再生医療を利用した難病の治療 ─ 新しい骨髄移植方法を用いて ─(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200300381A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療を利用した難病の治療 ─ 新しい骨髄移植方法を用いて ─(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
池原 進(関西医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 福原資郎(関西医科大学)
  • 稲葉宗夫(関西医科大学)
  • 安水良知(関西医科大学)
  • 足立靖(関西医科大学)
  • 比舎弘子(関西医科大学)
  • 土岐純子(関西医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究(ヒトゲノム・遺伝子治療・生命倫理分野)
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、難病の根治療法を開発することにある。申請者らが開発した新しい骨髄移植方法は、造血幹細胞のみならず、間葉系幹細胞も効率良く移植が可能であるため、再生治療にも有効である。種々の難病の小動物を用い、いかなる疾患が治療可能かを明らかにし、ヒトへ応用する。
研究方法
遺伝子改変難病モデル動物や自然発症の難病モデルあ動物を用いて、骨髄内骨髄移植(IBM-BMT)による難病の予防と治療を試みる。難病の新しいモデル動物の作出には、SCID/hu by IBM-BMT(ヒト難病患者の造血細胞をSCIDマウスにIBM-BMTをしてモデル動物を作出)を用いる。
ヒトへの応用の前段階としては実験用カニクイザルを用いて新しい方法の安全性と有効性を確認する。
(倫理面への配慮)
実験動物を使用するにあたっては、本学の動物センターの委員会の承認を受け,実施する。サルで、申請者らが新しく発見した方法の妥当性を十分に確認してから、ヒトへ実施する。
当大学には倫理委員会が設置されており、将来、ヒトに実施するには、委員会の承認を得るとともに、患者と家族に対するインフォームド・コンセントを得て実施する。
結果と考察
①種々の年齢のカニクイザルを用いて、加齢に伴う骨髄の変化と最適な骨髄細胞の採取場所を決定(Stem Cells 20:155,2002)。
②網膜の傷害マウスを用いて骨髄の幹細胞から網膜神経細胞への分化誘導に成功(Stem Cells 20: 279.2002)。
③骨粗鬆症のモデルマウスを用いてIBM-BMTで、骨粗鬆症が予防できることを証明 (Stem Cells 20: 542,2002)。
④骨髄移植のconditioning regimenとして放射線が用いられているが、種々の系統のマウスの組合わせで検討した結果、BMTの前日に6Gy,2回(4時間間隔)の分割照射が最適 (BMT30:843,2002)。
⑤ウサギを用いて、IBM-BMTにより、アロの皮膚の移植に成功(Plast.Reconstr.Surg.111:291,2003)。
⑥SCID/hu異種キメラマウスにおいて、ヒト臍帯血をIBM-BMTすることによって、homing receptorsを有しないCD34-細胞(最も未熟な造血幹細胞)でも、高率にヒトの造血系を再建できることを発見(Blood 101:2924,2003)。
⑦ラットを用いて、アロの組合せで下肢の移植(移植の中で最も難しい複合移植)
に成功(Transplantation76:1543,2003)。
⑧脈絡膜の血管の新生は、骨髄細胞から生じる (Stem Cells 22:21,2004)。
⑨ドナーリンパ球輸注(DLI)の際、IBM-BMTを併用することにより、GvH反応を抑制し、放射線量を減量しても生着不全を防ぐことが可能(Stem Cells 22:125,2004)。
以上の公表結果以外に、IBM-BMTを用いることによって肺気腫や悪性腫瘍の治療法の開発にも成功している。さらに種々のモデル動物を用いてIBM-BMTの適用疾患の拡大を目指す。また、ヒトへの応用を視野に入れてサルの実験を精力的に行う。
結論
IBM-BMTと灌流法(長管骨[上腕骨等]に2か所,骨髄針を挿入し、片方から生食で骨髄内を灌流する方法)の組合わせは、GvH反応も生着不全も起らず、最善の移植方法と考えられる。

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研究報告書(紙媒体)

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