最適必要排風量と光触媒を用いた効率的な有害物質発散防止システムの構築に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301160A
報告書区分
総括
研究課題名
最適必要排風量と光触媒を用いた効率的な有害物質発散防止システムの構築に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
名古屋 俊士(早稲田大学理工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中勇武(産業医科大産業生態研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在一般的に使用されている各種局所排気装置の必要排風量を求める計算式に、工学的な手法と経済性を加味した最適必要排風量の一般式を求めることは、必要以上の排風量で有害物質を吸引しないので省エネにもなり、労働安全衛生マネ-ジメントを構築した作業環境作りを実施するためには不可欠なことと考える。さらに、必要以上の排風量での吸引は、フ-ド等で吸引した有害物質の後処理に掛かる費用に対しても負担となる。後処理費の負担軽減のためには、有害物質の処理に関しても環境のやさしい浄化と省エネを考慮した後処理法の開発が必要である。
そこで、本研究ではプッシュプル換気装置の捕促面風速、流量比及びプッシュプル間距離の関係から、経済性に優れた必要排風量を求めることを目的に実験を行った。また、捕集された有害化学物質の後処理法として、現在省エネで且つ環境浄化触媒として注目を集めている光触媒に注目し、バッチ式分解装置を用いて市販の粉末光触媒によるトリクロロエチレンの分解実験を行った。その後、実用性を考慮した小型流通式分解装置を作製し、トリクロロエチレンの分解実験を行った。従来のバッチ分解装置と同様に、流通式分解装置においてもトリクロロエチレンを分解することが出来た。
研究方法
1)プッシュプル換気装置の漏洩濃度から求めた捕促面速度と流量比の関係
実際に作製した小型プッシュプル型換気装置を稼動させ、効率よく汚染物質を排除するための指針作りを行った。効率の良さというものを今回は特に、「必要な作業空間を確保した上でいかに低風量で汚染物質を排除できるか」と定義した。その評価に発散させた有害化学物質の漏洩濃度により評価した。漏洩濃度測定では漏洩に影響を与えるファクターとして、捕捉面風速、プッシュプル流量比、プッシュプル間距離を用いることとし、3者の関係性を調べた。
2)各種粉末光触媒によるトリクロロエチレンを分解
作製した光触媒薄膜を石英製小型有害物質分解容器に入れた後、所定の有害化学物質としてトリクロロエチレンを定濃度発生装置から石英製小型有害物質分解容器に入れ、密封した後、紫外線を照射して、トリクロロエチレンの分解状況を経過時間ごとに分解容器内の濃度を求め、分解率を求める。
結果と考察
1)プッシュプル換気装置の漏洩濃度から求めた捕促面速度と流量比の関係
作製した小型プッシュプル型換気装置の捕促面の位置で有害化学物質として約1500ppmのジクロロメタンを発生させた。プルフードから漏れた漏洩濃度の判断基準を1ppmとした。次に、捕捉面風速は低風速を中心に0.20m/s、0.30m/s、0.40m/sとした。
また、プッシュプル間距離を30cm、45cm、60cmの3条件について実験した。
捕捉面風速、プッシュプル流量比、プッシュプル間距離と漏洩との間にある関係を調べることができた。これによって、作業に必要な距離を決定した際に捕捉面風速とプッシュプル流量比をどのように設定すれば効率よく抑制が行えるかについての知見を得ることができた。実験結果のまとめたもの一例を表1に示す。表における○印は漏洩濃度が1ppm未満を表し、×印は漏洩濃度が1ppmを超えたときに記すものとする。
表1プッシュプル間距離、捕捉面風速、流量比との関係
今回の条件ではプッシュプル流量比を3倍以上に設定すれば全ての条件で1ppm未満を満たすことができることが分かった。捕捉面風速による漏洩の差というものはあまり見られなかった。プッシュプル間距離が伸びると一般に必要となる流量比が増えることが確認できた。
2)各種粉末光触媒によるトリクロロエチレンを分解
11種のTiO2粉末光触媒に関して、諸反応条件を吟味した上で流通式分解装置及びバッチ式分解装置によるトリクロロエチレンの分解実験を行い、その結果を比較検討した。
反応容器内のトリクロロエチレン温度を上げて分解実験を行うと、その反応性は向上するただし、75℃の時が最も反応性が高く、最適反応温度の存在が確かめられた。また、反応容器内のトリクロロエチレン湿度を下げて分解実験を行うと、その反応性は向上する。また、光触媒反応には表面吸着水が必要であるが、30%程度の湿度で十分であることもわかった。分解実験前の光触媒表面上への紫外線前処理時間を長くするほど、トリクロロエチレン分解反応の反応性は向上する。さらに、紫外線ランプの波長に関しては、254nmよりも365nmの方がトリクロロエチレン分解反応の反応性は高かった。いずれのTiO2粉末光触媒も触媒活性を有し、流通式分解装置でトリクロロエチレンを分解できる。また、いずれの粉末光触媒試料においても一定時間経過後に残存率は一定になり、それ以上分解は進まない。流通式分解実験においては、試料の各物性は分解結果にほとんど影響を与えない。
結論
1)プッシュプル換気装置の漏洩濃度から求めた捕促面速度と流量比の関係
本研究により、捕捉面風速、プッシュプル流量比、プッシュプル間距離と漏洩との関係を調べることにより、捕捉面風速及び流量比との間には、うまく組み合わせることにより、有害化学物質が作業環境中へ漏洩せず、かつ、省エネが可能となる最適条件があることが明らかになった。このことは、捕捉面風速を上げることで有害化学物質の捕捉が可能と考えている現場の人々には、朗報となると考えられる。
2)各種粉末光触媒によるトリクロロエチレンを分解
TiO2粉末光触媒を用いたバッチ式分解装置によるトリクロロエチレンの分解実験を行い、分解条件を検証した。その結果は実用実験のために作製した流通式分解実験に応用可能という知見を得られた。このことから、光触媒による有機ガス浄化システムを確立し、現場へ適用されることを期待できる。

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