寒冷・豪雪地域におけるデイサービスの効果に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200300214A
報告書区分
総括
研究課題名
寒冷・豪雪地域におけるデイサービスの効果に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
西脇 友子(新潟大学)
研究分担者(所属機関)
  • 中村和利(新潟大学)
  • 上野公子(新潟大学)
  • 藤野邦夫(新潟大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,013,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今回の調査目的は、前回の冬期間の調査結果を踏まえ、気象条件がまったく異なる夏期間の要介護在宅高齢者の健康特性を明らかにすることである。
研究方法
(1)調査対象者 平成15年1月-3月の冬期間に実施した初回調査の参加者205名の内、今回の夏期調査に参加した人は170名であった。今回の調査に参加しなかった人は、死亡した人10名、入院中・施設入所した人20名、辞退した人3名、他2名、の35名であった。(2)調査場所・調査期間 通所介護利用者129名は、通所介護利用施設で調査を行い、通所介護非利用者41名は、訪問により調査を行った。調査は、平成15年8月と9月に行われた。(3)調査項目と調査方法 調査項目は、前回の調査で用いたと基本属性、身体機能・精神機能・栄養状態の中から冬期間と夏期間で異なると思われる項目を精選した。入院歴・外出頻度等の基本属性とADL・うつ状態は、質問紙(GDS-15、日本版EuroQol)を用い面接調査で把握し、介護度は在宅介護支援専門員から聴取した。体重と左右の握力を測定し、血液検査により血清アルブミン濃度とヘモグロビン濃度を把握した。
結果と考察
(1)対象者の基本属性と身体機能・栄養状態170名のうち85歳以上が88名(51.8%)で平均年齢は83.3歳(±8)であった。男性は50名(29.4%)平均年齢79.7歳(±8.7)、女性は120名(70.6%) 84.4歳(±7.5)で女性のほうが年齢は高かった(p<0.000)。通所介護利用者129名の平均年齢は84.0(±8.2)、非利用者41名は81.1歳(±7.7)で通所介護利用者のほうがわずかに年齢は高かった。介護度別の割合は、要介護1が最も高く、要支援と要介護1で44.1%であった。通所介護非利用者ではこの割合が80.2%であった。前回の調査より今回の調査で介護度は有意に悪化し(p=0.02)、この半年間に介護度が変化した人は、35名で改善が10名、悪化が23名、未更新が2名であった。前回の冬期間調査と今回の夏期間調査を比較すると、体重は有意な減少はなかったが、握力が14.7kgから13.9kgと有意に減少していた。外出頻度は、冬期間では約73%の人がほとんど外出しないと答えていたが、その割合は夏期間の調査で50%と有意に減少した(p<0.000)。移動(歩き回る)に問題がないと答えた人の割合と管理(洗面や着替え)に問題がないと答えた人の割合、活動(家事や余暇)に問題ないと答えた人の割合も有意に減少した(p<0.000)。血色素、ヘマトクリット、総蛋白、血清アルブミン値は共に有意に減少した。介護度別に調査項目毎の6ヶ月間の変化をみると、体重と握力は介護度に関係なく、外出頻度は介護度が低いほど高く(p=0.000)、総蛋白と、血清アルブミンは介護度が高いほど低かった(p=0.01、p=0.04)。介護度の変化別に比較すると、前回と今回の調査ともに介護度の変化に有意な関連があった項目は握力、血清アルブミンで、介護度の上昇と共に各々の値は低下した。女性ではより高齢な人と要介護4、男性では要介護3から、冬期間と夏期間の外出頻度、移動、管理、活動の変化がほとんどみられなかった。介護度の低い人では、夏期間でADL関連項目に問題ないと答えた人の割合が増加していた。介護度の低い人は、ADLを改善させうる能力を持っている可能性を示唆する。握力と血清アルブミン濃度は、前回の調査で低い人がより低下する傾向にあった。悪化しやすい特徴を持つ人達にどのように関わればよいのか、今後の課題である。(2)精神機能の特徴について 不安の有無、主観的健康度、うつ傾向は冬期間と夏期間の有意な差がなかった。女性では主観的健康度が夏期間で高く、不安がある人が増え、男性では不安なし者が夏期間で増え、うつ傾向が低下する傾向が見られたがいずれも有意差は
なかった。介護度別に不安の有無、主観的健康度の変化をみると、要支援と要介護1で不安なし者の割合と主観的健康度が高くなったが有意ではなかった。うつ傾向では、介護度が高いほどうつ傾向が有意(p=0.01)に低下したが、男女とも要介護4における低下が著しかった。GDS-15の値が冬期間と夏期間で継続して4点以下の人70名と5点以上の人35名を比較すると、介護度や性、年齢、体重・握力に差はなかったが、外出頻度、移動・活動・不安問題なしの割合、主観的健康度、総蛋白、血清アルブミン値がうつ傾向のある5点以上の人で有意に低かった。寒冷・豪雪は主観的健康度やうつ傾向、不安に影響を与えないことがわかった。うつ傾向(GDS-15の値)は、季節というより前回の調査と同じ傾向を示した人が72.4%と多かったことから、その人の考え方や生き方を反映しており、うつ傾向のある人は、介護度が重度化する危険を持っていることが明らかになった。
結論
①冬期間の外出は72.7%がほとんど外出していなかった。しかし、夏期間ではその割合が50%と有意に減少した。 移動・管理・活動に問題ないと答えた人の割合も夏期間で有意に少なかった。介護度の低い群でこの変化が顕著だったことから、要支援や要介護1、2の人への関わりによって、介護の重度化予防の可能性が伺えた。②前回と今回の調査の6ヶ月間に握力と血清アルブミン値は有意に低下した。握力と血清アルブミン濃度は介護度の上昇に伴って低下し、前回の調査で低い人がより低下する傾向にあった。介護度が悪化しやすい傾向の人は、より脆弱な人であり、どのような関わりが介護の重度化予防に役立つかは今後の課題である。③主観的健康度・うつ傾向・不安は冬期間と夏期間で変化がなかった。うつ傾向は、季節というより前回の調査と同じ傾向を示した人が72.4%と多かった。継続してうつ傾向がない人と、ある人を比較した結果、介護度や年齢、男女差はなかったが、うつ傾向ありの人では、外出が少なく、移動や活動に問題があり、栄養状態が低く、主観的健康度は低く、不安がある人も多かった。うつ傾向のある人は、介護度が重度化する危険を持っていることが明らかになった。

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