診療用放射線の防護規制に関する緊急特別研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200300097A
報告書区分
総括
研究課題名
診療用放射線の防護規制に関する緊急特別研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
山口 一郎(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 草間経二(日本アイソトープ協会)
  • 細野 眞(近畿大学医学部)
  • 池渕 秀治(日本アイソトープ協会)
  • 渋谷 均(東京医科歯科大学)
  • 小林 一三(国立埼玉病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
-
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際原子力機関(IAEA)が放射線安全基準の一環として提示した国際基本安全基準の免除レベル(以下、「国際免除レベル」という。)をわが国の医療法に取り入れる場合の医療機関への影響を具体的に明らかにし、必要な措置を講じるための方策を明らかにする。
研究方法
1)医療放射線防護の国際的動向の把握に関する研究、2)医療法施行規則への免除レベル取り入れによる規制対象の変更に伴う医療機関への影響の評価に関する研究、3) 国際免除レベルの医療法への取り入れについての基本的な方向の研究、4) 国際免除レベルの医療法への取り入れに付随する事項の研究、5) 医療機関における放射性医薬品管理の規制のあり方および医療放射線管理の法令適用に関する研究について、医療放射線防護に関するIAEAの資料など関係情報収集・分析およびわが国の統計情報・規制の現状の把握と解析を行うともに、従事者や公衆の放射線被ばく線量について放射線計測や作業時間調査を基にしたシミュレーション計算により検討した。
結果と考察
1)医療被ばくの制御に関して、国は、医療放射線防護に関する計画を定め、国、医療機関、関係する事業者など各機関の役割と責任を明らかにする必要がある。また、放射線源の安全とセキュリティに関して、行政機関により医療機関や医療機関で使用している施設設備については十分に把握されているものの、医療機関におけるセキュリティ対策が必ずしも十分ではない現状から、IAEAの線源の分類においてカテゴリー1とされた遠隔治療装置などについては文部科学省での対応を見ながら対策を検討する必要がある。
2)国際免除レベルに示されていない核種のうち医療で用いられる核種はNRPB R-306にすべて掲載されているので、これを医療法に取り入れることが適切である。このうちインビボ製品はすべてが免除濃度、免除量を超えており、従来どおり規制対象であることには変わらない。一方、インビトロ製品は、多くの製品は免除量以下であり、少量使用であれば、その利用は免除の対象となる。また、現行規制において定義量以下の密封線源が、核医学施設のように放射線障害防止法の規制対象ではない施設で数多く利用されている。これらの線源は、核医学撮像装置の性能評価、ガンマカメラ用マーカなど医療において必要不可欠であり、医療法に品質管理に関する概念を導入し、条件付き免除などの考え方も利用し、これらの線源を医療法の中での適切に規制することが必要である。
3)規制対象が変化した場合の医療機関における影響を推測するとともに、現行の医療法施行規則で、医療機関の使用実態と乖離する部分を抽出した。これらの課題について、医療現場の実態に則した規制を整備するため、医療法施行規則において、「放射線の定義」及び「使用等の場所の制限」等の規定に関して、改正すべき規定のうち、第30条の5、30条の12、第30条の14、第30条の15、第30条の18、第30条の22、30条の23、第30条の25について、具体的な規則改正案を作成した。
4)国民に必要な医療を提供するために、「診療用放射線照射装置使用室」において、密封線源の永久挿入する組織内照射治療に用いる「診療用放射線照射器具」が使用できるよう法令を整備すべきであると考えられた。また、このような使用法を認めるにあたり、その安全を確保するために使用者が行う安全管理の留意点を提示した。
5)陽電子断層撮影検査が今後益々増加することが予想される一方で、その放射線安全確保のための手順は定められていない。このため診療時の各線源位置の平均存在数量や作業パターンを時系列的に調査し、放射線計測やシミュレーション計算を基にPET診療における放射線安全確保のための手順を提案した。また、核医学診療における規制上の課題として1)診療用放射性同位元素使用室における吸収補正用密封放射性同位元素の利用、2)診療用放射性同位元素の核医学撮像装置のメンテナンスのための使用、3)診療用放射性同位元素のセンチネルリンパ節の検出等のための使用、を抽出し適切と考えられる法令適用の考え方について提案した。
結論
本研究では、国際免除レベルをわが国の医療法に取り入れる際の課題を示し、その解決策を提示した。わが国の規制の整備にあたり、この研究のようなシミュレーションによる規制影響分析(regulatory impact analysis, RIA)の質の向上が、今後の課題になると考えられる。

公開日・更新日

公開日
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