粘膜ワクチン開発の基礎となるアジュバントに関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200300549A
報告書区分
総括
研究課題名
粘膜ワクチン開発の基礎となるアジュバントに関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
清野 宏(東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高木 広明(株式会社プロテイン・エクスプレス)
  • 濱端 崇(国立医療センター)
  • 田村 慎一(大阪大学微生物病研究所)
  • 駒瀬 勝啓(社団法人北里研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新興・再興感染症の予防に向けて期待されている「粘膜ワクチン」実現化に向けて、その成功の鍵を握っている「粘膜アジュバント」開発に向けての基礎研究を行う。我々が開発・検討してきた無毒化変異型CT(mCT)やその進化型と言えるキメラ型mCT-A/LT-B、そして新しい展開が期待される合成ペプチドアジュバントの開発を進め、実用化に向けた基礎研究を推進する。
研究方法
新興・再興感染症の原因となる病原微生物は体外と体内環境の接点となっている呼吸器、消化器、泌尿生殖器を被っている広大な粘膜面を介して侵入して体内を撹乱する。そこで、本研究計画では生体の第一線防御バリアとして機能している粘膜免疫機構に注目し、それを有効に応用した次世代ワクチンとして期待されている『粘膜ワクチン』の実現化に向けて粘膜免疫増強効果のある「粘膜アジュバント」開発へ向けて先導的な基礎研究を進めている。粘膜免疫と感染症研究の領域で先導的立場にある東京大学、大阪大学、国立国際医療センター研究所、北里研究所、ヒゲタ研究所(プロテインエクスプレス)からなる産学協同研究開発体制を構築して無毒化毒素を基盤とした『粘膜アジュバント』の開発に向けた基礎研究を推進している。これは、近年期待されている産学協同粘膜ワクチン開発の先駆けといえる。
結果と考察
最終年度は、2年間の基礎的解析結果を基盤としてヒトへの応用化に向けての実験を展開した。新規粘膜アジュバントである mCT と、キメラ型 mCTA/LTB には抗原特異的 IgA 誘導効果だけでなく傷害性 T 細胞(CTL)免疫誘導性を確認する事が出来た。この結果はmCTをベースにした粘膜アジュバントにウイルス感染防御に必要なCTL誘導能がある事を示唆している。また、毒素由来 Th1型・Th2型アジュバント効果に B サブユニット部分が関与する可能性が示唆された。これらの結果を踏まえてヒトへの応用化を目指して、まずサルの系を使って最初に mCT の粘膜アジュバント効果を検討する実験を開始した。数匹ではあるが、ヒトに近い霊長類においても粘膜アジュバント効果が期待される興味ある結果を得ている。
結論
初代粘膜アジュバントとして開発されたmCTに関しては、小動物を使ったin vivoとin vitroの系を併用して、その免疫増強効果が確認され、ヒトにより近い霊長類の系を使った検討を開始することが出来た。第二世代キメラ型mCTA/LTBに関しても、そのアジュバント効果が証明され、Bサブユニットを介したTh1型・Th2型誘導能がある事が強く示唆された。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-