気管支喘息の発症や喘息症状の憎悪に及ぼすウイルス感染の影響と治療の効果に関する研究

文献情報

文献番号
200300683A
報告書区分
総括
研究課題名
気管支喘息の発症や喘息症状の憎悪に及ぼすウイルス感染の影響と治療の効果に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
小田島 安平(昭和大学医学部小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 秋山一男(国立相模原病院臨床研究センター)
  • 足立満(昭和大学医学部第一内科)
  • 勝沼俊雄(東京慈恵会医科大学小児科)
  • 海老澤元宏(国立相模原病院臨床研究センター)
  • 岡部信彦(国立感染症研究所感染情報センター)
  • 田島剛(博慈会記念総合病院)
  • 永井博弌(岐阜薬科大学薬理学教室)
  • 工藤宏一郎(国立国際医療センター呼吸器科)
  • 佐野靖之(同愛記念病院アレルギー・呼吸器科)
  • 小田島安平(昭和大学医学部小児科)
  • 椿俊和(千葉県こども病院アレルギー科)
  • 一戸貞人(千葉県衛生研究所疫学調査研究室)
  • 多屋馨子(国立感染症研究所感染症情報センター第三室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー疾患の分野に最近非常に新しい考え方が導入され、気管支喘息とウイルス感染の問題がさらに重要になってきた。アレルギー疾患が増加したのは世界的には第二次世界大戦後である。本邦でのウイルス感染とアレルギー疾患の増加は極めて重要で、実際にウイルス感染がどのようにしてアレルギー疾患に関与するのかの研究を基礎面と臨床面の両面から追及することは、極めて重要になってきた。本研究の主題は、気管支喘息の発症や進展に対しウイルス気道感染がどのように影響して病気を発症させ、また病状を悪化させるかと、その対策を具体的に示すことである。また、喘息患者がインフルエンザに感染すると重篤な肺合併症を起こして死の転帰をとる患者も少なくないため、これらの感染がなぜ悪いのかの検討を行なう。世界的には1991年NIHを中心に喘息の指導管理のガイドラインが出来、その後1995年、1998年と改訂が進んだが、残念なことに本邦の喘息発症率は減少していない。この現状がどこにあるのかを突き止めることが喘息の発症と進展の予防につながるといえるが、本分野の記載はほとんどない。このため、現在まで喘息の発症や進展に関するものは、環境因子、遺伝因子その後の治療に関するものや発症後のearly interventionに関するものが全てである。しかし、乳児早期のRS(Respiratory Syncytial Virus)やインフルエンザウイルスによる気道感染を契機に発症する喘息児が実に多いと考える。また、成人喘息ではインフルエンザ感染による症状の悪化で死の転帰をとる者も実に多い。このため、ウイルスによる気道感染を契機に発症をする気管支喘息に対し、対策をいかに上手に行なうかについて検討することが極めて重要である。科学的評価をなくしては喘息患者の発症・進展を評価しにくいが、今までアレルギー学会をはじめ、アレルギー研究者はウイルスによる喘息発症という根本的問題が抜けていた。この背景の詳細を検討する研究を進めることで解決方法が出でくると期待できる。また、喘息においては気道過敏性とウイルス気道感染の関係を具体的に明らかにしたい。最終年度はこれまでの結果をふまえて、喘息の発症と進展に抗ウィルス治療特にインフルエンザワクチンや抗インフルエンザ薬は本当に有効か、抗RSV薬の可能性を提示することを目標に、さらに詳細な検討を加えて行く。
研究方法
①小児に関して:小児の研究は今回6施設で行った。研究方法もそれぞれ異なり、各施設での特徴を出して研究を進めた。勝沼は1ヶ月間に入院した喘息発作患者の鼻汁中のRSウイルス抗原測定を行い、発作との関係を比較した。海老澤らは喘息発作シーズン中のRSウイルスの迅速診断、ライノウイルスをPCR により検討を行い、発作との関係を調査した。田島らは喘息患者170人と肺炎、気管支肺炎患者263人を対象に、可能な症例でアデノウイルス、パラインフルエンザ1、2、3、RSウイルス、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジアに対する抗体検査を行い、一部PCRによる検索を行った。小田島らは喘鳴を主訴に入院
したカタル症状のある児を対象とし、その中から頻回入院している児やアレルゲンの暴露がはっきりしている児を対象からはずして、対象を絞った入院患児335名の鼻咽頭咽腔より分泌物を吸引し、RSV抗原を検索し解析を行った。特にRSVの非流行期と考えられている4月から10月までのRSV抗原陽性患者の解析を行った。椿らは通院している気管支喘息患児で、39名(男23名、女16名、平均年齢3.5±2.7歳(Mean±S.D.)、0~11歳)を対象とし、通院中喘息日誌を記載してもらい、受診時に鼻咽腔ぬぐい液採取を行い、また、発作時には症状、所見の記入も行った。観察期間は、2003年5月から最低1回/月、発作時にはさらに追加して鼻咽腔ぬぐい液採取を行った。受診時に鼻汁採取を行いRT-PCR法でRSウイルス、ピコルナウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザ1.2.3、インフルエンザウイルスA,B、コロナウイルス、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジアを検出した。一戸らは国立下志津病院で喘鳴を主訴に入院した2歳以下の患児の鼻咽頭吸引液でRSV抗原また、鼻咽頭吸引液と末梢血でリンパ球抗原について解析を行った。海老澤は小児気管支喘息の秋の発作シーズンにライノウイルスの関与に関し検討した。②成人に関して:秋山らは、ウイルス感染後に気道粘膜下に樹状細胞が出現することに注目し、アトピー型、非アトピー型それぞれ気管支生検し樹状細胞について検討した。工藤らは、ウイルス感染により入院した気管支喘息患者を対象に呼吸機能検査を行った。また、外来通院中の気管支喘息の鼻咽頭吸引液からPCR法によりウイルス検出を行った。佐野らは、入院を要する気管支喘息発作の成人のうちウイルス感染の関与する患者への率とインフルエンザ・ウイルス感染の気管支喘息発作への関与に関し検討した。多屋らはヒトメタニューモウイルス(hMPV)が気管支喘息発作に関与するかについて検討した。③基礎的研究に関して:足立らは気道上皮細胞へ種々の刺激を加えることによりサイトカイン、ケモカインなどの生理活性物質の産生放出やICAM-1などの接着分子の発現が観察されることが判明した。このためin vitroにおける気道上皮細胞培養系を確立し、これに対し炎症性サイトカイン刺激やウイルス感染モデルであるdsRNA刺激を行い新たな生理活性物質の産生などにつき検討した。永井らは新たにダニ抗原を用いてマウスアレルギー性気道炎症モデルの作成を試み、ウイルス感染の模倣実験としてdouble-strand RNAであるPoly I:Poly Cを気道内に投与し、その影響を検討した。
結果と考察
勝沼らの結果では、喘息で入院した患者58人を解析した。すると0歳から2歳では20%の患者でライノウイルスが陽性となり、3~6歳で27%、7~15歳で44%が陽性となった。年齢が高いほど陽性率が高く、月別でも夏期冬季ともに認められた。海老澤の発作時調べたRT-PCR法によるライノウイルスの検討では27人中14人(51.9%)が陽性であった。前年度同様の検討では80%が陽性であったことも考え合わせるとライノウイルスが気管支喘息の発作に増悪に高率に関与していることが示唆された。田島らは131回の発作でのペアー血清を検討した。RSウイルスは22/131例(16.8%)陽性、肺炎マイコプラズマ15/131例(11.5%)、アデノウイルス10/131例(11.5%)、パラインフルエンザ1型5/131(3.8%)、パラインフルエンザ2型4/131例(3.1%)、パラインフルエンザ3型5/131(3.8%)、インフルエンザウイルス0/131例(0%)、肺炎クラミジア0/131(0%)に認めている。小田島らはRSVを検索した335例、そのうち非流行期の4月から10月にRSV抗原陽性で喘鳴を主訴に入院した例が11例あり、6月から8月では13人中の症例中、RSV陽性者は3人であった。このうち1例が気管支喘息を発症し経過観察されている。夏期においてもRSVは気管支喘息に関連するウイルスとして重要であることが証明された。一戸らは気道症状で来院した児の鼻腔拭い液からのリンパ球抗原の分析を行った。その結果、鼻咽頭吸引液では末梢血に比べCD4陽性抗原が有意に低くCD4、CD4陽性中のCD45RAが有意に高かった。特に重症群でCD4、CD8陽性率が高かった。このことは
重症化にメモリーTリンパ球が関与していることが示唆された。多屋はヒトニューモウイルスが冬から春にかけて流行期で小児期に感染し呼吸器症状を誘発することを文献上明らかにした。成人の結果では興味あるデーターは秋山らの報告で、アトピー型9例、非アトピー型9例の気管支生検で樹状細胞の抗体であるS-100、CD11c、CD83、CD123について検討し、気管支喘息患者からは粘膜固有層、血管周囲、筋組織に形態的に樹状細胞が認められ、アトピー型、非アトピー型双方にあり両者に差がなかった。全身ステロイド治療後にも認められ、S-100陽性細胞は非喘息患者と差がなかった。工藤らはウイルス感染により入院した軽症気管支喘息患者の呼吸機能を解析した。入院後末梢気道の回復が高齢者、高齢発症者で残存する傾向が認められ、鼻咽頭拭い液での検討では外来通院中の気管支喘息患者20例では7例にウイルスが検出され、ライノ1例、RS2例、インフルエンザ・ウイルスA型1例(うち1例はRSも陽性)であった。ウイルス感染の前後で呼吸機能検査を行うと軽度のピークフローの低下があったほか中枢、末梢の変化が増強したという結果ではなかった。佐野らは入院を要する気管支喘息発作とウイルス感染と関連を検討した。喘息患者の急性上気道炎が関与するものが20%、下気道炎を含めると42%に関与が認められた。また、類似した気道感染兆候を呈した気管支喘息患者のうち、インフルエンザ・ウイルス感染の有無で検討すると、インフルエンザ・ウイルス抗原陽性、陰性で差がなく、インフルエンザウイルスの感染の有無は他のウイルスと差を認めなかった。基礎面からの結果では、足立らは気道上皮細胞へ種々の刺激を加えることによりサイトカイン、ケモカインなどの生理活性物質の産生放出やICAM-1などの接着分子の発現が観察されることが判明した。このためin vitroにおける気道上皮細胞培養系を確立し、これに対し炎症性サイトカイン刺激やウイルス感染モデルであるdsRNA刺激を行い新たな生理活性物質の産生などにつき検討した。この結果培養上皮細胞を用いてC-CchemokineであるRANTESが誘導され、TNF-α、IL-β、INF-γによりその発現が誘導された。さらに気道上皮におけるIL-8、RANTESの発現はステロイドで抑制された。気道上皮細胞を培養しdsRNA刺激を実施し、上清中のサイトカインのIL-8,RANTES濃度はdsRNA刺激後IL-17fの発現が確認された。このため気道炎症にIL-17fの関与が考えられた。永井らはPBS投与群とウイルス感染モデルであるPoly I:Poly C投与群を比較した。投与6時間後において、用量依存的に総白血球数ならびに好中球数の有意な増加が観察された。また、24時間後においては、総白血球数および好中球数のさらなる増加に加え、リンパ球数の有意な増加も観察された。この際BAL液中では、Poly I:Poly Cの用量に依存してTNF-a産生が観察されたが、6時間に比し24時間後では低下が観察された。また、肺組織におけるtype I IFNの発現を検討した結果、IFN-aならびにIFN-bともに用量依存的な発現亢進が観察されたが、いずれも6時間に比し24時間後では低下が観察された。次いで、Poly I:Poly Cによって明らかに好中球あるいはリンパ球の増加が観察された用量を用いて経時的な検討を行った結果、好中球数は投与6時間以降にピークとなった。今後、上述のダニ抗原誘発アレルギー性気道炎症モデルと組み合わせることにより、ウィルス感染のアレルギー性気道炎症に及ぼす影響を詳細に検討することが可能と思われる。気道感染と気管支喘息の関係について病原体の種類の差による違い、特にウイルス感染と細菌感染の違いついて、また、気管支喘息として発症した個体の増悪因子となりうるかどうかについてと発症前の個体の発症因子となりうるかについて分けて考える必要がある。小児喘息にRSVの感染は発作を重症化する報告が多いが、特に国立相模原病院の喘息入院患者の内、平成14年度86%が平成15年度で48%がライノウイルス感染が関与していたことが示され、小児の気管支喘息の背景に、RSウイルスと、ライノウイルスの感染が大きな役割を演じていることが明らかになった。同様の
研究を勝沼らも行い、また、同時にRSVやライノウイルスの感染が起こっている例があり、他の施設からも報告された。一年中を通してのウイルス検索では、色々なウイルスが喘息発作に関与していることもはっきりした。田島らペアー血清で検討しRSウイルスは16.8%、肺炎マイコプラズマ11.5%、アデノウイルス11.5%、パラインフルエンザ1型3.8%、パラインフルエンザ2型3.1%、パラインフルエンザ3型3.8%、インフルエンザウイルス0%、肺炎クラミジア0%に認めている。更に、小田島らはRSウイルスは非流行期の喘息発作の誘因としても重要であることが判明した。椿らは39名の患児(152検体)から、RSウイルスとライノウイルスにしぼって検出を行った。その結果、ライノウイルスは、9月・10月・12月に2例ずつ、11月に4例検出された。また、RSウイルスは10月・11月に1例ずつ検出された。発作があることと、発熱があることと鼻咽腔ぬぐい液中のウイルス(RSウイルスまたはライノウイルス)PCR陽性であることの間には相関が認められた。多屋らは最近発見された小児期に感染し呼吸器症を発現するヒトメタニューモウイルス(hMPV)を6例の検体より検出を試みたが全例、陰性で、2例にインフルエンザウイルスが検出できた。hMPVの気管支喘息に及ぼす影響については今後の検討課題となった。成人気管支喘息に関しても、秋山らの報告では喘息発作ですぐ受診しウイルス検索が十分されている例が小児より少なく確定的なことが言える段階まで至らなかったが、非アトピータイプの喘息患者とウイルス感染の関連が示唆された。また、工藤らの報告で、鼻腔拭い液からのウイルス検出を外来通院中の喘息患者20名で行い、そのうち7例(35%)でウイルスが検出された。内訳は、ライノ1例、RS 2例、インフルエンザA 4例(うち1例はRSも検出)、B 2例(うち1例はRSも検出)であった。ウイルス感染の前後で呼吸機能検査を行った6例については、そのうち3例で軽度のピークフローの低下を認めた。しかし、回復後の呼吸機能を検討すると、ウイルス感染の結果として中枢、末梢ともに気道閉塞の程度が増強したという傾向はみられなかったと報告している。佐野らは入院を要する気管支喘息発作の誘因として、急性上気道炎 が20%以上を占め、さらに、下気道症状合併例も含めると42%に達していたと報告し、一昨年からの2シーズン(2002年12月~2003年3月、2003年12月~2004年3月)において、インフルエンザを疑わせる急激な発熱と気道感染症状を訴えて当科外来を受診した気管支喘息患者のうち86名でインフルエンザ抗原をチェックした。インフルエンザ抗原陽性であった46名 (A: 37名 B: 3名 A+B: 6名、平均体温 38.7±0.7℃) のうち、18名 (39.1%) に喘息症状の増悪が認められ、うち1名は入院を要する重篤発作であった。一方、インフルエンザ抗原が陰性であった40名 (平均体温 38.3±0.8℃)では喘息症状の増悪は21名 (52.5%) に見られ、入院を要する重篤発作は1名であった。類似した気道感染徴候を呈した気管支喘息患者のうち、インフルエンザ・ウイルス抗原陽性例と陰性例で喘息発作の増悪頻度に有意な差はなかったと報告している。基礎面からは、気道上皮細胞にインフルエンザを曝露して細胞内変化と、eotaxin、RANTES等の遊離ケモカインはアレルギー炎症の病態形成に非常に重要な物質であることが判明した。気道炎症にIL-17ネットワークの中のIL-17fの関与が考えられた。喘息マウスに大して、対照のPBS投与群に比しウイルス感染モデルでPoly I:Poly C投与群では、投与6時間後において、用量依存的に総白血球数ならびに好中球数の有意な増加が観察された。また、24時間後においては、総白血球数および好中球数のさらなる増加に加え、リンパ球数の有意な増加も観察された。この際BAL液中では、Poly I:Poly Cの用量に依存してTNF-a産生が観察された。小児喘息にRSVの感染は発作を重症化する報告が多いが、特に国立相模原病院の喘息入院患者の内、86%がウイルス感染が関与していたことが示され、小児の気管支喘息の背景に、RSウイルスと、ライノウイルスの感染が大きな役割を演じていることが明らかになった。同
様の研究を勝沼らも行い、同様の傾向を示し、他の施設からも報告された。一年を通してのウイルス検索では、色々なウイルスが喘息発作に関与していることもはっきりした。更に、小田島らはRSウイルスは年長児の喘息発作の誘因としても重要であり、喘息発症にも関与することが判った。しかし、椿らの研究で1歳未満で細気管支炎で入院した低年齢児ではRSウイルスが喘息発症に有意に関係するか疑問が残った。成人気管支喘息に関しても、秋山らの報告では喘息発作ですぐ受診しウイルス検索が十分されている例が小児より少なく、非アトピータイプの喘息患者とウイルス感染の関連が示唆された。また、工藤らの報告で、ウイルス感染後発作が遷延する例もあり、ウイルス感染後の細菌感染が関与してくることが示唆された。佐野らは入院を要する気管支喘息発作の誘因として、急性上気道炎 が20%以上を占め、さらに、下気道症状合併例も含めると42%に達していた。 類似した気道感染徴候を呈した気管支喘息患者のうち、インフルエンザ・ウイルス抗原陽性例と陰性例で喘息発作の増悪頻度に有意な差はなかった。基礎面からの検討では、気道上皮細胞にインフルエンザウイルスを曝露した際に、細胞内変化や、eotaxin、RANTES等の遊離ケモカインがアレルギー炎症の病態形成に非常に重要な物質であることが見いだされた。喘息モデルマウスをインフルエンザで感作して特に変化がない結果であったが、この点については感染時期に問題であった可能性がある。インフルエンザ曝露で局所のIgE値の上昇が見られれる報告があることからしても、感染時期を変え今後検討の必要がある。日本脳炎ワクチン未接種群に日本脳炎ウイルス中和抗体が検出されたことは重大な事実で、インフルエンザウイルスも中枢神経症状を呈するウイルスであり、今後の対策が重要と考える。
結論
小児の喘息発作の誘因にRSウイルスが比較的重症発作を惹起し、年齢が高い喘息児にも発作誘因の原因となることが判った。更に興味あることはRSウイルス感染よりもライノウイルス感染が高頻度で気管支喘息発作を誘発することが判明し、ウイルス感染後の細菌感染も気道の過敏性を遷延化させていることが考えられた。基礎面での問題点はインフルエンザの喘息悪化にRANTESなどのサイトカイン、ケモカインの産生が関与していることが判明した。すなわち感冒罹患により生体内でサイトカイン、ケモカインの産生増加が誘導され気道におけるアレルギー性炎症の増悪へと結びつくことが想定された。

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