先天性心疾患における大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションによる拡大術の短・長期予後に関する多施設共同研究

文献情報

文献番号
200300509A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性心疾患における大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションによる拡大術の短・長期予後に関する多施設共同研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
越後 茂之(国立循環器病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 石澤瞭(国立成育医療センター)
  • 石川司朗(福岡市立こども病院)
  • 中西敏雄(東京女子医科大学)
  • 中村好一(自治医科大学)
  • 小林俊樹(埼玉医科大学)
  • 黒江兼司(兵庫県立こども病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 効果的医療技術の確立推進臨床研究(小児疾患分野)
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性心疾患の中で大きな部分を占める肺動脈狭窄や大動脈縮窄など大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションは、外科手術に比べてはるかに低侵襲であるため施行数が増加しているが、その予後や選択すべき手技など十分解明されていない課題が少なくない。本研究の目的は、大血管狭窄を持つ小児に対してバルーンまたはステントによる血管拡大術を行い、バルーンとステントの選択基準、使用バルーン径やステント径と短・長期予後との関係、合併症などを、前方視的観察研究や無作為割付研究によって綿密に検証し、これらに対するカテーテルインターベンションのエビデンスに基づく治療指針を作成することにある。現在までのところ、国内外から大血管狭窄に対するバルーンやステントの報告はみられるが、両者の比較や手技選択を含めた統合的研究は全くなく、前方視的研究などによる明確なエビデンスに基づく治療指針は提示されていない。これに対して本研究では、1)前方視的研究、2)多施設共同研究、3)バルーンとステントとの統合的比較検討、4)統計専門家による厳密な分析などによって明確なエビデンスに基づく治療指針作成を目指す。
研究方法
この研究を実施するために、全国18の主な小児心疾患治療施設による多施設共同研究ネットワークを形成し、大血管狭窄を持つ登録患者に対してプロトコールに従って前方視的観察研究または無作為介入研究を行い、短・長期的予後を検討し、得られた成績の統計専門家による分析からエビデンスに基づいた大血管に対するカテーテルインターベンションの治療指針を作成する。初年度は、前方視的研究のプロトコール作成の基礎資料とするため、肺動脈狭窄と大動脈狭窄に対して後方視的検討を行った。第2年度は、初年度の後方視的研究結果に基づいて、プロトコールを作成して前方視的研究を開始した。
結果と考察
研究と考察=初年度の後方視的研究の検討から、肺動脈狭窄ならびに大動脈縮窄とも、施行直後の効果はバルーン形成術に比してステント留置術がより大きいとの結果が得られたが、中期予後ではステント内の内膜の増殖による狭窄を認める症例が少なからずみられたことから、いずれの手技を選択するかは大血管に狭窄に対する前方視的研究の中心課題であるとした。目標達成のために本邦における小児心疾患の中核的6医療施設を中心に、2001年における大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションの施行実績に基づき18施設を選択して、多施設共同研究ネットワークを形成した。これらの施設に所属する主任・分担研究者ならびに研究協力者による検討を経て、対象疾患の一部に対しては無作為介入研究を行い、他は前方視的観察研究を実施することにした。本年度は、大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションの本邦での現況をも考慮してプロトコールを完成させた。プロトコールでは、片側性肺動脈狭窄については比較的均一な疾患であると判断して、初回のバルーン血管形成術後6か月までに有効と判断されなかった症例に対して無作為割付を行い、再バルーン血管形成術群とステント留置群に2分して再インターベンションを施行し、心臓カテーテル検査、肺血流シンチ、心エコー検査などで短・長期予後を分析することにした。選択基準は、左右肺動脈分岐部から第一分枝(第一分枝を含む)までの片側の単分枝狭窄で、且つ1)肺動脈狭窄に起因する右室圧の上昇(収縮期右
室/左室or体血圧比≧0.70)、2)狭窄部での収縮期圧較差≧30mmHg、3)造影上、最狭窄部≦参照血管径の50%、4)肺血流シンチで患側/健側比≦0.4の、いずれかの項目を満たす症例とした。その他の肺動脈狭窄は、狭窄部位や数のバラツキが大きいため、バルーン血管形成術群とステント留置の2群に無作為割付する介入研究を実施するには不向きと判断して、前方視的観察研究を行うことにした。大動脈縮窄や大静脈縮窄については、ステント留置を実施していない施設が相当数存在し、やはりバルーン血管形成術群又はステント留置の2群に分けて無作為割付した介入研究を行うのは困難と考え、前方視的観察研究を実施することにした。前方視的観察研究では、各共同研究参加施設の基準にしたがってバルーン血管形成術またはステント留置術を行い、心臓カテーテル検査、肺血流シンチ、心エコー検査などで経過観察して、短・長期予後を検討することとした。これら疾患別の治療・検査のフローチャートとプロトコール、チェックシート、データシートを完成した後、各共同研究ネットワーク参加施設の倫理委員会に研究実施を申請して、それぞれの疾患に対する無作為割付介入研究または前方視的観察研究を開始した。
結論
片側性肺動脈狭窄では、初回のバルーン血管形成術後6か月まで有効と判断されなかった症例に対して無作為割付を行い、再バルーン血管形成術群とステント留置群に2分して再インターベンションを施行し、心臓カテーテル検査、肺血流シンチ、心エコー検査などで短・長期予後を分析する。その他の肺動脈狭窄、大動脈縮窄ならびに大静脈狭窄については、各共同研究参加施設の基準にしたがってバルーン血管形成術またはステント留置術を行い、心臓カテーテル検査、肺血流シンチ、心エコー検査などで経過観察して短・長期予後を検討する。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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