骨粗鬆症におけるテーラーメード医療の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200300203A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症におけるテーラーメード医療の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
折茂 肇(健康科学大学)
研究分担者(所属機関)
  • 白木正孝(成人病診療研究所)
  • 上西一弘(女子栄養大学)
  • 伊東昌子(長崎大学医学部)
  • 細井孝之(東京都老人医療センター)
  • 浦野友彦(東京大学大学院加齢医学)
  • 太田博明(東京女子医科大学)
  • 池田恭治(国立長寿医療研究センター)
  • 大橋靖雄(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
30,420,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨粗鬆症は骨量の病的減少が骨微細構造を破綻させ、易骨折性をもたらす疾患である。骨粗鬆症における治療効果には個人レベルでのばらつきが大きく、より効率のよい治療を進めるためにはテーラーメード医療の立場から、これまでの治療法を再評価し、再構築することが必要である。本研究では骨粗鬆症の予防と治療について個人レベルでの最適化をおこない、より効率のよい新しい診療体系を確立することを目的とする。
研究方法
結果と考察
I. 全体研究―骨粗鬆症のテーラーメイド医療確立を目的とするデータベースの構築:骨粗鬆症治療の治療
開始するにあたり、個人ごとに、無治療で経過を見た場合の予後や、各種の治療を行なった際の効果について前もって予測し、患者ならびに主治医の臨床的判断の糧とすることが把握されることが望まれる。本年度の本研究班の全体研究として、「日本骨粗鬆症データベース」を構築した。本症の自然経過や薬物治療が行なわれた場合の経過を集大成し、骨粗鬆症におけるテーラーメイド医療を実現するためのデータベースを構築する。
II.分担研究
① 骨粗鬆症における骨密度変化の個人差に関する研究(白木):今年度においては主として変性変形が骨密度推移に与える影響を検討した。さらに骨粗鬆症治療が変性変形の程度そのものに与える影響についても検討した。骨密度と変形性指標との関連を横断的なならび縦断的に検討した。②in vivo 骨梁構造評価法の検討(伊東):骨強度には骨密度の他、骨梁構造をはじめとする骨質が関与していることが知られている。骨梁構造は、in vivoには測定器の解像度の限界があり、確立された方法はない。今年度はmulti-detector row CTを用いて、脊椎(第3腰椎)および踵骨の高解像度三次元画像を得て、骨密度との関連を中心にデータ解析を行ない、臨床的に有用なパラメーターを抽出した。③若年女性における各種栄養摂取量・身体活動量・リスクファクターと骨密度に関する研究(太田):高齢女性を中心に増加している骨粗鬆症を予防するためには、若年層での高骨密度獲得が効果的であると考えられる。本年度の研究では、若年女性における各種栄養素の摂取量および身体活動量と骨密度との関連を横断的に解析し、高骨密度獲得の方法論を明確化した。④若年成人女性の骨量の変動とカルシウム吸収の関係(上西):日常のカルシウム摂取量が多いにもかかわらず、骨量の低い者も存在する。本研究では、最大骨量獲得年齢である19~21歳の女子大学生を対象に1年間の骨量の変化と、それにかかわる要因を検討した。本研究ではカルシウム吸収を安定同位体44Caを用いてカルシウム吸収を推定した。⑤骨芽細胞における新たな骨形成制御因子の同定(浦野):骨形成を主眼においた骨粗鬆症の病態解明ひいては骨形成に主眼をおいた治療法を開発するために、本年度はWnt-?β-カテニンシグナル伝達因子の遺伝子多型が骨量にあたえる影響ならびにWnt-β-カテニンシグナル伝達因子の骨芽細胞や破骨細胞における発現パターンに関して検討を行った。⑥骨粗鬆症の生化学マーカーの開発に関する研究(池田):骨吸収の状態を効率よくスクリーニングするための生化学的マーカーの開発が望まれている。破骨細胞の形成因子であることが判明したγ-GTPの尿中への排泄動態を解析し、骨吸収の指標になりうるか否かについて、動物実験および臨床研究の両面から検討した。⑦骨粗鬆症における遺伝子マーカーの開発(細井):骨粗鬆症は多因子遺伝病のひとつとして考えられているが、未だ、蛋白質としての機能の多様性に結びつく遺伝子多型性と骨量との関連に関する情報が乏しい。本年度はビタミンK依存性γグルタミルカルボキシラーゼ(GGCX)のエクソン8にあるアミノ酸残基の置換をともなう遺伝子多型性と骨量との関連を検討した。⑧統計手法の基礎的検討:骨折あるいは薬物の治療効果に関する個人間差は非常に大きく、既知の臨床因子のみで予後を正確に予測することには限界がある。本年度は、遺伝子発現データを用いた予後予測モデルを、クロス・バリデーション法により構築する際の適切な説明変数の選択・縮約方法を検討した。⑨第4回大腿骨頸部骨折全国頻度調査(坂田・折茂):骨粗鬆症の重大な合併症である大腿骨頸部骨折の全国調査を、1987年、1992年、1997年に引き続き、2002年について行った。その結果、調査対象となった5,919施設のうち3,723施設より回答があり、回収率は62.9%であった。全国発症数は男では25,300人、女では92,600人と推計され、合計117900人であった。男女とも増加しており、増加傾向に歯止めが掛かっていなかった。
結論

公開日・更新日

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