文献情報
文献番号
200300636A
報告書区分
総括
研究課題名
既存薬剤の副作用に関与する遺伝子の探索技術の開発(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
柳川 弘志(慶応義塾大学理工学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究(トキシコゲノミクス分野)
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、遺伝子型(核酸)と表現型(蛋白質)の対応付け手法であるin vitro virus (IVV)法やSTABLE法を用いて、薬剤と相互作用する蛋白質を迅速かつ網羅的にスクリーニングするプロテオーム解析技術を開発することであり、平成15年度の計画は、種々の組織由来の市販ライブラリーを鋳型とした対応付け分子ライブラリー構築法を確立し、モデル薬剤を用いた、対応付け分子ライブラリースクリーニングによる、本法の有用性の確認であった。
研究方法
研究方法と結果=本研究は、以下の工程(1)から(5)により構成される。(1)薬剤を固定したアフィニティプローブの作製。(2)組織mRNA由来IVV対応付け分子ライブラリーの構築。(3)アフィニティ選択による薬剤と相互作用する蛋白質(対応付け分子)の分離。(4)蛋白質に連結した核酸部分のPCRによる増幅。(5)塩基配列解析による蛋白質の同定。平成15年度は、マウスおよびヒト組織mRNA由来IVVライブラリーの構築、FK506固定アフィニティプローブを用いた、マウス脳由来IVVライブラリースクリーニング、イレッサ固定用アフィニティプローブの作製とIVVライブラリースクリーニング、レチノイド誘導体固定用アフィニティプローブの作製とモデルIVVアフィニティ選択実験、およびpurvalanol B固定アフィニティ樹脂を用いた、モデルIVVアフィニティ選択実験を行った。IVVライブラリーの構築に関し、ベクター組込みや形質転換等遺伝子組換法を用いない、PCR等in vitroの手法のみを用いた方法を開発し、最低鎖長が長く鎖長分布が均質でしかも多種の遺伝子を含むライブラリーを構築することができた。FK506固定アフィニティプローブを用いたIVVライブラリースクリーニングに関し、マウス脳由来IVVライブラリーのスクリーニングを行った。8ラウンド後のcDNAをクローニング後、80クローンについてDNA配列解析した結果、35クローンが 12 Kd FK506結合蛋白質(FKBP-12)であった。リアルタイムPCRによるFKBP-12 cDNAの定量では、FKBP-12が最初のライブラリーに比べ8ラウンド後のライブラリーでは3万倍濃縮されていた。昨年度作製したpurvalanol B固定アフィニティ樹脂を用いた、モデルアフィニティ選択実験でCDC-2のIVVとcyclin B蛋白質複合体の濃縮を確認した。イレッサ固定用アフィニティプローブの作製とIVVライブラリースクリーニングに関し、イレッサ誘導体の構造活性相関を調査・検討し、固定用ビオチンリンカー導入部位が異なる2種の誘導体(イレッサ誘導体1およびイレッサ誘導体2)を設計・合成した。これらのイレッサ誘導体固定アフィニティプローブに対する、無細胞翻訳系で発現したEGFレセプターのチロシンキナーゼ領域の結合能を確認した。また、平成16年度実施予定であった、これらのイレッサ誘導体固定アフィニティプローブを用いたIVVライブラリースクリーニングを一部実施し、新たなイレッサの結合蛋白質の可能性がある蛋白質の配列解析を行うことができた。レチノイド誘導体固定用アフィニティプローブの作製とモデル系でのアフィニティ選択実験に関し、レチノイド誘導体2種(Am-80とCh-55)のビオチン化誘導体を合成した。無細胞翻訳系で発現したRARリガンド結合部位蛋白質のAm-80固定アフィニティ樹脂に対する結合能を確認した。その後、グルタチオン-S-転移酵素のIVVを対照にしたモデル系IVVアフィニティ選択実験でRARリガンド結合部位のIVVの濃縮を確認した。
結果と考察
考察=先にも述べたが、平成15年度の計画は、種々の組織由来の市販ライブラリーを鋳型としたIVV対応付け分子ライブラリー構築法を確立し、モデル薬剤を用いた、対応付け分子ライブラリースクリーニングによる、本法の
有用性の確認であった。筆者は上記目的を達成するため、ベクター組込みや形質転換等遺伝子組換法を用いない、PCR等in vitroの手法のみを用いた方法で、市販マウス脳由来mRNAライブラリーよりIVVライブラリーの構築を行った結果、最低鎖長が長く鎖長分布が均質でしかも多種の遺伝子を含むライブラリーを得ることができた。同様の方法でヒト肺およびヒト脳由来IVVライブラリーも構築することができ、汎用的なIVVライブラリー構築法を確立することができたと考えている。FK506固定アフィニティ樹脂を用いたマウス脳由来IVVライブラリースクリーニングの結果、IVVライブラリー中のFKBP-12の特異的濃縮を確認し、IVVを用いた薬剤結合プロテオーム解析法の有用性を実証した。副作用未知既存薬剤のアフィニティプローブの合成については、分子標的抗癌剤イレッサについて固定用ビオチンリンカー導入部位が異なる2種の誘導体を合成した。これらのイレッサ固定アフィニティ樹脂を用いたIVVライブラリースクリーニングについては、平成16年計画の実施事項であったが、前倒しにて一部実施し、新たなイレッサ結合蛋白質の可能性がある蛋白質の配列解析を実施することができた。また、白血病・乾癬治療薬として開発中のレチノイド系薬剤であるAm-80とCh-55の誘導体をそれぞれ1種、合成した。Am-80固定アフィニティ樹脂を用いた、モデルアフィニティ選択実験でRARリガンド結合部位のIVVの濃縮を確認した。来年度は、イレッサ、レチノイド系薬剤、およびサリドマイドの薬剤固定アフィニティ樹脂を用いたIVVライブラリースクリーニングをさらに実施し、薬剤結合蛋白質の網羅的解析を行う。さらに、新規薬剤結合蛋白質かどうかの確認のため、共鳴プラズモン等を用いた薬剤?蛋白質相互作用の検証を行う計画である。
有用性の確認であった。筆者は上記目的を達成するため、ベクター組込みや形質転換等遺伝子組換法を用いない、PCR等in vitroの手法のみを用いた方法で、市販マウス脳由来mRNAライブラリーよりIVVライブラリーの構築を行った結果、最低鎖長が長く鎖長分布が均質でしかも多種の遺伝子を含むライブラリーを得ることができた。同様の方法でヒト肺およびヒト脳由来IVVライブラリーも構築することができ、汎用的なIVVライブラリー構築法を確立することができたと考えている。FK506固定アフィニティ樹脂を用いたマウス脳由来IVVライブラリースクリーニングの結果、IVVライブラリー中のFKBP-12の特異的濃縮を確認し、IVVを用いた薬剤結合プロテオーム解析法の有用性を実証した。副作用未知既存薬剤のアフィニティプローブの合成については、分子標的抗癌剤イレッサについて固定用ビオチンリンカー導入部位が異なる2種の誘導体を合成した。これらのイレッサ固定アフィニティ樹脂を用いたIVVライブラリースクリーニングについては、平成16年計画の実施事項であったが、前倒しにて一部実施し、新たなイレッサ結合蛋白質の可能性がある蛋白質の配列解析を実施することができた。また、白血病・乾癬治療薬として開発中のレチノイド系薬剤であるAm-80とCh-55の誘導体をそれぞれ1種、合成した。Am-80固定アフィニティ樹脂を用いた、モデルアフィニティ選択実験でRARリガンド結合部位のIVVの濃縮を確認した。来年度は、イレッサ、レチノイド系薬剤、およびサリドマイドの薬剤固定アフィニティ樹脂を用いたIVVライブラリースクリーニングをさらに実施し、薬剤結合蛋白質の網羅的解析を行う。さらに、新規薬剤結合蛋白質かどうかの確認のため、共鳴プラズモン等を用いた薬剤?蛋白質相互作用の検証を行う計画である。
結論
In vitroの手法のみを用いた汎用的IVVライブラリー構築法を確立し、マウス脳およびヒト肺由来IVVライブラリーを構築した。FK506固定アフィニティ樹脂を用いたIVVライブラリースクリーニング実験を実施し、FKBP-12の特異的な濃縮に成功した。副作用未知既存薬剤のアフィニティプローブの合成について、イレッサの固定用ビオチンリンカー導入部位が異なる2種の誘導体を合成し、開発中のレチノイド系薬剤であるAm-80とCh-55の誘導体をそれぞれ1種、合成した。さらに平成16年計画の実施事項であったイレッサ固定アフィニティ樹脂を用いたIVVライブラリースクリーニングを前倒しにて一部実施し、新たなイレッサ結合蛋白質の可能性がある蛋白質の配列解析を実施した。Am-80固定アフィニティ樹脂を用いたモデルアフィニティ選択実験で、RARリガンド結合部位のIVVの濃縮を確認した。
公開日・更新日
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更新日
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