文献情報
文献番号
200300368A
報告書区分
総括
研究課題名
びまん性汎細気管支炎等、遺伝素因を有する慢性呼吸器疾患の疾患感受性遺伝子の研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
慶長 直人(国立国際医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
- 工藤翔二(日本医科大学)
- 徳永勝士(東京大学)
- 大橋 順(東京大学)
- 田宮 元(東海大学)
- 中田 光(国立国際医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究(ヒトゲノム・遺伝子治療・生命倫理分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
びまん性汎細気管支炎は、厚生労働省特定疾患で、難治性稀少疾患として知られ、ヒト白血球抗原 (HLA) と疾患と強い関連が報告されている。我々は未知のDPB感受性遺伝子がHLA-A座とB (C) 座との間に位置し、DPBに感受性を示す遺伝子の変異がHLA B54-Cw1-A11を保有する祖先染色体に生じたと考え、そのHLA関連感受性遺伝子座の候補領域を推定し、最終的に疾患感受性遺伝子を同定することを中心に検討を進めた。
研究方法
厚生省班診断基準に基づき、診断された症例100例前後をびまん性汎細気管支炎の疾患群とした。ほかに、慢性気道炎症病態を呈する非定型抗酸菌症については、ゲノムワイド相関解析のため、DNAプールによる2万マイクロサテライトマーカーでの検討を行った。びまん性汎細気管支炎の感受性遺伝子の候補領域として、200 kbのSNP解析を行い、連鎖不平衡の強い80 kbの疾患感受性領域を同定し、その領域内の全塩基配列を決定し、網羅的に遺伝子変異を同定し、タイピングを行った。候補領域内に既知遺伝子は存在せず、新規遺伝子のクローニングには、遺伝子予測プログラムで推測されるエクソン位置に基づき、3'-, 5'-RACE法を施行、RT-PCRにより、組織発現を検討した。新規遺伝子に関しては、エクソン領域を中心に全変異のスクリーニングを行った。
ハプロタイプの推定には、EMアルゴリズムを用いた方法とベイズ推定を応用した方法を用い、SSCP法を利用したハプロタイプの直接決定法との対比を行い、推定法の信頼性と限界について検討した。
連鎖不平衡の検討には、ハプロタイプ頻度をEMアルゴリズムにより推定し、D'値とr2値を解析した。
(倫理面への配慮)
本研究における遺伝子解析に関しては、いずれも三省合同の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に準拠した当センターの遺伝子解析に係わる倫理委員会の承認を受けている。
ハプロタイプの推定には、EMアルゴリズムを用いた方法とベイズ推定を応用した方法を用い、SSCP法を利用したハプロタイプの直接決定法との対比を行い、推定法の信頼性と限界について検討した。
連鎖不平衡の検討には、ハプロタイプ頻度をEMアルゴリズムにより推定し、D'値とr2値を解析した。
(倫理面への配慮)
本研究における遺伝子解析に関しては、いずれも三省合同の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に準拠した当センターの遺伝子解析に係わる倫理委員会の承認を受けている。
結果と考察
1)候補領域におけるSNPsの連鎖不平衡構造と遺伝子変異の同定
疾患と関連する80 kbの領域は強い連鎖不平衡の島状構造を呈していたため、20個体について、全領域のSNPs検索を行い、さらに200以上の遺伝子変異を同定した。これらは、80 kbの領域をさらにいくつかの主要ハプロタイプに分ける変異群と見なされた。
2)新規遺伝子に見られる遺伝子変異の同定
新規遺伝子のコード領域に、新たに疾患と強く関連する遺伝子変異を同定した。それらの変異は、主要な疾患感受性ハプロタイプが複数あることをよく説明し、韓国人患者でも共有されていること、欧米人にはまれであるという条件を満たした。
3)既知のムチン遺伝子のプロモーターハプロタイプとびまん性汎細気管支炎との関連解析
SSCPを利用した方法により、プロモーター領域にある遺伝子変異からなるハプロタイプを直接決定したが、その特定のハプロタイプとびまん性汎細気管支炎との関連が認められた。in vitroでそのプロモーター活性は、変異の有無により、増減が認められた。
4) 非定型抗酸菌症の疾患感受性遺伝子同定のための多施設研究の進行
マイクロサテライトマーカーを用いたゲノムワイド相関解析を行うための、多施設共同研究組織を立ち上げ、すでに200例以上の症例サンプルを蓄積し、2万マイクロサテライトマーカーによる第一次スクリーニングを実施した。
疾患と関連する80 kbの領域は強い連鎖不平衡の島状構造を呈していたため、20個体について、全領域のSNPs検索を行い、さらに200以上の遺伝子変異を同定した。これらは、80 kbの領域をさらにいくつかの主要ハプロタイプに分ける変異群と見なされた。
2)新規遺伝子に見られる遺伝子変異の同定
新規遺伝子のコード領域に、新たに疾患と強く関連する遺伝子変異を同定した。それらの変異は、主要な疾患感受性ハプロタイプが複数あることをよく説明し、韓国人患者でも共有されていること、欧米人にはまれであるという条件を満たした。
3)既知のムチン遺伝子のプロモーターハプロタイプとびまん性汎細気管支炎との関連解析
SSCPを利用した方法により、プロモーター領域にある遺伝子変異からなるハプロタイプを直接決定したが、その特定のハプロタイプとびまん性汎細気管支炎との関連が認められた。in vitroでそのプロモーター活性は、変異の有無により、増減が認められた。
4) 非定型抗酸菌症の疾患感受性遺伝子同定のための多施設研究の進行
マイクロサテライトマーカーを用いたゲノムワイド相関解析を行うための、多施設共同研究組織を立ち上げ、すでに200例以上の症例サンプルを蓄積し、2万マイクロサテライトマーカーによる第一次スクリーニングを実施した。
結論
80 kbの候補領域内に新規膜型ムチン様遺伝子を同定し、詳細な変異解析を行った結果、従来のいずれの遺伝マーカーよりも疾患との関連性が強い変異が見いだされた。それらの変異は、主要な疾患感受性ハプロタイプが複数あることをよく説明し、韓国人患者でも共有されていること、欧米人にはまれであるという条件を満たし、分子遺伝学的に有力な疾患感受性遺伝子と考えられる。また、ムチン遺伝子群のプロモーター多型を解析した結果、機能的にも、MUC5B遺伝子の転写活性を低下させるハプロタイプが同定された。このハプロタイプは、気道過分泌を特徴とするびまん性汎細気管支炎患者には有意に頻度が少なく、疾患抵抗性ハプロタイプとして病態を修飾するものと推測された。非定型抗酸菌症については、多施設共同研究により、200例の血液試料を集積し、2万 マイクロサテライトマーカーによる全ゲノム関連分析の1次スクリーニングを行った。現在、統計解析を行い、有意差のあるマーカーを解析中である。本研究では、このようにこれまで取り残されていた、呼吸器疾患の臨床に直結した感受性遺伝子検索というテーマを掲げ、呼吸器病学の研究者と第一線のゲノム研究者が共同戦線をひき、各疾患についてデータを蓄積し、最終年度、ついに分子遺伝学に有意な疾患感受性遺伝子を同定することができた。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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