既存の肝がん治療法の有効性に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301142A
報告書区分
総括
研究課題名
既存の肝がん治療法の有効性に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
奥坂 拓志(国立がんセンタ-中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 島田和明(国立がんセンタ-中央病院)
  • 古瀬純司(国立がんセンタ-東病院)
  • 小西 大(国立がんセンタ-東病院)
  • 高崎健(東京女子医科大学)
  • 林直諒(東京女子医科大学)
  • 春日井博志(大阪府立成人病センタ-)
  • 佐々木洋(大阪府立成人病センタ-)
  • 佐藤俊哉(京都大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性肝疾患患者の定期的な経過観察により診断される小肝細胞がんに対しては、現在、肝切除術や経皮的局所壊死療法(経皮的エタノ-ル注入療法、ラジオ波熱凝固療法など)が広く臨床応用され、良好な治療成績が報告されている。しかし、小肝細胞がんに対する両治療法の選択は各施設の方針によって行われており、その治療成績については、これまで prospective には比較検討されていない。本研究では小肝細胞がん(腫瘍径が 3cm 以下、腫瘍数が 3 個以内)患者を対象に、肝切除術と経皮的局所壊死療法の無作為化比較試験を行い、小肝細胞がんに対する治療成績や患者負担を比較検討する。また同時に、患者アンケート調査と後向き研究を実施し、その結果を解析する。
研究方法
1)無作為化比較試験:対象は腫瘍径が 3cm 以下、腫瘍数が 3 個以内の肝細胞がん患者である。「施設」と「Child-Pugh の分類」を前層別因子として肝切除術あるいは経皮的局所壊死療法に無作為化割り付けする。主要評価項目は生存期間と無再発期間、副次評価項目は入院期間と入院医療費である。試験治療(肝切除術あるいは経皮的局所壊死療法)後の補助療法は施行しない。試験治療後の再発に対する治療は、肝病変に対しては適応のある限り肝切除群には肝切除術を、経皮的局所壊死療法群には経皮的局所壊死療法を行うが、試験治療中止後には、両治療群間の cross over を認める。一群 60 名で計 120 名(4 施設による多施設共同研究)の登録を予定した。2)患者調査:無作為化比較試験について説明をうけた患者を対象に、試験への参加の理由、不参加の理由を調査する。3)後向き研究:小肝細胞がんに対し初回治療として肝切除術または経皮的エタノール注入療法が行われた患者を対象に、両治療群の治療成績や患者負担をretrospective に比較検討する。15年度は前年度より登録開始した無作為化比較試験の登録状況の確認を行い、患者調査および後向き研究を実施した。
結果と考察
1)無作為化比較試験:プロトコルは、参加各施設の倫理審査委員会にて審査され、2002年10月に承認された。試験開始後6ヶ月間に参加の同意が得られた患者は41例中6例(15%)と予想を大きく下回り、試験の継続は困難(目標症例数達成まで10年必要)と判断された。このため、試験不参加の理由を明らかにするため2) の患者調査を実施した。2)患者調査:回答が得られた不参加者30名のうち、27名(90%)がいずれかの治療を強く希望しており(肝切除術4人、経皮的局所壊死療法23人)、肝切除術と経皮的局所壊死2つの療法の無作為割付けが患者には受容されないことが明らかとなった。このため、1) の無作為化比較試験は中止することを決定した。3)後向き研究:無作為化比較試験中止後に新たにプロトコルを作成し、治療開始が1990-94年の群と98-99年の群を対象に両治療を比較検討した。生存期間は90-94年では両治療に有意差を認めないが、98-99年では肝切除術例が経皮的エタノール注入療法例より有意に良好であった。90-94年の治療例と比較し、98-99年の肝切除術例は肝機能良好、単発の割合が高く、経皮的エタノール注入療法例は高齢、肝硬変の割合が高かった。
結論
無作為化比較試験は患者の治療法選択の希望が強く遂行不能であること、後向き研究では両治療の特徴に応じた適応の選別が行われる傾向があることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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