遺伝子治療・再生医療等の探索的臨床研究における審査・実施支援体系の開発と標準化に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200300382A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子治療・再生医療等の探索的臨床研究における審査・実施支援体系の開発と標準化に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
小俣 政男(東京大学)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川義弘(東京大学)
  • 大橋靖雄(東京大学)
  • 山崎力(東京大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究(ヒトゲノム・遺伝子治療・生命倫理分野)
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子治療・再生医療等の探索的臨床研究が動き始めている。しかしながら、これらに対する審査体制や実施支援体制の整備は遅れているのが現状である。したがって、本研究では、探索的臨床研究を審査・支援する上での指針となる体系を実地に即して開発・試行し、また、他機関との多角的な交流を通じてその標準化を図ることを目的とする。平成14年度は、東大病院をモデルに、まず一般的臨床研究(自主臨床試験)に対して指針や手引等を整備し、実施支援体制の整備を行った。平成15年度は、これを他機関に啓蒙して標準化を図るとともに、新たに動き始めた医師主導の治験への審査・実施支援体制の整備に着手する。
研究方法
東大病院で整備した自主臨床試験の指針・手順書・手引き等を院内および院外へ普及させ、標準化を図るため、平成15年度は以下のことを行う。(1)学会、依頼講演等で積極的に紹介する。(2)自主臨床試験の現状と問題点を探り、また、研究者間の啓蒙を図るため、全国の臨床試験関係者を対象としたセミナーを開催する。(3)院内の研究者に対しては、倫理委員会との共催により講習会「倫理セミナー」を定期的に開催し、院内の全臨床研究者に受講を義務付ける。
一方、医師主導の治験への体制整備については、改正GCPや関連通知から想定される実施体制をイメージし、必要な規則の改訂や手順書の整備項目を明らかにする。
結果と考察
東大病院で整備した自主臨床試験の指針、手順書、手引等の普及については、以下のことを行った。(1)「第4回東大病院臨床試験セミナー」(平成16年3月22日開催)を全国の臨床試験関係者約300名を対象に開催し、東大病院での試行を紹介した。(2)「東大病院倫理セミナー」(院内向け講習会)を倫理委員会等と共催で3回開催し、臨床試験部と治験審査委員会の活動を啓蒙した。のべ約750名が受講した。(3)平成15年度は、投稿4報、学会発表9演題、依頼講演6回を通じて発表し、普及を図った。なお、平成14年度から15年度までに東大病院でプロトコール等作成支援した件数は、自主臨床試験39件、倫理的検討を要する未承認薬等の臨床使用23件であった。指針や手引を整備しただけでは、品質管理上十分とは言えず、コンサルテーションにより確実にレベルをあげることが可能となった。
医師主導の治験への支援体制整備を開始した。まず改正GCPおよび関連通知を抜粋整理した。次に必要な規則の改訂や手順書の整備項目を明らかにした。すなわち、手順書等には、プロトコール固有のものと、実施施設固有のものがあること。前者は「自ら治験を実施しようとする者」が準備すべきものであること。そのうち、実施施設に係るものは、施設に提供されるべきものであること。一方、実施施設固有のものは、一般的な医師主導の治験を対象に施設ごとに整備すべきものであることを明らかにした。現在、具体的な作業を開始したところである。また、平成16年3月22日に、「第4回東大病院臨床試験セミナー」を臨床試験部主催により開催した。平成15年度のテーマは「医師主導の治験・臨床試験とネットワーク」と題して、医師主導の治験で中心的に活躍している方に講演をお願いした。厚労省ならびに医師会が推進する「大規模治験ネットワーク」が動き始めた所であり、また、東大病院でも独自に治験が計画されており、時機を得たトピックスであった。全国の臨床試験関係者約300名が参加した。
実施する医師の教育も重要であり、上記のセミナーの開催の他、「臨床研究の進め方」という教科書を編集中である。
臨床試験の高質化には、指針や手順書等の整備だけでは不十分であり、教育体制の整備、審査・実施の支援体制の整備、財政支援の充実などどれも欠くことができないものである。関係機関の理解と支援が期待される。
結論
探索的臨床研究の審査・実施支援体系の開発と標準化を目指した基盤整備の前段階として、一般的な臨床試験の基盤(指針・手引き等の整備とコンサルテーション等の支援体制の構築)を東大病院をモデルに開発し、普及を図った。また、動き始めた医師主導の治験への支援体制の整備に着手した。今後、教育体制の充実や医師主導の治験支援体制の整備を進め、対象とする臨床試験も探索的臨床試験へ拡大する予定である。 

公開日・更新日

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