性の健康相談室を通じての市民のSTD/HIV感染調査とHIV感染予防に関する研究

文献情報

文献番号
200300567A
報告書区分
総括
研究課題名
性の健康相談室を通じての市民のSTD/HIV感染調査とHIV感染予防に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
阿曽 佳郎(財団法人性の健康医学財団)
研究分担者(所属機関)
  • 松田静治(江東病院)
  • 小島弘敬((財)性の健康医学財団)
  • 山崎修道((株)三菱化学ビーシーエル)
  • 小野寺昭一(東京慈恵会医科大学)
  • 熊本一朗(鹿児島大学)
  • 岡慎一(国立国際医療センター)
  • 根岸昌功(東京都立駒込病院)
  • 堀口雅子(性と健康を考える女性専門家の会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国におけるHIV感染は増加傾向にあり、10年後には蔓延する危険が予告されている。それを防止することは、焦眉の急である。一方、STDとHIV感染との強い相関が示され、性感染症としてのHIV感染の予防を考えるとき、STDを予防することは、とりもなおさずHIV感染の予防につながると信じられる。そこで、本研究では性的活動が活発な若い人たちが利用しやすいツールであるEメールによる“性の健康相談"での性の悩みについての相談、啓発を通して、また、より具体的に“性の健康相談室"での相談、検診を通してSTD/HIV感染の発見に努め、感染予防に貢献することを目的とした。
研究方法
1)“性の健康メール相談":ホームページ、リーフレット等で本相談について広く紹介し、Eメールによる性の悩みを募集し、専属の相談員が週日、日中常時待機し、分る範囲でできる限り早く、質問に対する回答をし、相談者の抱える悩みや問題について、内容分析・検討を行った。
2)“性の健康相談室"を通しての相談、検診、啓発:ホームページ、都内保健所等を通して、また、リーフレット、メッセージ・カード等により、匿名・無料・完全予約システムの本相談室について宣伝に努め、相談者を募った。相談は、本研究班研究者を中心とした医師が担当した。1人の相談者に1時間かけ、満足のいく相談・STD/HIV感染についての詳細な説明・検診を行った。
相談者はSTD/HIV感染についての相談前質問票を記入の後、相談、検診を終え、さらに相談後質問票に記入した。その相談前後の質問票の評価で、相談による啓発の程度の評価を試みた。
検診は身体的な検診と共に、淋菌、クラミジア、HIV、HPV(女性のみ)、梅毒、HSV、HBV、HCVの検査を行った。
結果と考察
1)“性の健康メール相談":Eメールによる相談総件数は2,017件。内訳をみると、性別は男26%、女62%、不明12%と、女性が多かった。年代別では15~19歳が最も多く、約1/3を占めた。次に20~24歳が400人と多かった。相談内容としては、「自覚症状」に関するもの45.2%、「おりもの」16.4%、「検査法・治療法」15.2%、「感染経路」12.9%と多かった。
これまではSTD/HIV感染の問題だけでなく、性の問題は人間が生きていく上で極めて重要な問題であるにもかかわらず、プライバシーが大きく関わり、適切に処理されて来なかったが、このような「E-メール」の有効利用は、性的に活発な若年層のSTD/HIV感染予防啓発、正しい性に関する知識の普及に大いに役立っていると考えられる。
2)“性の健康相談室"を通しての相談、検診、啓発:実施期間が短く十分な結果は出ていないが、約5か月間に44人の相談者が来訪した。年齢は18歳から62歳に及んだ。年代別での内訳は20歳代が24人で全体の半数以上を占めたが、その内、女性が15人と多い。次に多いのが30歳代であるが、11人中、9人は男性であった。全体の性別内訳は男性23人:女性21人と、"メール相談"とは異なり、全体的にみると男女の差は殆どなかった。情報取得手段としては、ホームページ(携帯サイトを含む)36/44人と大部分を占めた。相談前後の知識状況については、相談前の平均点8.8、相談後の平均点9.1で、ある程度の啓発の効果がみられた。
STD/HIV感染の診断については、のどの拭い液で淋菌(陽性)が2人、クラミジアIgA(+)6人、IgG(+)13人、IgG(±)3人、クラミジア抗原(陽性)3人、梅毒抗体(+)1人、HPV中~高リスク(陽性)6人、低リスク(陽性)1人。また、HSV1型抗体(+)19人、(±)1人、HSV2型(+)3人。活動性のSTDの診断は6/44であったが、将来、相談者が増加すれば、頻度が高くなることが予想される。
結論
性感染症としてのHIV感染の予防は、“性"の問題という特殊性から、簡単ではないが、“性の健康メール相談"及び“性の健康相談室"への反応からみて、Eメールおよびインターネットの特長を生かし、ナビゲーター・ツールとして活用すれば、有効な道が開かれるのではないだろうか。
また、今後は教育機関との密接な連携による正しい性教育の普及、さらに、保健所、診療所、病院との十分な連携が、世界に範となるSTD/HIV感染予防、診断、治療システムの確立には必須となろう。

公開日・更新日

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