文献情報
文献番号
200301146A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の自主管理推進のための支援システムの開発と産業現場での展開(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
大前 和幸(慶應義塾大学)
研究分担者(所属機関)
- 武林亨(慶應義塾大学)
- 田中茂(十文字学園女子大学)
- 野見山哲生(信州大学)
- 森晃爾(産業医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、化学物質の自主管理推進について、指針等の労働衛生行政上の施策を産業衛生現場で具体化させるために必要な支援システム・支援ツールを開発・評価し、最終的に、化学物質の健康障害予防のために、労働安全衛生マネージメントシステムの一環として実際の現場で有効に機能する自主管理システムを構築することを目的とする。そのため、自主管理に必要な支援ツールの開発、産業現場での自主管理に基づくリスクアセスメントの実施、効果的なリスクマネージメント、リスクコミュニケーションの手法の検討を行う。
研究方法
第一に、化学物質の自主管理において効果的なリスクアセスメントとリスクコミュニケーションの手法を検討するために、有機溶剤作業場における曝露とリスクコミュニケーションを実施した。ターゲットとしたのは、変異原性物質として、健康障害を防止するための指針等でも管理に注意が喚起されているジクロロメタンに関する曝露アセスメントである。個人曝露濃度の測定に加え,生物学的モニタリング指標としての血液中・尿中ジクロロメタン、血液中・尿中ホルムアルデヒド測定法の確立を行った。本代謝系には、代謝酵素の遺伝子多型が関与している可能性が高いことから、文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」および慶應義塾大学医学部倫理委員会規定に則って研究実施計画を策定、慶應義塾大学倫理審査委員会で審査を経て承認を得たのち,遺伝子多型の測定条件についても検討を開始した。また、その結果を、リスクマトリクスなどのツールを用いて作業者自身や作業場の管理者にフィードバックするリスクコミュニケーション活動を実施した。化学物質自主管理を推進する支援システム・支援ツールの開発を目的とした労働衛生保護具の有効性評価においては、作業現場で使用されている有機溶剤に対する防毒マスク用吸収缶の破過検知についての検討に加え、化学防護手袋と化学防護長靴の透過をふまえた選定に必要な基礎データ取得に用いうる新しい透過試験方法について検討した。さらに、実際の化学物質使用事業場における化学物質自主管理システムの事例と自主管理推進上の問題点を把握するために、化学物質の自主管理における企業内システムと専門家の関与に関する調査を行った。
結果と考察
作業環境濃度が作業内容により変動する作業場に対して、個人曝露濃度測定、生物学的モニタリングを導入して曝露評価を実施し、その結果をリスクマトリクスなどのツールを用いて作業者自身や作業場の管理者にフィードバックするリスクコミュニケーション活動を実施したところ、作業環境の改善が促進され,曝露濃度が低減されるとともに、作業環境法による管理区分も改善された。労働衛生保護具の有効性評価法の開発では、防毒マスクの吸収缶破過に対する作業現場での検知管による脱着有機溶剤蒸気を測定する方法の評価を行い、本方法が吸収缶の交換時期の目安になることを示した。また保護手袋・長靴については、作業現場でチェックするための簡易透過試験装置ならびに非破壊手袋透過試験装置、非破壊長靴透過試験装置の開発を行い、いずれも有機溶剤透過性の評価に有用であった。化学物質管理を自主的に行っている5つの企業にヒヤリング調査では、企業ごとの基本的な方針のもと、使用実態に応じて重点を明確にした、導入時の審査を含む化学物質のリスクマネジメントが実施されていた。また専門家が中心となりラインが活用可能なシステムを構築したうえで、さらに必要な事項を支援するという方法で関与
していた。
していた。
結論
本年度は,昨年度からの2年間を通じて開発したさまざまな化学物質自主管理推進に必要な手法・支援ツールを元にして、実際の労働現場で、化学物質の自主管理としてのリスクアセスメントとリスクコミュニケーションを実施し、効果的な曝露濃度の低減を見た。いずれにおいても、科学的・客観的手法の導入と、正しい情報のフィードバックが重要であった。また、化学物質自主管理システムの事例把握と自主管理推進上の問題点の把握についても実施し、マネジメント層による基本方針の設定と専門家による仕組み構築への関与が重要であることが明らかになった。今後は、中小事業場も含めた広い範囲へ本活動を展開するために必要な仕組みの検討が課題と考えられる。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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