野生げっ歯類及びダニ類に由来する感染症の予防、診断及び疫学に関する研究

文献情報

文献番号
200300548A
報告書区分
総括
研究課題名
野生げっ歯類及びダニ類に由来する感染症の予防、診断及び疫学に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
高島 郁夫(北海道大学)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎琢也(長崎大学)
  • 苅和宏明(北海道大学)
  • 有川二郎(北海道大学)
  • 辻正義(酪農学園大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダニ媒介脳炎、ハンタウイルス感染症とバベシア症について、精度の高い診断法を確立し、疫学調査を実施し、国内の汚染地の特定とヒトにおける感染状況の解明に努める。またロシアシベリア、極東地区における疫学調査を実施する。さらにこれらの感染症の発症機序や病原体の病原性を解明し、ワクチン(ダニ媒介脳炎)による予防法を確立する。
研究方法
遺伝子組換え技術を用いてウイルス抗原を発現させ、この抗原を用いたELISAによる血清学的診断法を確立する。国内およびロシアにおいて疫学調査を実施し、マダニ類、野生げっ歯類および患者から病原体を分離する。病原体の遺伝子の塩基配列を決定し、系統樹解析を行う。ダニ媒介脳炎ウイルスの既存のワクチンの効果を評価する。
結果と考察
ダニ媒介脳炎:北海道で分離されたTBEウイルスOshima株の病原性を遺伝子レベルで解析するとともにELISAによる血清診断法を開発した。BHK細胞に適応した変異株Oshima cl-1はマウスにおける皮下接種による神経侵入性毒力は親株より弱かった。ウイルス用粒子(VLPs)を用いたELIS-AIgGテストと中和試験との比較を患者血清95検体について行ったところ敏感度は98.8%、特異性は100%であった。
ハンタウイルス感染症:極東ロシアのハバロフスクの腎症候性出血熱(HFRS) 患者血清について、ELISA法を用いて抗体を測定した。その結果はほとんどすべての陽性血清はハンターン型ウイルスに強く反応していた。患者血餅から増幅したM遺伝子は極東型に96%以上の相同性を示した。これらのことからハバロフスクで流行し人のHFRSの原因となっているのはハンターン型の極東亜型のウイルスであることが判明した。プーマラ型ウイルスを効率よく分離するため、哺乳スナネズミ脳内接種法を確立した。HFRSウイルスのげっ歯類宿主における持続感染の機序を解明するために、新生マウスにおける持続感染モデルを作出した。
バベシア症:日本で人のBabesia microti 様原虫感染の初発例が発見されたのは1999年であった。それ以前に日本での本症の感染例があったのかどうか明らかにするため、1985年に採取された人血清1,335例について抗体調査を実施した。間接蛍光抗体価陽性例は18例検出され、さらにウエスタンブロット法で14例が穂別型、3例が神戸型のBabesia microti 様原虫に反応した。これらのことから日本では1999年以前から本原虫の感染が人の間に発生していたことが判明した。
結論
ダニ媒介脳炎(TBE)について、ウイルス様粒子を用いたIgMELISAによる感度と特異性に優れた人用の血清診断法を確立した。TBEウイルスOshima株の神経侵入性毒力に関与するエンベロープ蛋白の1ヶ所のアミノ酸変異を同定した。 ハンタウイルス感染症では極東ロシアハバロフスクの患者はハンターン型極東亜型ウイルスの感染によることを明らかにした。さらにプーマラ型ウイルスのスナネズミによる効率的な分離方法とハンタウイルスの新生マウスを用いた持続感染モデルを確立した。 バベシア症では、1999年の日本での初発例以前に人の感染例が存在したことを明らかにした。

公開日・更新日

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