標準的電子カルテのための施設間診療情報交換に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301021A
報告書区分
総括
研究課題名
標準的電子カルテのための施設間診療情報交換に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
木村 通男(浜松医科大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省の示した保健医療分野の情報化に関するグランドデザインでは、電子カルテの普及は必須のものとされており、それに関連して各種の研究・間発が進められている申請者はこれまで診療情報の連携に関しての研究を進めてきたが、電子カルテがもたらす施設間診療情報連携の推進のため以下の点について、研究・開発をおこなう。電子カルテ導入のメリットとして診療施設間紹介状の持つ情報が、紙による紹介状に比べ電子化により数段情報量が多くできるという点がある。これは、患者、施設の双方にとって連携の充実と手間の削減のメリットをもたらす。そこで本研究では、送出側、受取側、両方においてこの機能のコンポーネント化をおこなう。また、情報多量化がなった際は、特に受取側での有意な情報の迅速な選択のための機能が必要となることが予想されるのでこれについても機能の提案・開発をおこなう。電子カルテにおいて、テンプレートなどで記述が、構造化され用語が共通化されていれば統計処理も可能である。これは、構造や用語を共有する施設内・施設間では有効であるが、同時に他施設への情報提供がスムースでなければならない。これは自然文による必要がある。また、逆に自然文で記述された所見記述から特定所見を見つけ出すことができれば広域サーベイなどで有用である。これらの機能を自然言語処理の技術で実現することを目指す。院外処方箋が、薬局を特定しないことは重要であるが、それが故に紙運用のままであるのは、非効率であり事故防止の観点でも望ましくない。ネットワークでの配信も可能であるが、その設備の有無が、特定の薬局に有利にならないようになるまでにはまだ時間がかかる。以上の理由で標記の機能の研究・開発をおこなう。電子カルテの機能を充実させるこういった個々の機能を実現することにより診療施設間の情報連携が促進され連携診療の向上につながり、また事故防止にも寄与し一方患者にとってはセカンドオピニオンを受けやすくなり、ひいては医療の透明性の向上が期待される。
研究方法
まず、施設間診療情報連携の基礎となる各種項目コードであるが、以前より主任研究者が取り組んでいる画像検査項目コードJJ1017について本邦における画像検査依頼の詳細レベルを含む必要性および外保連の提唱する検査項目分類との対応の必要性について検討をおこなった。また、以前より進めているMERIT-9紹介状形式についてHL7CDAレベル2の正規リリースにともない、これへの対応を検討した。これによるXML形式での情報のスタイルシートでの自然な表記による提供を検討した。最後に、院外処方箋の情報の2次元シンボル化についてHL7形式化についての留意点、採用すべき薬剤コード、採用すべき2次元シンボルの種類について検討をおこなった。本研究は、個人情報を含む保健医療福祉情報のプライバシー保護等を確保することも含めた情報伝達(情報交換)の方法を目的として行った。研究推進に当たって人や動物等を直接対象とすることは、無かったため倫理面における新たな問題を発生することはなかった。
結果と考察
画像検査項目コードについては、実際にオーダ時に利用されるコードと情報連携時に用いられるコードとが異なる必要はなく真に今求められているものは、実際にオーダできるコードであるという結論に達した。その結果、部位347、手技427とかなり前年までと比して増加し負荷や体位などの検査条件などについても従来「方向」としてまとめられていた中に収録した。JJ1017コードは、部位、手技、方向の3軸を組み合わせて用いるため、現在可能な組み合わせは12万を超えるが、このなかで実際行われている組み合わせは数千であろうかと思われる。ま
た、この際、外保連コードとの対応を行った。MERIT-9紹介状形式のCDA L2R2対応については、大本の規格の固定化を待っていたが、ISO化という目標もあり比較的早期に固定化したため、作業は問題なく行われた。また、これにより記述される紹介状の自然表記は、XMLのスタイルシートが簡単に適用できることが判明した。院外処方箋情報の2次元シンボル化については、用いるべきコードは、HOTコードであり、またHL7項目で保険情報、処方量情報などが十分でなく日本国内拡張として補う必要があることが判った。採用すべき2次元シンボルは、処方箋のスペースからしてQRとPFD417が適当であることがわかり次年度は実際に多数印刷して優劣を判定する予定である。JJ1017コードについては、当初は手技、部位、方向などの3軸を組み合わせて利用することを考えていたが、実際この組み合わせ形式のマスターに対応したRIS、HISはほとんどなく診療施設がオーダ系を導入する際に頭を悩ませる一つが、検査マスターの入手であることもあり、実際行われている検査に絞り、リストの形で提供することが最も望まれていると考えられ次年度早期にそれを作成する予定である。MERIT-9紹介状については、静岡県など自治体主導の診療施設連携の基盤形式として採用されようとしている。CDAそのものがISO化されつつあり今後はこれが、基盤となるであろう。院外処方箋のHL7化に際して不足であった項目は、保険情報と一日処方量であった。前者は当然でもあるが、後者は、諸外国では「一回1錠、一日3回」と表記することが通常であるのに対して本邦では、「1日3錠、一日3回」と表記するためである。ただ、事故防止の観点からも、国際的通常表記を求める声も多いようである。
結論
日本の詳細な画像検査オーダに対応するべくJJ1017コードは拡張された。また、外保連提案の検査分類にも1対多の写像として対応した。JJ1017コードは、DICOM規格のボキャブラリーの一つとして登録されるだけでなく日本での標準的コードとしてMEDIS-DCの標準化委員会に採択されようとしている。MERIT-9紹介状は、ISO規格となろうとしているHL7 CDA R2L2に対応した。この紹介状形式は、静岡県をはじめ施設間診療情報連携の形式として採用されようとしている。院外処方箋情報の2次元シンボル化印刷については、薬剤コードとしてHOTをデータ形式としてHL7を用いるのが最適でることが判明しこれの実装実験をおこなった。用いるべきシンボルとしては、QRシンボル、あるいはPFD417シンボルのどちらかが、院外処方箋の少ないスペースでは適当であろう。本研究推進において、生命、健康に重大な影響を及ぼすと考えられる新たな問題及び情報はなかった。

公開日・更新日

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