関節リウマチ・骨粗鬆症患者の疫学、病態解明と治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
200300668A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチ・骨粗鬆症患者の疫学、病態解明と治療法開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
越智 隆弘(国立相模原病院)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋直之(松本歯科大学総合歯科医学研究所)
  • 田中栄(東京大学医学部)
  • 吉川秀樹(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 下村伊一郎(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 野島博(大阪大学微生物病研究所)
  • 広畑竣成(帝京大学医学部)
  • 武井正美(日本大学医学部)
  • 鈴木隆二(国立相模原病院臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
84,144,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者社会に於ける、RA患者などの生活機能病についての基礎的、臨床的、疫学的解明、再建治療の基本コンセプトとしての骨関節破壊様式の解明、根治治療開発、機能障害再建などの課題を解決する社会的必要性は大きく、成果として機能障害患者減少の社会的恩恵は大きい。本研究はRAの未解明病因・病態解明と予防法、根治療法開発へつながるものである。
研究方法
Ⅰ)関節リウマチ患者に発症する骨粗鬆症の臨床疫学的研究:多施設でRA患者と対照群との比較研究を行った。①多数患者の疫学的調査は、ビスフォスフォネート(BP)未投与の女性RA患者609例(平均60.6±10.1歳)を対象に、非RA高齢者、非RA膠原病患者との比較研究を行った。②RA自然経過病型別検討は長期(平均19,1+6,6年)経過観察された50症例を対象にした。③ステロイド投与の影響については多施設と、大阪市立大学でステロイド長期(平均10,2mg/日 X 7,7年)投与症例と閉経後女性(294名)の腰椎椎体骨折の比較研究が行われた。骨密度(BMD)は腰椎、大腿骨頚部、大腿骨近位部、第2中手骨などを対象に、DXA法、CXD法、pQCT法にて測定した。踵骨音響的骨評価(OSI)はAOS-100で測定した。骨代謝マーカーはBAPと尿NTX、RA活動性の指標はCRP、ESRおよびRFを測定した。RA重症の病型は関節破壊の広がりで評価した。Ⅱ)RA骨粗鬆症病態解明研究:ヒト破骨細胞誘導は①ナース細胞との共培養系として、ヒトCD14陽性細胞をナース細胞と4週間、共培養し得られるTRAP陽性単核細胞にGM-CSF,IL-3,IL-7のいずれかを加えて培養し出現する破骨細胞様細胞形成系。②ナース細胞との共培養を使わない系としてCD14陽性細胞をM-CSFやRANKLで7日間培養系を用いた。破骨細胞の同定はTRAP、ビトロネクチンレセプター発現と象牙切片上での骨吸収能で評価した。Ⅲ)RAの病因解明研究:患者の骨髄血の選択的トランスクリプトーム解析は、健常人血液細胞、正常線維芽細胞、RA患者(約80人分)およびOA患者(約70人分)の血液・骨髄液からのcDNA ライブラリーを作成し段階的サブトラクション法を行った、健常人血液細胞 cDNA ライブラリーから正常繊維芽細胞由来のmRNAを用いた血液細胞特異的に転写誘導される遺伝子群(PREB:Predominantly expressed in blood cells)、同様に、RA患者骨髄液cDNA ライブラリーからOA患者骨髄液細胞由来のmRNAを用いた、RA患者骨髄液において特異的に転写誘導される遺伝子群(AURA:Augmented transcription in RA patients)を包括的に単離した。
結果と考察
Ⅰ)関節リウマチ患者に発症する骨粗鬆症の臨床疫学的研究:RA患者は非RA高齢者に比べ、高頻度で高度な骨粗鬆症が認められ、高齢者の骨密度減少の特徴部位である腰椎、大腿骨頚部や手首に顕著な骨密度減少が認められる。本年は厳密な比較のために対照症例との比較検討を続けた。非RA高齢者、非RA膠原病患者等との比較から、RA患者では腰椎骨密度(0.80/0.83)、大腿骨頚部骨密度ともに有意に低く(0.58/0.60: p<0.05)、第2中手骨の骨密度も有意に低値であった(1.53/1.92: p<0.01)。さらに、骨代謝マーカー(BAP:29.7/23.1: p<0.01)、尿NTX(67.2/50.4: p<0.01)とも有意に高値であった。重症度(病型)との関連性は、RA患者の骨粗鬆症は重症病型に、また腰椎椎体より関節近傍の骨端部に特徴的に認められたが、病型間の骨密度減少は短期間(平均7,2ヶ月)の経過では有意差は無かった。副腎皮
質ホルモン剤投与RA患者では、従来の報告同様の骨密度低値傾向が認められた。しかし、ステロイド投与量の多い膠原病患者より非投与RA患者のほうに骨密度が低く、さらに、RAで長期投与患者では非投与患者に比べて椎体骨折の頻度に優位差はなく、投与症例の骨密度低下は、薬物投与の要因よりは疾患あるいはRA重症度に関連する要因の可能性がある。以上から、RA患者には加齢に伴うより明らかに顕著な骨粗鬆症が認められ、骨密度低下は腰椎に加えて、股関節などの傍関節部にも認められる特徴がある。骨密度低下は関節破壊の顕著な重症病型の罹病早期に急速に進むが、長期経過では経年的骨密度減少に病型間の有意差は明らかではない。ステロイド投与が骨密度減少の要因と考えられているが、投与が要因か、投与を必要とするRA重症度が要因かは不明確である。長期投与患者の腰椎圧迫骨折発現が加齢による骨粗鬆症症例と有意差が無いことから、RAによる骨粗鬆症をどのように評価し、考えるべきかの結論を出す必要がある。Ⅱ)RA骨粗鬆症病態解明研究:RA骨髄には病巣を形成する線維芽細胞様細胞(ナース細胞)と、それに支持される異常活性化した血球系細胞とから成る恒常的な病巣であることを見出した。軽症病型では免疫系細胞の活性化が顕著であるが、重症病型では更に破骨細胞や骨髄球系細胞の異常活性化も併せていることを報告した。前年度までの当研究班報告で、顕著な骨粗鬆症を示す重症病型RAでは破骨細胞系の異常亢進が認められ、その破骨細胞はRANKL非依存性細胞であり、腸骨骨髄と傍関節部骨端部骨髄に分化・増殖が認められることを報告した。本年度はRA患者に認められる破骨細胞系と正常マウスのそれとの異同を検討した。CD14陽性単球様細胞からのヒト破骨細胞形成と、マウス破骨細胞との比較検討により、PGE2はRANKL+M-CSFによるマウス破骨細胞形成を促進するが、ヒトのそれを濃度依存的に抑制した。マウスとヒトの破骨細胞の反応が異なることが示された。ナース細胞との共培養を使ったRA破骨細胞の特性についてはCD14陽性単球様細胞を4週間、ナース細胞と共培養して得たTRAP陽性単核細胞(前駆破骨細胞)はIL-3、IL-5、IL-7、GM-CSFおよびRANKL・M-CSFそれぞれの刺激により、TRAP、carbonic anhydrase II、カルシトニンレセプター等を発現する多核巨細胞へと分化し,象牙切片上に吸収窩を形成し成熟破骨細胞であった。これらの細胞に特異的に発現する遺伝子解析をdifferential display法で行い、20の成熟破骨細胞特異的遺伝子、15の前駆破骨細胞特異的遺伝子を見出した。成熟破骨細胞にのみ特異的に発現していた新規の4回膜貫通型膜タンパク7-44に対する抗体はヒトの破骨細胞を特異的に認識するをWestern-blottingと免疫組織染色で確認した。RA患者に特徴的に見出された破骨細胞は、従来、マウスなどの系で確立された「RANKL依存性」と異なり、少なくともRAでは破骨細胞は多様性を有することが示唆された。RAの重要病態である骨粗鬆症あるいは骨関節破壊を選択的に抑える治療法へ結び付く研究として精力的に進める。Ⅲ)RAの病因解明研究:骨髄を場とするRA病因解明研究としては、RA患者骨髄CD34+細胞が血管内皮前駆細胞、血管内皮細胞へ有意な分化の亢進から、RA関節滑膜における血管新生、血管内皮細胞の活性化に、当初の仮説どおり骨髄CD34+細胞の異常の深い関与を示した。また、RA骨髄中にはEBVに対するCTL活性が増加しており、EBVへの活発な感染制御を見出した。分子レベルでの病因解明には選択的トランスクリプトーム解析は必須であり、今回は263種類のPREB遺伝子群の単離に成功した。各PREB最適プローブを用い、RA患者(約80人分)およびOA患者(約70人分)について解析を行い、RA患者骨髄液細胞特異的に転写誘導される遺伝子群を包括的単離が進行している。RA骨髄に見出される遺伝子群を包括的に解明することにより原因遺伝子を捕らえると考えている。
結論
RA患者に認められる骨粗鬆症は疾患特徴的に広く認められる臨床症状であるようだ。その重要な誘因となる破骨細胞分化は従来知られているものと異なり、破骨細胞の多様性が示された。未解明部分の
解明を進める中で、未解明のRA病因・病態解明、完治療法開発への途が開けそうだ。

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