文献情報
文献番号
200300137A
報告書区分
総括
研究課題名
システムの質の評価と途上国の保健医療システム強化支援のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
上原 鳴夫(東北大学大学院医学系研究科教授)
研究分担者(所属機関)
- 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院教授)
- マリアン・エバンゲリスタ(フィリピン医療保険公社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、ニーズの地域特性の把握と優先度判断に基づく目的意識的な地域保健医療システム強化をめざして、質の管理・改善にかかる能力育成を助ける方法論仮説(参加型実証的質改善活動=EPQI)の有効性を、フィリピンの地域保健医療システムにおいて実地に検証するとともに、これを通じて途上国において地域保健医療システムの質を評価する個別的・実用的な評価指標を策定することを目的とする。
研究方法
1.質管理手法の実証的研究; フィリピン医療保険公社の協力のもと、9月と1月にマニラで各2日間のワークショップを開催し、ベンゲット州保健局、州・県立病院、保健省地方医務局からなる質管理改善チームに対して質管理手法について研修を行った。 その上で、ベンゲット州の保健医療システムが抱える改善課題として「保健管理情報システム(FHSIS)のデータの質」と「病院サービスの質」を抽出した。 問題分析から改善までを7つのステップに分け、これらを段階的に進めるために、まず「質」と「質的問題」の定義、問題の現状把握の方法、プロセス解析の方法について技術的なトレーニングを行い、2つの課題について現状把握調査を行った。
① FHSISは書式と報告プロセスが複雑かつ多岐にわたっており、州のチームでは全容を的確に説明できる者がいなかった。このため、まずFHSISの仕組みと「あるべき姿」に関して資料調査と担当部署・関係者(中央保健省疫学統計部、自治体医療支援担当部局、地方医務局)への聞き取り調査を実施し、以下の手順により、システムを構成するプロセスとその流れを把握・分析した; 1)Modified-FHSISに関連するストラクチュアの把握、2)報告の種類の把握、3)各種書式の把握、4)各書式間の関係の把握、5)指標の把握、6)各指標間、各指標とデータの関係の把握。
上記手順で分析した結果に基づいて4つのプロセス・フロー図を作成した。また、データの定義やプロセスの業務に関して、マニュアルの規定を迅速に参照できるようなツールを考案・作成した。
② FHSIS改善チームが召集してベンゲット州のRHUと一部バランガイヘルスステーションのスタッフ約30名によるワークショップを開催し、FHSISの現状の問題点をリストアップし問題列挙型特性要因図を作成した。これを基にして、現状確認調査を実施した。
③ 病院サービスの例としてベンゲット州立病院の患者待ち時間短縮をテーマに取り上げ、病院チームによる現状把握のための予備調査を行った。
2.システム強化目標設定に向けた医療保障システムの現状分析; フィリピンの公的医療保険制度の仕組み、とくに会員登録、保険料徴収、支払請求、給付、について、資料調査と聞き取り調査(保健省と医療保険公社の担当部局)を行った。また、公的医療保険制度の仕組みを規定した医療保険新法を翻訳し分析を行なった。
3.死亡登録システムの現状調査:FHSISのデータ・フローの実態把握のためベンゲット州トリニダード市のLCR(Local Civil Registration Office)における死亡登録システムの仕組みについて調査を行った。
① FHSISは書式と報告プロセスが複雑かつ多岐にわたっており、州のチームでは全容を的確に説明できる者がいなかった。このため、まずFHSISの仕組みと「あるべき姿」に関して資料調査と担当部署・関係者(中央保健省疫学統計部、自治体医療支援担当部局、地方医務局)への聞き取り調査を実施し、以下の手順により、システムを構成するプロセスとその流れを把握・分析した; 1)Modified-FHSISに関連するストラクチュアの把握、2)報告の種類の把握、3)各種書式の把握、4)各書式間の関係の把握、5)指標の把握、6)各指標間、各指標とデータの関係の把握。
上記手順で分析した結果に基づいて4つのプロセス・フロー図を作成した。また、データの定義やプロセスの業務に関して、マニュアルの規定を迅速に参照できるようなツールを考案・作成した。
② FHSIS改善チームが召集してベンゲット州のRHUと一部バランガイヘルスステーションのスタッフ約30名によるワークショップを開催し、FHSISの現状の問題点をリストアップし問題列挙型特性要因図を作成した。これを基にして、現状確認調査を実施した。
③ 病院サービスの例としてベンゲット州立病院の患者待ち時間短縮をテーマに取り上げ、病院チームによる現状把握のための予備調査を行った。
2.システム強化目標設定に向けた医療保障システムの現状分析; フィリピンの公的医療保険制度の仕組み、とくに会員登録、保険料徴収、支払請求、給付、について、資料調査と聞き取り調査(保健省と医療保険公社の担当部局)を行った。また、公的医療保険制度の仕組みを規定した医療保険新法を翻訳し分析を行なった。
3.死亡登録システムの現状調査:FHSISのデータ・フローの実態把握のためベンゲット州トリニダード市のLCR(Local Civil Registration Office)における死亡登録システムの仕組みについて調査を行った。
結果と考察
1.FHSISの構造分析; FHSISは1989年から適用され、地方分権化に伴い1996年に改訂された統合的保健管理情報システムで、次のような目的を掲げている;① 地方レベルでは地方自治体政府(LGU)が必要とするデータ、国レベルでは保健省(DOH)が必要とするデータを与えてくれる最小限の指標セットを地方自治体政府(LGU)で作り出すこと、② 市レベルから国レベルまでの保健データの流れを単純化すること(より単純な書式、データの量を減らす、報告頼度を減らす)。扱う指標データと書式は目的ごとに、①サービス&プログラムのパフォーマンスに関するもの(HIS Quarterly Report)、②デモグラフィー(Vital Statistics Report)、③感染症の監視(Notifiable Diseases Report)、④死因の把握(Mortality Report)の4つに区分されており、記録用、集計用、報告用の書式(フォーム)を与えている。収集すべきデータの定義とデータの流れについて関係者でも正確に答えられない事項が少なくなかったため、データの定義、システムを構成するプロセス、データの流れを明らかにした上でFHSISのプロセス・フロー図を完成した。〔資料参照〕
2.ベンゲット州立病院の患者待ち時間に関する予備調査; 小児科外来では、受付で平均14分、看護師問診待ち24分、医師の診察待ち56分で、待ち時間が長い又はとても長いと感じている受診者(保護者)が6割を占めた。
3.公的医療保険制度の現状分析; 資料調査・聞き取り調査で得た情報を分析した結果、1)保健システム全体の中での医療保険システムの役割、2)メンバー登録の方法、3)各プログラムの保険料と徴収の方法、4)サービス提供、5)支払請求とその処理、6)保険金の給付方法、7)今後の計画、の7つの事項について所見を得た。
4.「フィリピン共和国における医療保険の実施及び健康保険組合設立に関する法律」(共和国法No.7875、1995年制定)の日本語訳資料を作成した。〔資料参照〕
2.ベンゲット州立病院の患者待ち時間に関する予備調査; 小児科外来では、受付で平均14分、看護師問診待ち24分、医師の診察待ち56分で、待ち時間が長い又はとても長いと感じている受診者(保護者)が6割を占めた。
3.公的医療保険制度の現状分析; 資料調査・聞き取り調査で得た情報を分析した結果、1)保健システム全体の中での医療保険システムの役割、2)メンバー登録の方法、3)各プログラムの保険料と徴収の方法、4)サービス提供、5)支払請求とその処理、6)保険金の給付方法、7)今後の計画、の7つの事項について所見を得た。
4.「フィリピン共和国における医療保険の実施及び健康保険組合設立に関する法律」(共和国法No.7875、1995年制定)の日本語訳資料を作成した。〔資料参照〕
結論
地域保健医療システムの質目標の設定と実現のための取り組みには、実効性のある目標と情報システムの構築が不可欠である。 保健管理情報システム(FHSIS)、公的医療保険制度ともに、設計の意図と目標は優れているが、運用の実態との間に乖離が認められるので、今後は事実データによって乖離の実際とその背景要因を明らかにし、それが設計自身の不適切さによるものか、運用上の問題であるのかを見極める必要がある。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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