60 bar・m/sであった。用いたポリウレタンの粒子径が大きいため、
爆発の強さはやや小さい結果が得られたが、より小さな粉塵を試料として用いれば、Kstは100を超えるものと考えられる。他の粉塵に比べ、爆発に強さは中程度と判断される。③接地背板を有する薄い絶縁物が帯電した場合に発生する沿面放電が堆積粉塵に着火する条件を調べた。石松子及びアントラキノンを試験粉体とした場合、金属板が接地背板の場合には、160μC及び130μCで着火したが、導電性繊維入り絶縁シートの場合、330μC及び70μCであった。浮遊粉塵の最小着火エネルギーは30mJ及び3 mJであるが、堆積粉塵になると放電条件によって着火性が異なることが判明した。更に、集塵機内においては、粉塵はフィルタからの剥離によって極めて高い帯電量を示す。特に金属粉塵がフィルタに付着した場合には、電気抵抗が含まれるために着火性の高い放電が生じやすいことが判明した。④粉塵の流送帯電量測定として静電スプレーガンを用いて測定した試料粉体の帯電量(比電荷)は、酸化鉄>リコポデューム>ナイロン11>ポリアクリルにトリル、であった。試料粉体の供給量の増加につれて全帯電量は増加するが、単位質量あたりの帯電量(比電荷)は減少することが確認できた。また、スプレーガン内壁の材料であるフッ素系樹脂のイオン化ポテンシアル(6.72eV)との差が大きくなるにつれて、試料粉体の帯電量が増加していることが確認できた。さらに、粉体の流送速度が大きくなるほど帯電量が増加することがわかった。⑤粉塵の帯電に起因する着火源の形成・観測として超音波振動式着火試験装置を用いて測定された最小着火エネルギーは、リコポデューム、25-32mJ;ポリアクリロニトリル、29-34mJ;アントラキノン、9-15mJであった。また、本観測システムが着火源の観測に有効であることを確認できた。⑥破砕・粉砕工程における粉塵爆発災害防止対策の検討のためアクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン粉体のポリスチレンペレットに対する摩擦帯電量特性を、相対湿度を変化させてブローオフ法により測定した。相対湿度の増加につれて粉体の摩擦帯電量は減少した。また、粉体の単位質量あたりの電荷は粒径の減少にともなって増加することがわかった。
結論
①リサイクルや廃棄物処理工程で発生する粉塵、特に冷蔵庫のリサイクル工程で発生するポリウレタン粉塵は多量発生し、爆発性が大であるので、操業の際にはこれを予測して安全の確保に努める必要がある。②使用したポリウレタン粉塵は他の粉塵と比べると、爆発の強さは中程度と判断される。しかし、リサイクル工場では可燃性粉塵のほかに可燃性ガスの発生もあり得る。それぞれの爆発の強さが小さくとも、共存する場合には相乗効果によって爆発の強さが増すことがわかった。爆発の予防、爆発の抑制対策を講じる際にはこのようなことを加味する必要がある。③絶縁性ダクト又は薄い絶縁ライニングを有する金属ダクトを使って粉体を移送する場合には、沿面放電による着火危険性を考慮しなければならない。金属製又は導電性ライニングとすべきである。また、集塵機で金属粉塵を回収することは極めてリスクが高い。接地等の帯電防止及び不活性化が必要である。④流送帯電に伴う帯電が原因となって生じる粉塵爆発の防止には、流送速度をできるだけ小さくする、輸送に使用する空気の湿度を高くする、輸送する粉体と輸送に用いるパイプ内壁のオン化ポテンシアルをなるべく近づけることが有効である。⑤超音波振動を利用する着火試験装置により従来法とほぼ同じように着火エネルギーを測定できることを確認した。⑥撹拌・摩擦にともなう粉体の帯電量をブローオフ法により測定した結果、粉体の単位表面積あたりの帯電量は粒径に依存しないことを確認した。

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