前立腺癌診療ガイドライン作成に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301051A
報告書区分
総括
研究課題名
前立腺癌診療ガイドライン作成に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
守殿 貞夫(神戸大学大学院医学系研究科腎泌尿器科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 伸一(国立長寿医療センター)
  • 山中 英壽(群馬大学医学系研究科泌尿器病態学)
  • 平尾 佳彦(奈良県立医科大学泌尿器科学教室)
  • 赤座 英之(筑波大学臨床系泌尿器科)
  • 荒井陽一(東北大学大学院医学系研究科泌尿器科分野)
  • 頴川 晋(北里大学医学部泌尿器科学教室)
  • 藤元 博行(国立がんセンター中央病院泌尿器科)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部公衆衛生学教室)
  • 原 勲(神戸大学大学院医学系研究科腎泌尿器科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、国民および実地医家を対象にエビデンスに基づいた明快な前立腺癌診断ガイドラインを作成し、その病態と診断ならびに治療に関する一般的な知識の向上に寄与することを目的とする。近年、広く国民の関心を集めている前立腺癌は欧米においては男性がん罹患率の第1位であり、生活習慣の欧米化とともに、近年、わが国でも急速に増加しているが、国民ならびに実地医家の認識は必ずしも高くない。前立腺癌の診療に関する専門家集団である日本泌尿器科学会は、総力を結集して国内外のエビデンスを収集し文献の評価を行い、我が国の実状にあった明快な前立腺癌診療ガイドラインを早急に作成し、広く国民および実地医家の不安に応えることは緊急性の高い責務といえる。こうして医療の標準化と診療体系を確立させることにより医療経済効率を高める結果をもたらすと考えられ、社会的に極めて大きな意義がある。
研究方法
Cochrane libraryを中心に前立腺癌の臨床試験・研究に関する論文を収集し、臨床疫学、診断法、外科療法、薬物療法、放射線療法の分野別に確立したEBM手法に則りエビデンスを探索し、系統的な文献評価を行う。すなわち各分野別に精力的に活動している泌尿器科医に研究の分担を依頼し、関連領域の専門家に研究の協力を仰ぎ小班を作成しEBM資料収集をしてエビデンス集作成の基礎資料と作成する。次に統一フォーマットの文献評価票を用意し、全国の泌尿器科医の協力を仰ぎ、定められた期間内に各小班を中心に文献評価を行う。こうして集約されたガイドラインを一定の規格に調整し、標準的なガイドライン評価法を用いてガイドラインの記載内容が適切であるか確認する。こうして出来上がった基本案は日本泌尿器科学会でまず意見を求め、また近隣領域の学会ガイドラインとの整合性を調整することでより完成度を高め、我が国の現状に即した専門医家向けの診療ガイドラインを作り上げていく予定である。
結果と考察
研究結果=平成15年度前半において, 分担研究者はそれぞれ担当する領域分野(臨床疫学、診断法、外科療法、薬物療法、放射線療法、待機療法、緩和医療)において積極的に活動している泌尿器科医ならびに関連領域の専門家を研究協力者として加えた小班を構成した。各小班において欧米で既に一定の評価を得ている三つのガイドライン(NCI-PDQ、NCCN、EAU)を詳細に検討し、我が国の現状に沿ったたたき台となるものを作成し、文献検索に必要な臨床上の想定質問(クリニカルクエスチョン)およびキーワードの選定を行った。さらに同時に文献を検索した後に必要となる構造化抄録のフォーマットを作成した。構造化抄録の作成に関しては膨大な数の文献を処理する必要性から研究班のみの作業では事実上不可能であるから、全国の日本泌尿器科学会会員からボランティアを募り470名余の賛同を得ることができた。現在キーワードに沿った文献検索を行い、論文評価シートにダウンロードし、電子媒体を用いて分担研究者を中心に重要と思われる文献のふるいわけを行っている。
考察=次年度においては先に募集したボランティアの泌尿器科医に構造化抄録の作成を依頼し、これを基に小班にて再度検討を行い、たたき台として作成したガイドラインの内容に修正を加える。診療ガイドライン作成指導担当者はガイドライン作成の要点を示すとともに、標準的なガイドライン評価法を用いてガイドラインの記載内容が適切であるか否か、確認・指導する。ガイドラインを学会内で公表し、広く意見を求め改訂作業を行う。また関連学会(日本癌治療学会、日本放射線腫瘍学会)にも提示し意見を求めるとともに公報活動を行う。本ガイドラインは、前立腺癌診療を専門としない一般泌尿器科医あるいは泌尿器科以外の医師が対象であるがこれを基にさらに一般国民向けの解りやすいガイドラインへ展開させていくことも今後の課題となるであろう。
結論
近年、前立腺癌への国民の関心度の高さは研究者自身肌身で日頃より感じる事であり、中高年男性の健康増進を図る国の医療政策に沿うためにも、日本泌尿器科学会が総力を挙げて基本案を一刻も早く作成・公表する必要があることは十分認識している。一般国民と実地医家の認識の向上に役立つ明快な診療ガイドラインとその解説を、学会ホームページならびに電子媒体を用いて公表することで、前立腺癌の一般的な啓発に大きく寄与する。さらに前立腺癌の診療に携わる専門家を対象に、診療ガイドライン作成過程で系統的に収集・評価された文献等をエビデンス集として公表することで広く研究・診療の基礎資料として活用されることが期待される。

公開日・更新日

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更新日
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研究報告書(紙媒体)