リウマチ・アレルギー疾患の研究・診療に関する的確かつ迅速な情報収集・提供体制の確立に関する研究-患者、医療関係者、研究者、一般国民を対象とした包括的情報網の確立を目指して-(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200300687A
報告書区分
総括
研究課題名
リウマチ・アレルギー疾患の研究・診療に関する的確かつ迅速な情報収集・提供体制の確立に関する研究-患者、医療関係者、研究者、一般国民を対象とした包括的情報網の確立を目指して-(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(国立相模原病院)
研究分担者(所属機関)
  • 秋山一男(国立相模原病院)
  • 當間重人(国立相模原病院)
  • 赤澤晃(国立成育医療センター)
  • 岡田千春(国立療養所南岡山病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国総人口の約1/3が罹患し、新たな国民病ともいわれるアレルギー疾患(気管支喘息、花粉症を含む鼻アレルギー、アトピー性皮膚炎など)や、著しい運動機能障害により悲惨なQOL障害をきたすリウマチ性疾患は免疫異常に基づく疾患であり、その発症・増悪機序について鋭意研究が進められているところではあるがまだまだ十分に解明されたとは言い難い。まして治癒を目指した根本療法に関しては多くの研究者が基礎・臨床研究に従事しているもののまだ確立したものは無い。このような現状においては、慢性疾患としての免疫・アレルギー疾患の日常診療において、EBM(Evidence Based Medicine)に基づいた医療者側の的確な診断、治療法の選択、実施のみならず、正しい情報に基づいた患者・家族側の医療の選択、自己管理、さらには一般国民の疾病に関する十分な理解が重要である。本研究では、免疫異常(リウマチ・アレルギー疾患)の準ナショナルセンターである国立相模原病院を情報収集・発信のキーステーションとして位置づけ、免疫・アレルギー疾患に関するup-to-dateな研究情報、診療情報、行政情報等を患者・家族、医療従事者、研究者および一般国民を対象として全方位的に幅広く、かつ的確な情報収集を行い、日本アレルギー学会、日本リウマチ学会等の学術団体や、日本アレルギー協会、日本リウマチ財団等と緊密な連携を取ってEBMに裏付けされた迅速、かつ正しい情報発信を行うための基盤整備を行うことを目的とする。本研究の成果を還元することにより、当該疾患罹患患者およびその家族にとっては専門医療機関、専門医へのアクセスが容易となり、ドクターショッピングの回避や、アトピービジネスと呼ばれる悪徳商法に惑わされることが無くなり、また一般国民に疾病に関する理解が深まれば、療養環境がより整えられるものと考えられる。医療従事者にとっても、再診の診療・治療情報とともに適切な専門施設、専門医への紹介が可能となり、日常診療に大きな支援になることが期待される。研究者にとっても研究情報の収集・把握に資することができれば、今後の研究が加速され、成果が期待される。
研究方法
積極的に情報を求めている患者・家族、医療関係者にとってアクセスが容易で、しかも実際にアクセスしている情報源はインターネットであると思われる。現在リウマチ性疾患や、アレルギー性疾患に関するホームページは多量に存在し、様々な情報を提供しているが、その内容は玉石混淆であり、中には根拠のない治療法を万能のものであるかのように薦めているものもある。この研究においてアレルギー性疾患、リウマチ性疾患に関して正統的な医療情報を包括的に伝えるホームページを構築した。ホームページの構造はトップページから4つのサブトップページを置き、それぞれアレルギートップページ、リウマチトップページ、厚生労働科学研究情報、厚生労働省ホームページへのリンクとした。アレルギー情報もリウマチ情報もその内容は1. 専門医・専門施設紹介(地図付き)、2. 学会・研究会・講演会情報、3. EBM集、4. 薬剤情報、5. Q and A、6. リンク、7. ガイドライン、8. 用語集とし、とくに専門医、専門施設情報はアレルギー学会と連携し、地図付きの情報としてアップロードした。Q and Aはこれまでに様々な機会(患者会主催の講演会など)でなされた質問を集めて公開した。またメールやホームページのパン
フレットを通じて質問を受け、一般的な形になおして公開し充実させていく予定である。薬剤情報には薬剤の写真を付け、薬剤名が分からなくても特定できるようにし、簡単な解説を加えることによってガイドラインを補足した。ガイドラインはアレルギー学会、リウマチ学会の編集したガイドラインに準拠し、診断・治療・患者指導について解説する。厚生労働科学研究情報では、厚生労働科学研究補助金を受けてなされた研究概要を公開する。
結果と考察
厚生労働科学研究情報では平成9年から14年までの研究課題、研究者名、および抄録をアップロードした。アレルギーページでは学会・研究会・講演会情報、EBM集(厚生労働省医療技術評価総合研究喘息ガイドライン班による)、薬剤情報(気管支喘息、鼻アレルギー、アトピー性皮膚炎の3疾患について)、Q and A(3疾患について)、ガイドライン(成人喘息、小児喘息、鼻アレルギー、アトピー性皮膚炎について)をアップロードした。リウマチページでは学会・講演会・研究会情報、薬剤情報、Q and Aをアップロードした。当研究が開始されたのは平成13年度であるが、研究補助金の支給時期等の事情から実際にホームページが開設されたのは平成14年の10月である。当初はアレルギー情報の一部(EBM集、薬剤情報、Q and A)のみであったが、開設以来アクセス数は着実に伸び、最近は1ヶ月に30,000件を越えるようになり、累積でも14ヶ月で250,000件を越えた。これはこのような情報が待たれていたことを示すとともに、何回もアクセスする人が多数いることを示している。とくに専門医、専門施設情報などは施設の地図がついており、単に住所のみを示した情報よりもはるかに有用性が高く、患者の紹介、あるいは患者・家族の側からの専門施設探しに非常に有用である。薬剤もその写真を貼付しており、薬剤の正確な名前が分からなくても自分の使用している薬剤を知ることができ、有用性が高い。アクセス数の伸びは正確で簡潔な情報の需要が大きいことを示していると思われる。分担研究者岡田らの、国立療養所南岡山病院アレルギー科、リウマチ科のホームページを利用した保健指導システムも地方の国立療養所のホームページというハンディがありながら日本全国から年間7,000件のアクセスを記録している。赤澤らの中学・高校の生徒を対象とした喘息教育の研究でも薬剤の使用、自己管理など重要なことが必ずしも喘息罹患患者においても理解されてないことが示されている。分担研究者赤澤らの報告でも、喘息に罹患している患者においてさえ正確な疾病に対する理解が必ずしも十分でないことを示しており、またこの年代の特徴かもしれないが、低コンプライアンスの患者が多いことが示されている。分担研究者岡田らのホームページへのアクセスの分析からも低コンプライアンスの患者の比率が高いことが示されており、これらの患者群に正確な情報を伝える媒体としてもインターネットは重要な武器になると考えられる。
結論
我々はリウマチ・アレルギー疾患に関する、医療者、研究者、患者・家族、一般国民を対象とした全方位的情報収集・発信体制を確立するためにインターネット上にホームページを開設した。これらの情報に対する需要は大きく、すべてのコンテンツをアップロードする以前からアクセスが多数に上り、今後コンテンツの充実を計ればその需要はさらに増大するものと考えられる。またこれらの要求に応えるためにも今後ともコンテンツ内容を絶えず更新していき、またそのカバーする領域を広げていく作業が必要である。

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研究報告書(紙媒体)

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