医療資材(医薬品・医療材料)におけるトレーサビリティに関する研究

文献情報

文献番号
200300105A
報告書区分
総括
研究課題名
医療資材(医薬品・医療材料)におけるトレーサビリティに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
土屋 文人(東京医科歯科大学歯学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 秋山昌範(国立国際医療センター)
  • 武熊良治(医療情報システム開発センター)
  • 若林俊夫(日本医療機器関係団体協議会)
  • 今荘秀徳(日本製薬団体連合会)
  • 山本和久(日本製薬団体連合会)
  • 宮地秀之(日本医療機器販売業協会)
  • 森久保光男(日本医薬品卸業連合会)
  • 井上章治(日本薬剤師会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療事故あるいはヒヤリハット事例の発生が多数報告されている。医療安全を確保するためには、医療安全対策検討会議の報告が指摘しているように、従来行われてきた「物の安全」のみならず、「使用の安全」の観点からの対策を行うことが急務であるといえる。「使用の安全」を確保するための個別の問題については、医薬食品局において主に検討が行われている。しかしながら、それらの個別の問題が解決したとしても、現実としては臨床の場において医薬品等の取り違え等は発生する余地は残されていることになる。医薬品の与薬患者違い等についてのヒヤリハットも少なくないことから「物」と「患者」との確認作業が目視のみでなく、ITを利用して行うことの必要性は極めて高いといえる。
一方、改正薬事法の施行に伴い、特定生物由来製剤については原材料および製造工程の管理から患者に使用されるまでの一貫した安全対策を行うため、製造業者、医療機関は遡及調査のための記録の保存が義務化されることになった。
「物」のトレーサビリティを高めるための方策については、様々な分野においてITを利用したものが実現あるいは検討されているが、医療の世界においては、トータル的な観点からの検討は十分に行われていないのが現状である。
そこで、本研究では医療資材(医薬品・医療資材)を対象に、バーコードや電子タグを利用する場合に、費用面、適合性等について医薬品、メーカー、流通業者、医療施設の観点から調査を行うと共に、実施するために克服すべき課題を明らかにする。
研究方法
研究はまず医薬品の製造、流通、及び医療材料・医療機器の流通関係者及び医療機関及び薬局関係者により、共通認識を持つためにトレーサビリティを確保するための基本的な問題点について具体例を挙げながら検討を行った。その結果、医薬品・医療材料とも基本的なデータベースは存在するが、そのメンテナンス等に大きな課題があることが明確になった。そこで対象を医薬品に絞り、バーコードや電子タグを利用してトレーサビリティを高めるために克服すべき課題について検討を行った。
また、これらの課題の具体的解決のためには実証実験が不可欠なことから、次年度の早期に実証実験が可能となるように、実験プロトコールを作成するとともに、必要な器材について準備を行った。
なお、これらを検討する際には厚生労働省の関係部局の方々にも同席を願い、課題の克服に向けて共通認識を持つように心がけた。
結果と考察
本研究は改正薬事法で特定生物由来製剤については原材料および製造工程の管理から患者に使用されるまでの一貫した安全対策を行うために製造業者、医療機関において遡及調査のための記録の保存が義務化されることに伴う「物」のトレーサビリティを高めるための方策を明らかにすること、及び臨床の場において医療の安全を確保するために、「物」と「患者」との確認作業を目視のみならず、ITを利用して行う場合における諸問題を明らかにすることを目的に実施された。具体的には医療資材(医薬品・医療材料)にバーコードや電子タグを利用してトレーサビリティを確保する場合に、メーカー、流通業者、医療施設等の観点から実施するためにはどのような克服すべき課題があるのかを明らかにすることが本研究の目的である。
本研究の結果、バーコードや電子タグを臨床において利用するためには、そのコンテンツ内容の決定及びコンテンツの要素であるコードやロット番号、あるいは使用期限等の情報の標準化が未だ十分に整備されていないことがこれらの実施にとって大きな課題であることが示された。また、製造から臨床までの一貫した情報の流れを確保するためには、同一のコードを利用して行うことが通例であるが、世界的に標準とされている体系に合わせようとすると、我が国においてはさまざまな不都合が生じることが明らかになった。さらに、臨床において「物」と「患者」との間でITを利用して確実に確認作業を行うためには、情報システム側においても改善が必要となることが示された。
これらの課題をどのように克服するかについて具体的に検討するためには、実際に現物を使用して製造から臨床の場での流れの中で各段階においてさまざまな角度から検証が必要であることから、製造・流通段階におけるトレーサビリティ確保のための実証実験の計画書を作成するとともに、次年度以降具体的に実験にとりかかれるための環境整備を行うため、実際にダミーのアンプル及びバーコード印刷用のラベルを用意するとともに、必要最小限な読み取り装置を準備した。これにより、次年度の早期に実証実験が可能となり、本研究において示された課題の克服についての具体的なデータが得られることとなった。
結論
医薬品のコードの標準化およびメンテナンス体制の確立は急務であり、詳細な検討を行う必要がある。医療安全およびトレーサビリティ確保の手段としてのバーコード・電子タグについては、本研究で準備された資材を利用して早期に実証実験を行い、そのデータを利用して、本研究で示された克服すべき課題について早期に解決を図ることが必要である。

公開日・更新日

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更新日
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