文献情報
文献番号
200300696A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト型重症心不全の作成と遺伝子・再生医療特許の実用化(統括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
豊岡 照彦(東京大学)
研究分担者(所属機関)
- 倉地幸徳(産業技術総合研究所)
- 小澤敬也(自治医科大学)
- 仲澤幹雄(新潟大学)
- 河田登美枝(新潟大学)
- 川口秀明(北海道大学)
- 徳永勝士(東京大学)
- 重松宏(東京大学)
- 熊谷啓之(群馬大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
54,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治性の重症心不全は心移植が根本治療とされるが、心移植は社会的にも医療面でも究極の治療から程遠く、代替法が望まれる。本研究では遺伝子と再生医療を併用した新たな治療の開発を統一目標として分担研究した。具体的には遺伝子治療用のベクターの開発(小澤、倉地)、筋障害発症とカルパインの関係明確化(川口)、心不全の重症化機構の検討(河田、仲澤)、動脈再狭窄と心不全増悪機構の解明(重松)、簡便かつ低コストの遺伝子診断法の確立(徳永)、心不全心筋内サルコグリカンの減少機構の分子生物学的検討(熊谷)、および以上の研究結果と再生医療を統合して重症心不全の総合治療を目指す(豊岡)。
研究方法
研究方法と結果=小澤;2型と同様、既報に従い5型Rep蛋白質、VP蛋白質発現組換えバキュロウイルスを作製し、Sf9細胞に同時感染させ、産生されたAAV粒子を精製し、分画化後、1.4g/cm3にピークを認めた。RT-PCRにより力価を定量して一昆虫細胞あたり約20,000粒子の5型AAVベクターを産生した。5型VP1蛋白質のアミノ末端を2型に置換して、従来法と同程度に生産向上した。従来のベクターと昆虫細胞由来VP改変ベクターを比較して同程度にGFP陽性率を示した。倉地;年齢軸で長期安定及び組織特異性が至適化されたヒトカルパインのアンチセンスRNA生産用rAAVベクターの基本構造を構築した。川口;ヒト培養骨格筋細胞(HUSKMC)を継代培養し、カルパインをCa2+およびA23187添加で活性化した結果、α-SGが減量し、一方leupeptinとMDL-28170でα-とb-SGの分解を抑制した。またカルパイン-3のmRNA塩基配列を元にdsRNAを作成して、トランスフェクションした。mRNAの発現抑制はC末部が最も強く、このsiRNAをtransfectしてカルパインを活性化させてもb-SGの分解は抑制されず、逆にmRNAの発現が増加した。仲澤;既報によりLewisラットに心筋炎モデルを作成し、投与2週後から心筋炎が発症、3週目に顕著となり、4週後には消退した。蛋白の経時変化を等電点電気泳動とSDS-PAGEによる二次元電気泳動を行い、プロテオーム解析した。極期の可溶性画分で548点を検出し、200点に濃度変化を認めた。泳動パターンを画像解析ソフトで分類し、濃度を定量化して非階層的なクラスター分析による経時変化を求めた。その結果、無変化群、1週目以降の持続的増加群、2週目以降の増加群および減少群に分類され、スポットのトリプシン分解ペプチドをMALDI-TOF-MSで解析した結果、心臓型の脂肪酸結合タンパク質が同定された。河田;①エコー所見はF1Bで変化せず、TO-2は加齢と共に、又同週令のEFと%FSが著減した。②両心カテーテル法で心血行動態測定して幼児期は両群間に血行動態に差が無く、F1BでLVP、dP/dtmaxとdP/dtminが漸増したが、TO-2では悪化した。EDPとCVPも著増して収縮能低下と鬱血性心不全を示した。③免疫染色とエバンスブルー(EB)による細胞膜透過性を検討し、幼児期TO-2でジストロフィンを心筋細胞膜に認め、25週目に膜から細胞質に移行した。この細胞にEBを認め、末期にこの細胞数が増加した。④ジストロフィンのWesternブロッティングを経時的に定量した結果、TO-2で徐々に断片化し、発現量とLVPに極めて強い相関を、EDPとCVPに強い負相関を認めたが、dP/dtmaxやdP/dtminと相関しなかった。⑤TO-2では生存率と発現量の減少が一致した。重松; IP3-R 1型hetero knock out (KO), 2型homo KO, 3型homo KO mouseおよび対照mouseを対象に頚動脈結紮モデルを作製し、28日後に総頚動脈全長を採取して横断
面切片のHE染色を行った。脱落例を除いて解析し、狭窄最大値はIP3-Rの1型 KO群, 2型KO群、全切片の検討で2型KO群, 3型KO群でNA/MAが小さかった。徳永;①非血縁健常者の末梢血白血球よりゲノムDNAを得、各々のDNA濃度を一定化してVEGF、LDLR、eNOSおよびCD19遺伝子上のSNPsを蛍光標識(FAM、VIC、NEDまたはPET)プライマーでPCR増幅した。この産物を自動シークエンサーによりSSCP解析した結果、1泳動で4~8種のSNPsを同時解析した。プール試料のSSCPからヘテロ接合型について5%以内の誤差で推定可能だった。
②マウスの各組織におけるDicer遺伝子発現量をRT-PCRで定量した結果、心臓と骨格筋で少なく、筋線維のRNAi誘導実験で強い活性を認めた。C2C12細胞の遺伝子発現は分化に伴い減少し、筋線維と同様に強いRNAi活性を示した。内在性d-SG遺伝子は約50%抑制された。豊岡; ①心不全の重症化機構は河田の項で報告した。②心病変進行後に遺伝子治療が期待出来ず、骨格筋芽細胞を培養・増幅後に変性心筋に移植する再生医療を検討した。F1BとTO-2は拒絶反応を呈さなかった。骨格筋芽細胞植による「遺伝子治療と細胞移植の併用療法」の検討する為に、F1B由来筋芽細胞を特殊培地で大量増幅して、筋層に投与し、4-10週後に骨格筋細胞と多量の筋蛋白を認め、移植細胞が増殖・分化した。④ヒト型心不全病態作製を国立感染症研究所と共同で文部科学省にアカゲザルの申請を提出し、本年大臣承認を頂いた。頻脈刺激でサルに再現性良く心不全状態を作製し、この病態でrAAVの生物学的、および遺伝学的な安全性確認を行う。
面切片のHE染色を行った。脱落例を除いて解析し、狭窄最大値はIP3-Rの1型 KO群, 2型KO群、全切片の検討で2型KO群, 3型KO群でNA/MAが小さかった。徳永;①非血縁健常者の末梢血白血球よりゲノムDNAを得、各々のDNA濃度を一定化してVEGF、LDLR、eNOSおよびCD19遺伝子上のSNPsを蛍光標識(FAM、VIC、NEDまたはPET)プライマーでPCR増幅した。この産物を自動シークエンサーによりSSCP解析した結果、1泳動で4~8種のSNPsを同時解析した。プール試料のSSCPからヘテロ接合型について5%以内の誤差で推定可能だった。
②マウスの各組織におけるDicer遺伝子発現量をRT-PCRで定量した結果、心臓と骨格筋で少なく、筋線維のRNAi誘導実験で強い活性を認めた。C2C12細胞の遺伝子発現は分化に伴い減少し、筋線維と同様に強いRNAi活性を示した。内在性d-SG遺伝子は約50%抑制された。豊岡; ①心不全の重症化機構は河田の項で報告した。②心病変進行後に遺伝子治療が期待出来ず、骨格筋芽細胞を培養・増幅後に変性心筋に移植する再生医療を検討した。F1BとTO-2は拒絶反応を呈さなかった。骨格筋芽細胞植による「遺伝子治療と細胞移植の併用療法」の検討する為に、F1B由来筋芽細胞を特殊培地で大量増幅して、筋層に投与し、4-10週後に骨格筋細胞と多量の筋蛋白を認め、移植細胞が増殖・分化した。④ヒト型心不全病態作製を国立感染症研究所と共同で文部科学省にアカゲザルの申請を提出し、本年大臣承認を頂いた。頻脈刺激でサルに再現性良く心不全状態を作製し、この病態でrAAVの生物学的、および遺伝学的な安全性確認を行う。
結果と考察
考察=小澤;バキュロウイルス感染解析より昆虫細胞から5型AAVベクターを作製した。新たなベクター作製は臨床応用に直結する。倉地;重症心不全の主原因δ-SGの機能不全によるジストロフィンの不安定化、限定分解、細胞質内への移行に関して、その予防・治療法開発をδ-SGの補充とジストロフィン分解抑制の二面性で示唆する。カルパインを目標としてrAAVベクターと年齢軸恒常性promotorにより、心筋内発現特異性を高めた。川口;細胞内Ca2+濃度の上昇はカルパイン活性を上げる。HUSKMC内のα-とb-SGが細胞内Ca2+の上昇により分解され、選択的なカルパイン阻害薬により改善した。更にsiRNAによりカルパイン3を選択的に阻害した結果、両者の関連は少なかった。仲澤; プロテオーム解析による網羅的蛋白質変化を自己免疫性心筋炎に適用し、非階層的クラスター分析の結果、4群に分類した。その変化は心臓の脂肪酸結合蛋白質に著明で、心不全状態のエネルギー代謝の変化を示唆する。河田;δ-SG遺伝子欠損のTO-2ハムスターでα、β、γ-SGの他にジストロフィンが分断、移行・著減、収縮・拡張不全、死亡率と細胞膜透過性亢進で一致した。心筋梗塞とイソプロテレノール投与によりジストロフィン、α、β-SGが減少して心不全が進展する共通の過程を示す。重松;哺乳動物では3種のIP3受容体の全型のKO マウスでも内膜肥厚が抑制された。今後の虚血性心疾患による心不全の治療戦略に寄与する。徳永;自動シークエンサーと4色の蛍光色素を用いてSSCP法により4~8SNPsの同時解析した。プール試料のSNP対立遺伝子頻度推定が可能であり、一次スクリーニングの低コスト化・省力化を実現した。組織のdicer発現量、筋芽細胞や筋管細胞のRNAi誘導実験により遺伝子発現量が少ない筋組織でも強い活性を示し、今後RNAiによる遺伝性疾患モデルの作出を可能にする。豊岡;TO-2ではジストロフィン関連蛋白複合体(DAP)のd-SG遺伝子が欠損している。心機能・生存率との関連を検討し、心不全の重症化に伴いジストロフィンが減少し、逆に60kDは増加した。その程度は収縮機能・拡張機能の悪化、生存率、ジストロフィンの膜から細胞質への移行及び膜透過性の亢進と関連した。
結論
小澤;昆虫細胞で開発した5型rAAVベクターは従来法によるものと物理・生物学的性状が同じであった。倉地;心筋における遺伝子、アンチセンスRNA過剰発現にrAAVベクターが有用な事を確認した。川口;特異的な阻害薬とsiRNAの研究からカルパインの中で3型以外のカルパインの活性化を検討する必要がある。仲澤;自己免疫性心筋炎モデルラットで脂肪酸結合蛋白質の意義が確認された。河田;心筋症ハムスターにおける心血行動態、組織学的及び生化学的な観察の結果、心筋細胞選択的な筋ジストロフィー様変性が心不全の重症化を招くと示唆された。重松;全IP3-Rが血管内膜肥厚に関与する事が示され、虚血性心不全の治療戦略に寄与する。徳永;新規SNP解析技術の開発によりSNPの網羅的な関連分析研究に於いて第一次スクリーニングに有用性だった。心筋疾患モデル動物の作出に向けてRNAi法の基礎的成果を得た。豊岡;ジストロフ
ィン断片化が心不全を重症化させると提案した。またサルで心不全の作製に成功した。
ィン断片化が心不全を重症化させると提案した。またサルで心不全の作製に成功した。
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