文献情報
文献番号
200300689A
報告書区分
総括
研究課題名
虚血性疾患に関する血管内皮前駆細胞移植の基礎・臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
浅原 孝之(財団法人 先端医療振興財団)
研究分担者(所属機関)
- 川本篤彦(先端医療センター)
- 増田治史(東海大学再生医学センター)
- 村澤聡(財団法人 先端医療振興財団)
- 西村浩美(財団法人 先端医療振興財団)
- 岩畔英樹(東海大学再生医学センター)
- 西川光郎(キリンビール株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
60,402,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性虚血性心疾患患者および下肢閉塞性動脈硬化症患者に対する血管再生療法として、自己血液から採取した血管内皮前駆細胞(EPC)移植治療法の開発を進め,臨床的優位性を確立する。本年度の目的としては特殊診断治療カテーテルを用いた細胞移植法に関する基礎研究、各種増殖因子を投与した場合のEPCの生体内増幅・採取技術の開発、各種増殖因子を用いてEPCの生体外増幅研究、化学製剤であるスタチン製剤で生体内増幅をはかり、臨床的にEPCを活用する方法の検討、細胞移植方法の改善とその評価方法の確立を目指し、臨床研究の体制を確立し、前臨床研究を実際の臨床研究に結びつけることとした。特に、臨床プロトコールの作成は、将来的な再生医療治療の基盤になるように用意されている。
研究方法
まず西川らは、G-CSF動員末梢血中に循環血管内皮前駆細胞と考えられるCD34+AC133+KDR+細胞が存在することを確認するためのG-CSFの動員により、血管再生能力のある血管内皮前駆細胞を得られることを検証する実験を行った。現在、このG-CSF動員の最適化を行っている。G-CSFにより動員した後に得られた末梢血CD34+細胞を用い、表面抗原をFACSにより解析している。
川本・西村らは、特殊診断治療カテーテルを用いた細胞移植法に関する基礎研究として、カテーテルの位置、接触組織の生体反応と壁運動をセンサーで同定し、実際の虚血部位を診断する装置(NOGA system)を豚の心筋梗塞モデルに応用した。血管内皮前駆細胞は、心筋梗塞病巣が確立後4週目に、自己血液から採取され、病巣に移植され、4週間後に機能検査・組織検査など施行された。これに基づき、臨床治療プロトコールの作成に入っている。
村澤らは、スタチン製剤によるEPCの生体内増殖について検討を続けている。スタチン製剤を投与したマウスを用いてEPCによる血管新生を角膜モデルで検討する。体外培養されたヒトEPCをスタチン製剤で刺激し、EPCの増殖、移動を確認する。
岩畔・増田らは、自己血由来EPCの採取における患者負担の軽減と高齢患者での効果を期待して、VEGF遺伝子を導入した強化EPC移植による血管再生療法の有効性も実験した。ex vivo にてEPCを培養し、7日目にVEGF遺伝子を培養EPCに導入した。 in vivo において重症下肢虚血モデルをマウスにおいて作製し、同日、VEGF遺伝子導入EPCを尾静脈より移植した。経日的にLaser Dopplerによる血流測定、肉眼的下肢機能評価、組織学的評価を行った。
川本・西村らは、特殊診断治療カテーテルを用いた細胞移植法に関する基礎研究として、カテーテルの位置、接触組織の生体反応と壁運動をセンサーで同定し、実際の虚血部位を診断する装置(NOGA system)を豚の心筋梗塞モデルに応用した。血管内皮前駆細胞は、心筋梗塞病巣が確立後4週目に、自己血液から採取され、病巣に移植され、4週間後に機能検査・組織検査など施行された。これに基づき、臨床治療プロトコールの作成に入っている。
村澤らは、スタチン製剤によるEPCの生体内増殖について検討を続けている。スタチン製剤を投与したマウスを用いてEPCによる血管新生を角膜モデルで検討する。体外培養されたヒトEPCをスタチン製剤で刺激し、EPCの増殖、移動を確認する。
岩畔・増田らは、自己血由来EPCの採取における患者負担の軽減と高齢患者での効果を期待して、VEGF遺伝子を導入した強化EPC移植による血管再生療法の有効性も実験した。ex vivo にてEPCを培養し、7日目にVEGF遺伝子を培養EPCに導入した。 in vivo において重症下肢虚血モデルをマウスにおいて作製し、同日、VEGF遺伝子導入EPCを尾静脈より移植した。経日的にLaser Dopplerによる血流測定、肉眼的下肢機能評価、組織学的評価を行った。
結果と考察
EPCは、各種方法で有意に増幅出来ることが確認された。G-CSFあるいはスタチンなどで、EPCを体内増殖出来ることも確認できており、その併用両方も有効であるという予備データもある。動物実験の結果、安全に細胞は心筋に移植され、虚血心筋内の血管形成は著明に促進された。虚血心臓の機能回復も細胞治療を受けた群が著明に改善を遂げた。
臨床治療に必要なEPCの数を確保することは困難であり、効率良く質の高いEPCを採取することが必須となってくる。これまでの検討で、G-CSFでEPCの動員が有意に促進された。この結果を、上記診断治療カテーテルによる細胞移植と組み合わせ、精密で効果的な治療効果を得る技術の確立出来るめどがたったと考えられる。実際に下肢での虚血性疾患に対するEPCの臨床研究が2003年11月に開始されたため、そのフィードバックを受けたさらなるトランスレーショナルリサーチが期待される
臨床治療に必要なEPCの数を確保することは困難であり、効率良く質の高いEPCを採取することが必須となってくる。これまでの検討で、G-CSFでEPCの動員が有意に促進された。この結果を、上記診断治療カテーテルによる細胞移植と組み合わせ、精密で効果的な治療効果を得る技術の確立出来るめどがたったと考えられる。実際に下肢での虚血性疾患に対するEPCの臨床研究が2003年11月に開始されたため、そのフィードバックを受けたさらなるトランスレーショナルリサーチが期待される
結論
EPCの生体内・生体外増幅が可能である。カテーテルによる心筋虚血部位への細胞移植方法は、安全かつ効果的に治療出来ることが判明した。下肢の虚血性疾患にEPCの臨床試験が始まり、ここからのトランスレーショナルリサーチへのフィードバックも期待される。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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