職域における健康診断と精度管理のあり方に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301154A
報告書区分
総括
研究課題名
職域における健康診断と精度管理のあり方に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 治彦(中央労働災害防止協会)
研究分担者(所属機関)
  • 徳永力雄(関西医科大学)
  • 吉田勝美(聖マリアンナ医科大学)
  • 久代登志男(駿河台日本大学病院)
  • 曽根修輔(長野県厚生農業協同組合連合会安曇総合病院)
  • 栗原伸公(埼玉医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
職域における健康診断は、労働環境の有害要因による健康異常の早期検出、有害要因曝露量の推定、作業関連疾患の早期発見、労働環境に必ずしも関連を持たない健康障害の早期発見、健康度の把握等、さまざまな目的で実施されてきた。今後はさらに、事業者による自主的な労働衛生管理の重要性がますます高まること、また職域健康管理を労働者個人の生涯に渡る健康管理との関連において位置付けるべきことなどの理由で、ますます高い効率性が求められ、実施に当たって有効性を示す根拠も必要となっている。
本研究では、従来の健康診断のあり方を一歩進め、より効果的に労働者の健康維持、増進に資するためには、健康診断の測定および判定における精度の向上がきわめて重要であるとの認識に立ち、各種健康診断における精度管理の現状を把握し、今後のあり方を検討することを第一の目的とする。その際、基本的に健康者を中心とする集団である職域の労働者に対する健康診断のあり方が、地域あるいは臨床の場面における一般人口集団に対する健康診断のあり方と異なる点があることを念頭において検討を行う。
また今後、職域、地域、などで得られる健康診断情報を一元化し個人毎の時系列データを有効に活用することが徐々に進められる機運にあるが、職域における健康診断に限っても、個人の時系列データの活用はきわめて重要である。そこで本研究では、時系列データを有効に活用するために必要とされる精度管理のあり方について研究することを第二の目的とする。
研究方法
主任研究者櫻井は共同研究者中とともに、全国労働衛生団体連合会で実施された過去10年間における臨床検査精度管理調査の各参加機関の報告結果をもとに機関別に参加状況、自機関実施および外部(外注)機関実施状況、その期間における各機関の成績の分類、外部機関における成績の年次推移について解析した。特に基準分析法(学会勧告法)及び基準分析法で測定された標準血清が存在する総コレステロール、中性脂肪、AST、γ-GT、血糖の5項目を検討の対象とした。各項目について自機関測定、外部機関測定別に全機関の全参加年度の成績(総点数)をすべて入力し、それらを10回連続参加、6~9回参加、5回以下参加の3群に分類して検討した。
分担研究者徳永は、職域健康診断における臨床検査のあり方及び外部精度管理に伴う諸課題について、それらの現状・実態を調査し、改善すべき課題を同定し、改善の方向と具体的方策について提言することを目的として、全国労働衛生団体連合会臨床検査精度管理調査に参加し自機関で臨床検査を実施している約180機関の平成13年度から15年度の最近3年間のデータを解析した。検査項目は、総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、AST、ALT、γ-GT、血糖、ヘモグロビンA1c、ヘモグロビン、赤血球、白血球、血小板について、低濃度(活性値)、中等濃度(臨床的異常下限値相当)、高濃度の2~3試料の精度管理調査報告値をそれぞれ年度別、検査方法別に試料濃度(または活性値)を20区分に層化してヒストグラムを得、基準値(reference value)及び評価準偏差と比較した。また各機関の臨床検査部門の責任者を対象に質問紙法による調査を178機関に実施して分析した。回収率は60.3%(108/179)であった。
分担研究者吉田は、健診の連続受診者における高血圧、高脂血症発症の予見方法に関する評価を目的として、Matched Pairを基に、発症直前の血圧及び総コレステロール値を調整して、それ以前の値を考慮した際の発症予見性について検討した。もう一つは前述とは異なる集団で、高血圧発症直前の血圧値を調整して、発症に至るまでの血圧変動の評価の有用性について検討した。
分担研究者久代は、循環器疾患の効率的なスクリーニングと一次予防のための職域健診のあり方について検討する目的で、日本大学医学部総合健診センター受診者6,831例、およびPL東京健康管理センター受診者37,233例のうち、心電図所見と問診結果が得られた15070例を対象として、心電図所見と胸痛、動悸、失神に関する所見の有無の関連を調べた。心血管系疾患危険因子としては、AGE(年齢)、SBP(収縮期血圧)、DBP(拡張期血圧)、TC(総コレステロール)、TG(中性脂肪)、HDL-C(HDLコレステロール)、LDL-C(LDLコレステロール)、FBS(空腹時血糖)、HbA1c、UA(尿酸)を検討項目とし、胸痛、動悸、失神の有無により心血管系疾患危険因子に違いがあるかを検討した。
分担研究者曽根は、初年度の平成14年度に引き続いて、CRシステムに関する研究として、システムの最近の性能の調査、各種CRシステムの特徴、機能の比較などを行い、現在国内で市販のシステムの画像処理パラメーターのターミノロジーの整理、包括的理解と整合性を実現するために必要なデータ収集や解析を行った。CR法の特徴である画像処理パラメーターの多様化の実体を明らかにした。CRの最近の動向を紹介するために、CRの基礎的事項を示し、CRシステム毎に異なった名称で供給されているシステムの理解、他のシステムのものとの比較をたすけるための解説書の作成を開始した。胸部ファンとームを用いたCR撮影実験を行い、画質評価を試みた。また、 肺癌のCT検診について、国際的あるいは国内的な利用状況を学会や研究会における発表などを通じて調査した。具体的なデータとして長野県下で平成8-10年度に実施されたCT検診の結果を参照して考察した。また、全国労働衛生団体連合会エックス線写真専門委員会では、胸部検診に用いられている胸部X線写真の画質審査を行い、各検診機関の評価得点の経年変化も検討し平成15年度に一応のまとめを行った
分担研究者栗原は、わが国の職域健康診断における外部精度管理の特徴が、評価法が高度で、やや複雑ともいえる一方、評価の頻度が少ないことにかんがみ、評価方法の簡略化と評価回数の増加を可能とする方法の開発を目的として、ドイツで行われている方法等を参考に次の2種類の簡略化された外部精度評価法試案を提案した。①2つのサンプルを測定し、その結果がどちらも、mean±3SD内に入ったものに認定を与える。②3つのサンプルを測定し、 mean±3SD内に入れば3点、 mean±9SD内に入れば1点を与える。点数を発表、または7点以上を目安として認定を与える。これらの実用性を確認するため、全衛連の実際のデータを用いて、これらの方法を採用した場合の評価の精度と確度について、シミュレーションによる評価を試みた。
結果と考察
櫻井と中の成績によると、精度管理事業への参加機関は自機関測定と外部(外注)機関の2群にほぼ折半され、10年間連続して参加した機関は、自機関で37%、外部機関で24%しかなく、また5回以下しか参加していない機関は自機関で35%、外部機関で45%であった。外部機関へ外注している機関で10回連続参加機関及び6~9回参加機関のうち同一外部機関に連続して依頼している機関は約半数であり、残りの多くは1~2回外注先を変更していた。今回の検討ではその理由を明確にできなかったが、低い成績が得られたときに次回外部機関を変更している例が散見された。しかし3回以上変更している例が見られるように安易に外注先を転々と変更することは一定の信頼性を保証するためには避けなければならないと考えられた。各項目の参加回数、自機関、外部機関別成績から、γ-GTが他の項目に比較して高得点の機関が少ないが、総コレステロール、中性脂肪、AST、血糖の4項目について全ての年度で80~100点の機関が全体で65%以上を占め、とくに外部機関では全ての項目において自機関を上回った。また10年間に60~79点2回までを加えるとγ-GTが最も低く75%であったが、他の項目は80%以上であった。59点以下が1回以上存在する機関は精度規格を設定しその中に入るよう努力する必要があると考えられた。同一機関から変更することなく連続受注している外部機関の成績を経年的に見るといずれの項目も一部の機関において大きい変動を示している例が見られるが、これらの機関を除いて全体的に見ると総コレステロール、血糖の2項目は長期にわたって性能が安定していることが分かった。中性脂肪は経年的に90~100点の範囲内に収束してきていることが分かった。AST、γ-GTの酵素2項目は経年的に90~100点の範囲内に著しく収束し、基準分析法の勧告と酵素標準物質の供給による効果が著しいことが分かった。
徳永の成績によると、12項目の臨床検査の測定値の精度は、HDLコレステロール、ヘモグロビンA1c、赤血球・白血球・血小板は、精度管理調査方法及び測定技術において、より向上が望まれると判断された。他の検査項目はほとんどの機関において実用上問題がない水準にあると判断された。とりわけヘモグロビン、血糖、総コレステロールは、ほとんど全ての機関が極めて高度な技術水準を維持していると考えられた。また、検査項目・検査方法別精度管理調査報告値の正確度とその評価に関する解析結果を全体としてみると、臨床検査の外部精度管理の技術水準並びに参加各機関の臨床検査技術水準は、実用上(臨床及び保健指導の上で)ほとんど問題がない状況にあると思われた。すなわち、3年度3回の調査および異なる2または3濃度において配付試料の測定結果の報告値のほとんどは評価標準偏差の2倍以内に、またCVは基準値の5%以内にあり、測定濃度あるいは活性単位はそれぞれ1mgあるいは1単位ごとの区分で正規分布している項目が多かった。しかし、検査項目では、HDLコレステロールが精度管理及び測定技術の両面に於いてさらに検討すべき課題があると考えられた。また、ヘモグロビンA1cは測定法が開発途上にあるため今後変化する可能性があり、赤血球・白血球・血小板は測定機器に依存する事項が多く標準血液の開発など精度管理の実施上の課題があると考えられた。臨床検査を自機関で実施している機関の検査体制等について以下のことが判明した。外部精度管理が日常業務の中で実施されていない機関が少なからずある、そのために日常業務に影響し負担に感じている、国内の精度管理団体が多く統合化を望んでいる、標準偏差による評価はその狭小化により評価が厳しくなり不満が多い、臨床上あるいは保健予防活動の目的に照らした臨床検査の意義と評価の概念について共通の理解が得られていない、検査技術者の人材確保・高齢化対策・育成研修の充実が望まれている、設備の維持・投資が困難である、検査事業の競争が激しく大手機関への統合・外注化等の経営戦略の波に曝されている、などの現状と課題が認められた。
吉田の成績によると、健診連続受診者における高血圧、高脂血症発症リスクを評価する目的で、発症1年前の検査をマッチングさせたケースコントロール研究では、高血圧と高コレステロール血症の発症は発症前2-4年前の検査値、特に平均値が重要であることが明らかとなった。血圧高値発症前のMatched Pairによる血圧変動の評価した検討では、Matching前の各々の移動平均のHypertensive groupとReference groupのペア比較から、個人値AVは、発症時期に近づくに従ってHypertensiveの方がReferenceより高値での出現頻度が高くなっており、高値に進行していることが悪化へ向かっていると同義であることを示していると考えられた。個人値SDも、発症時期に近づくに従ってHypertensiveの方がReferenceに比してわずかに高い方へシフトしており、分散が大きくなることが悪化へ向かっていると考えられる。個人値SLOPEではペア間の差がみられなかった。Hypertensive groupのMatching前3個の各4点における移動平均の時期による比較において、個人値AVでは、早期(d:Pre.5-7)は低値に分布していたが時間経過とともに高値側へシフトし、発症に近づくに従って値が上昇していることが分かった。個人値SDでは、発症に近づくに従って僅かながら変動が大きい方にシフトしているが、明確なものではなかった。個人値SLOPEでは時期による差が殆どみられなかった。
久代の成績によると、問診票で胸痛ありとした例に従来の心血管系疾患危険因子が多かった。一方、失神ありとした例には心血管系疾患危険因子はむしろ少なかった。胸痛ありとした例は、虚血性心疾患による症状を反映していた可能性がある。また、問診票で捕らえられた失神は虚血性心疾患との関与が低いと考えられた。動悸あり群には一定の傾向が見られず、これも虚血性心疾患との関与は薄いと考えられた。問診項目と心電図との関連からは、胸痛、動悸がある例では、安静時心電図に所見を有することが示唆された。失神例には安静時心電図検査は有用性が低いと考えられた。
曽根の成績によると、CRの国内における利用状況やシステムの開発状況を調査した結果、CR法の特徴である画像処理パラメーターは各社それぞれが開発中であり、独自の特徴をもって進歩を続け次第に複雑化、多様化の様相を呈し、統一的理解を困難にしていることがわかった。その標準化が使用者サイドの混乱を防ぐため、精度管理のために必要な段階にきていると思われた。肺癌検診への CT(computed tomography)の利用については、現在米国やわが国でその有効性の検討が始まっているが、すでに具体的に検診事業に取り入れられてきておりその診断面での精度管理や適切な受診者の設定やあるいは検診回数についての指標の作成が必要であることが示された。精度管理についてはCAD(computer assisted diagnosis)が役立つと考えられた。胸部X線写真の画質精度管理については機関に対する適切な情報の提供、担当の医師や技師に対する注意喚起あるいは精度管理に対する医療機関におけるインセンチブを高めることが大切であることが示唆された。
栗原の成績によると、2サンプルだけを用いる方法は、多くのケースで現在の方法による評価とほぼ同様の結果を示したが、いくつかのケースでは、現在の方法による評価と大きく異なる結果が得られた。一方、3サンプルを用いる方法では、現在の方法による評価と比べ、ほぼ遜色のない結果が得られた。すなわち、シミュレーションにより、3つのサンプルのみを調べる簡略法でも、かなり高い精度、確度で評価が可能であることが示されたことから、基本的には、こうした簡便法を採用し参加検査機関の1回あたりの費用と時間の負担を軽減した上で、調査の回数を増やすことが望ましいと考えられた。回数の増加は、評価の信頼性を高めるばかりか、間接的にではあるが、継続的な調査が参加機関それぞれの内部精度管理の代用にもなるとも考えられ、非常に有益であると考えられた。しかし、簡略法採用に当たっては、検査機関のカンニングの可能性や、労働衛生検査項目の測定値は法律が絡むので特に正確であるべきだという点、など考慮すべき事柄も多く、これらについては今後十分に検討していく必要があると考えられた。
結論
全国労働衛生団体連合会に所属する機関であっても、精度管理事業に連続参加する割合は高くなかったが、検討した5つの検査項目のうち総コレステロール、中性脂肪、AST、血糖の4項目については全ての年度で80~100点の機関が全体で65%以上を占めた。特に総コレステロール、血糖の2項目は長期にわたって精度が安定していることが分かった。中性脂肪は経年的に90~100点の範囲内に収束してきていることが分かった。AST、γ-GTの酵素2項目は経年的に90~100点の範囲内に著しく収束し、基準分析法の勧告と酵素標準物質の供給による効果が著しいことが分かった(櫻井、中)。
自機関で臨床検査を実施している全衛連臨床検査精度管理調査参加約180機関の平成13年度から15年度の最近3年間のデータを解析したところ、総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、AST、ALT、γ?GT、血糖、ヘモグロビンA1c、ヘモグロビン、赤血球、白血球、血小板の12項目の検査精度はほとんどの機関において実用上問題がなく適正な水準にあると判断された。しかし、HDLコレステロール、ヘモグロビンA1c、  赤血球・白血球・血小板は、精度管理調査方法、各機関の測定技術においてより向上が望まれると判断された。他の検査項目、とりわけヘモグロビン、血糖、総コレステロールは、ほとんど全ての機関が極めて高度な測定水準を維持していると考えられた。また、臨床検査自施設実施機関の検査体制等は、精度管理が日常業務の中で実施されていない機関が多い、そのために日常業務に影響し負担に感じている偏差による評価はSDの狭小化によりいたずらに精細化しており不満が多い、臨床上あるいは保健予防活動の目的に照らした臨床検査の意義と評価の概念について共通の理解が得られていない、検査技術者の人材確保・高齢化対策・育成研修の充実が望まれている、設備の維持・投資が困難である、検査事業の競争が激しく大手機関への統合・外注化等の経営戦略の波に曝されている、などの現状と課題が窺われた(徳永)。
健診連続受診者における高血圧、高脂血症発症リスクの評価では、高血圧と高コレステロール血症の発症は発症前2-4年前の検査値、特に平均値が重要であることが明らかとなった。健診連続受診者においては、単年度の検査値の高低による判定だけでなく、数回の検査値の変動によって将来の発症が評価されることより、健診の保健指導にも有用な手法となるものと期待された。血圧高値発症前のMatched Pairによる血圧変動の評価では、 血圧値は個人特性が大きいことから、集団値から傾向を把握するのは困難とされているが、個人値をベースにすると、個人値のAVについて評価の有用性が確認された(吉田)。
胸痛、動悸、失神の有無により心血管系疾患危険因子に違いがあるかを検討したところ、 問診票で胸痛ありとした例に従来の心血管系疾患危険因子が多く、失神ありとした例には心血管系疾患危険因子はむしろ少ないことが分かった。胸痛ありとした例は、虚血性心疾患による症状を反映していた可能性があり、問診票で捕らえられた失神は虚血性心疾患との関与が低いと考えられる成績であった。動悸あり群には一定の傾向が見られず、これも虚血性心疾患との関与は薄いと考えられた。以上の結果から、健診時安静時心電図検査と問診票を併用することにより、職域健診受診者のリスク層別化と 高リスク受診者の抽出が効率的に行なえる可能性が示唆された(久代)。
CRの国内における利用状況やシステムの開発状況を調査した結果、CR法の特徴である画像処理パラメーターは各社それぞれが開発中であり、独自の特徴をもって進歩を続け次第に複雑化、多様化の様相を呈し、統一的理解を困難にしていることがわかった。その標準化が使用者サイドの混乱を防ぐため、精度管理のために必要な段階にきていると思われた。肺癌検診への CT(computed tomography)の利用については、現在米国やわが国でその有効性の検討が始まっているが、すでに具体的に検診事業に取り入れられてきておりその診断面での精度管理や適切な受診者の設定やあるいは検診回数についての指標の作成が必要であることが示された。精度管理についてはCAD(computer assisted diagnosis)が役立つと考えられた。胸部X線写真の画質精度管理については機関に対する適切な情報の提供、担当の医師や技師に対する注意喚起あるいは精度管理に対する医療機関におけるインセンチブを高めることが大切であることが示唆された(曽根)。
外部精度管理の評価方法の簡略化と評価回数の増加を可能とする方法を検討し、2サンプルだけを用いる方法は、多くのケースで現在の方法による評価とほぼ同様の結果を示したが、いくつかのケースでは、現在の方法による評価と大きく異なる結果が得られた。一方、3サンプルを用いる方法では、現在の方法による評価と比べ、ほぼ遜色のない結果が得られることが分かった。こうした簡便法を採用し参加検査機関の1回あたりの費用と時間の負担を軽減した上で、調査の回数を増やすことが望ましいと考えられた。しかし、簡略法採用に当たっては、検査機関のカンニングの可能性や、労働衛生検査項目の測定値は法律が絡むので特に正確であるべきだという点、など考慮すべき事柄も多く、これらについては今後十分に検討していく必要があることが指摘された(栗原)。

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