高齢者の社会参加に関連する要因の解明と支援システム構築に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200300220A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の社会参加に関連する要因の解明と支援システム構築に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
長田 久雄(桜美林大学大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 芳賀博(東北文化学園大学)
  • 高田和子(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
  • 西下彰俊(金城学院大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
8,517,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、高齢者の社会参加に関連する要因を検討し、社会参加が社会貢献および参加者の心身の健康維持増進と生活の質向上につながるような条件整備の方途を明らかにすることである。研究は3年度計画であり、本年度は2年度目に当たるが、地域住民に対する追跡調査を行い、社会的活動に関連する要因の検討を行うことを主な目的とした。
研究方法
平成14年度の調査として、平成14年12月に、足立区のシルバー人材センターおよび老人クラブ代表を介して、60歳以上の3,357人に調査票を配布し、1,924人から回答が得られた。回収率は52.3%であった。今年度は、昨年度(平成14年度)回答の得られた足立区のシルバー人材センターおよび老人クラブ会員1,924人の内、追跡調査協力の承諾が得られた1,566人を対象とした。昨年度の調査の1年後に当たる平成16年1月13日に、調査票を対象宅へ直接送付し、2月10日までに1,342人から回答が得られた。回収率は85.7%であった。さらに、今年度郵送調査で回答の得られた1,342人の対象のうち、549人に対し、面接による追調査への協力を電話にて要請し、119人の個別面接の承諾が得られた(承諾率21.7%)。そのうち、46人の面接を行った。昨年度の調査項目は、年齢、性別、同居家族、生活満足度、健康度自己評価、日常生活活動能力、生活の質評価、収入のある仕事の有無、社会的活動の種類と程度、重要だと思う社会的活動、社会的活動への参加のきっかけ、将来の生活に対する考え、社会的活動に参加する意義、社会的活動への参加を妨害している個人的・環境的・制度的要因、身体の具合、通院、日常生活習慣、孤独感、幸福感であり、今年度(平成15年度)の調査項目は、上記に、日常生活の悩みの有無、前回の調査から今までの間の生活上の大きな変化の経験の項目を加えた。
結果と考察
平成14年度と平成15年度の調査データの解析を行った結果、高齢者の社会的活動には、訪問、地域、趣味の3領域が基本的因子として抽出された。各因子に影響する可能性のある要因として、性、社会参加・社会活動の意義、家族、友人、健康・身体状態、経済状態、広報・メディア・自治体からの呼びかけ、個人の意志、自分にあった活動(活動の種類)、費用、時間的余裕、ライフスタイルなどが見出された。一方、分担研究者の芳賀は、社会的活動には、親戚・友人との交流、町内会・自治会の活動、学習活動、OB会・同窓会などの活動、宗教的・政治的な活動の5因子を抽出している。これらの因子のうち、宗教的・政治的な活動以外の因子は、健康習慣実施数、健康度自己評価、生活満足度と関連することを示されている。また、年齢と世帯構成が、親戚・友人との交流以外の因子と関連することも示されている。分担研究者の高田は、70歳以上の男性では社会的活動への参加がQuality of life(QOL)に影響することを見出している。さらに西下は、生きがいの有無、ボランティア活動の有無、近所づきあいの程度、友人訪問の程度、趣味の有無が幸福感に影響することを見出している。高齢者の社会的活動への参加は、健康、生活満足感、QOL、幸福感などの心身の要因に関連することが明らかとなった。また、社会的活動への参加には、性、年齢、世帯構成をはじめとする社会人口学的要因、身体的要因、心理的要因、社会的要因が複雑に影響していることが示された。
以上の結果より、高齢者の社会的活動への参加は心身の健康や幸福感、QOLを高めるために有用であり、社会参加を促進することは、地域保健の観点からも重要であることが示唆された。地域において社会的活動への参加を促進するために集中すべきことは、介入可能な要因かつ有効な方法で対応することが不可欠であり、1.社会的活動のプログラムやメニューを作成する前に、性と年齢を考慮しつつ当該地域住民の要望を正確に把握すること、2.住民の要望に沿った可能な限り多様な活動に、低費用で参加できるプログラム・メニューを提供しその運営の支援をすること、3.友人や仲間作りを支援するシステムを構築すること、4.様々な媒体を通した情報の提供を含め、活動へのアクセスを整備すること、5.地域住民が活動自体と活動への参加の意義を見出せるように、住民主体の活動が可能となる柔軟かつ多様な支援システムを構築すること、が有効であると考えられる。
結論
高齢者の社会的活動への参加は心身の健康や幸福感、QOLを高めるために有用である。地域において高齢者の社会的活動への参加を促進するためには、社会的活動のプログラムやメニュー作成前の地域住民の要望把握.住民の要望に沿った多様な活動の整備と低費用での参加の支援、友人や仲間作りを支援するシステムの構築、活動へのアクセスの整備.住民主体の活動が可能となる支援システムの構築であると考えられる。

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