文献情報
文献番号
200300688A
報告書区分
総括
研究課題名
CD34陽性細胞を標的とするADA欠損症における遺伝子治療臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
崎山 幸雄(北海道大学大学院医学研究科・遺伝子治療)
研究分担者(所属機関)
- 小林邦彦(北海道大学大学院医学研究科・小児発達医学分野)
- 守内哲也(北海道大学大学院遺伝子病制御研究所・癌関連遺伝子分野)
- 有賀 正(北海道大学大学院医学研究科・遺伝子治療)
- 大津 真(筑波大学臨床医学系・血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
32,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
致死的疾患であるアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症における骨髄移植、酵素補充(PEG-ADA)療法に代わる根治療法を確立することを目的に①末梢血T細胞を標的としたPEG-ADA療法下の遺伝子治療臨床研究の効果、安全性の最終評価を行う。②血液幹/前駆細胞を標的に新規レトロウイルスベクターを用いた遺伝子導入法を試験管内、NOD/SCIDマウスを用いたin vivo系で評価し確立する。対象患者の適応を検討し、患児骨髄血CD34陽性細胞を標的に遺伝子治療を実施してその効果、安全性を評価する。
研究方法
1. PEG-ADA療法(週1回、1バイアル筋肉内注射)継続下に遺伝子導入T細胞投与中断後の症例A.1について臨床経過、一般血液生化学検査、リンパ球T細胞亜分画、TCRレパトア、導入遺伝子のリアルタイム定量的PCR法、導入遺伝子の発現、野生型レトロウイルス、有害事象などを経時的に解析してこの治療開始8年後の最終評価を行う。
2. 血液幹/前駆(CD34陽性)細胞を分離し、これを標的に新規レトロウイルスベクターPG13/GCsapM-ADA(MPSV,NIH供与)、各種サイトカイン組み合わせを用いて遺伝子導入法の条件を評価し、CD34陽性細胞を標的とする遺伝子導入法を確立する。CD34陽性細胞はIsolexTM300iシステムを用いて自動的に分離する。遺伝子導入にはリコンビナントフィブロネクチン(レトロネクチン、宝酒造供与)をコートし、ベクターをプレロードしたガス透過性バック、臨床使用が米国で認可されているサイトカイン:stem cell factor,thrombopoietin(TPO), Flt3リガンド(Flt3L),IL-6,可溶性IL-6受容体(sIL-6R)(R&D社より購入)のカクテルを用いる。
3. 遺伝子導入効率はPCR法に加えてリアルタイム定量PCR法、コロニー形成細胞を用いたPCR法にて評価する。治療後の遺伝子導入リンパ球増加時には遺伝子挿入部位の解析をLAM-PCR法にて行う。
2. 血液幹/前駆(CD34陽性)細胞を分離し、これを標的に新規レトロウイルスベクターPG13/GCsapM-ADA(MPSV,NIH供与)、各種サイトカイン組み合わせを用いて遺伝子導入法の条件を評価し、CD34陽性細胞を標的とする遺伝子導入法を確立する。CD34陽性細胞はIsolexTM300iシステムを用いて自動的に分離する。遺伝子導入にはリコンビナントフィブロネクチン(レトロネクチン、宝酒造供与)をコートし、ベクターをプレロードしたガス透過性バック、臨床使用が米国で認可されているサイトカイン:stem cell factor,thrombopoietin(TPO), Flt3リガンド(Flt3L),IL-6,可溶性IL-6受容体(sIL-6R)(R&D社より購入)のカクテルを用いる。
3. 遺伝子導入効率はPCR法に加えてリアルタイム定量PCR法、コロニー形成細胞を用いたPCR法にて評価する。治療後の遺伝子導入リンパ球増加時には遺伝子挿入部位の解析をLAM-PCR法にて行う。
結果と考察
1. PEG-ADA療法下に末梢血T細胞を標的にした遺伝子治療臨床研究について遺伝子導入細胞の投与開始後8年を経て以下の結果を得た。
1)症例A.1のPEG-ADAは遺伝子治療前25単位/kg体重/週から14単位/kg体重/週に減量されている。2)末梢血リンパ球数は、500-1,000 /μL と低値である。3) 末梢単核球に0.04-0.09copy/cellのLASNベクター由来ADAcDNAが検出される。4)末梢血単核球ADA活性は-5単位で、抗CD3抗体による試験管内刺激によって-20単位に増加する。5)血清免疫グロブリン値IgG,IgA,IgMは正常下限域に維持され、遺伝子治療前に持続されていた静注用グロブリン製剤の置換療法は中止されている。6)野生型レトロウイルス発現を含め、副作用は認められていない。7)患児の身体発育は正常域で、通常の日常生活を送っている。
2. CD34陽性細胞のIsolexTM300iシステムによる自動分離は純度80-90%、回収率40-50%、細胞生存率95-98と良好に実施された。
3. コロニー形成法による遺伝子導入効率の解析では50-70%、導入細胞におけるADA活性は患児A.2,1でそれぞれ318単位、299単位と正常化が確認された。
4. ADA欠損症患児A.2,1にPEG-ADAの最終投与5週後に遺伝子導入細胞の輸注を行った。PEG-ADA中断後は急速に血中ADA活性の減少・消失、dAXPの漸増をもたらし、全身状態の低下をきたした。その後、dAXPは遺伝子導入細胞の輸注2週後をピークに漸減して、これと一致して全身状態の改善を認めている。
1)症例A.1のPEG-ADAは遺伝子治療前25単位/kg体重/週から14単位/kg体重/週に減量されている。2)末梢血リンパ球数は、500-1,000 /μL と低値である。3) 末梢単核球に0.04-0.09copy/cellのLASNベクター由来ADAcDNAが検出される。4)末梢血単核球ADA活性は-5単位で、抗CD3抗体による試験管内刺激によって-20単位に増加する。5)血清免疫グロブリン値IgG,IgA,IgMは正常下限域に維持され、遺伝子治療前に持続されていた静注用グロブリン製剤の置換療法は中止されている。6)野生型レトロウイルス発現を含め、副作用は認められていない。7)患児の身体発育は正常域で、通常の日常生活を送っている。
2. CD34陽性細胞のIsolexTM300iシステムによる自動分離は純度80-90%、回収率40-50%、細胞生存率95-98と良好に実施された。
3. コロニー形成法による遺伝子導入効率の解析では50-70%、導入細胞におけるADA活性は患児A.2,1でそれぞれ318単位、299単位と正常化が確認された。
4. ADA欠損症患児A.2,1にPEG-ADAの最終投与5週後に遺伝子導入細胞の輸注を行った。PEG-ADA中断後は急速に血中ADA活性の減少・消失、dAXPの漸増をもたらし、全身状態の低下をきたした。その後、dAXPは遺伝子導入細胞の輸注2週後をピークに漸減して、これと一致して全身状態の改善を認めている。
結論
PEG-ADAによる酵素補充療法下のADA欠損症の2症例を対象にPEG-ADAを中断し前処置なしで患児骨髄血CD34陽性細胞を標的とする遺伝子治療臨床研究を実施し、初期の目的を達成することができた。今後の効果と安全性の評価から有用な知見が得れると考えている。
公開日・更新日
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