文献情報
文献番号
200300085A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国の疾病負担に基づく保健医療研究分野の優先順位付けに関する予備的研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 敏彦(北里大学)
研究分担者(所属機関)
- 平尾智広(香川大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、行政施策立案の科学的根拠を創出することを主たる目的の一つとする厚生労働科学研究の研究費配分の優先順位付けについての現在の方法論を整理した上で、予備的に疾病負担と研究費配分との関係を調査し、保健医療研究の研究費配分の根拠として疾病負担を用いる意思決定システム開発のための研究を企画することである。
研究方法
1)方法論等に関する文献調査:医学文献データベースによる検索の他、これまでの厚生労働科学研究報告書などの国内文献、さらに国内外の関連分野の専門家に対して有用な文献の提供を依頼する。2)国内官庁統計データに関する情報収集および整理:利用可能なデータを収集・整理した上で、利用にあたりどのような校正が必要かどうかを検討する。3)国外の拠点研究機関への方法論に関する聞き取り調査:WHOは、疾病負担の現状について毎年の世界保健報告にまとめているが、次回の報告では方法の改訂が予定されているため、この情報をいち早く入手しておくことが必要である。また、米国、オランダ、オーストラリアなど国別の疾病負担推定の経験がある国では、それぞれ官庁データを利用する方法を用いており、このような国々の経験を把握しておくことは作業の効率化をする上で重要である。4)試験的算定および保健医療研究の現状との関連:現状で利用可能なデータを用いて、幾つかの方法によりわが国の疾病負担を試験的に算出する。その際には、データの信頼度を考慮し、感度分析を併せて実施する。5)今後の研究計画の策定:上記の過程を踏まえて、より確度の高い、施策に反映可能な、わが国の疾病負担の現状および将来予測を行うための研究計画を策定する。
結果と考察
1)方法論等に関する文献調査:医学文献データベースによる検索により、米国およびカナダにてDALYsを疾病負担指標として、疾患別疾病負担と研究費配分との関連についての論文を2件抽出し、内容を検討した。また、疾病負担の指標としての他、QALYsや医療費などをレビューし、また、WHOやオーストラリアの専門家とのディスカッションを通じて疾病負担指標としての妥当性を検討し、DALYsが現時点で疾病負担の指標として最も有効な指標であると確認した。2)保健医療研究の研究費配分における方法論についてのレビュー:1998年に設立された保健医療研究のためのグローバルフォーラム(Global Forum for Health Research)のこれまでの活動実績をレビューし、保健医療研究の研究費配分優先順位付けの根拠としての疾病負担の位置付けの検討を行い、疾病負担は研究費配分のための根拠として重要な一つの因子ではあるが、その他にも考慮すべき因子があり、その重要性の評価は各ステーキホルダーにより検討することが必要と考えられた。3)わが国のDALYsの試験的算定および保健医療研究の現状との関連:現状で利用可能なデータを用いて簡便法によりわが国の疾病負担を試験的に算出した。その結果、簡便法により算出した疾病別DALYsと厚生労働科学研究費を疾病別に割り振って合計した研究費総額には相関は認められるものの、疾病負担に較べ、感染症は研究費配分が多く、循環器疾患は低いことがわかった。各疾病の罹患率や障害の程度を用いた通常法によって算出したDALYsを用いた検討が今後必要である。
結論
疾病負担は保健・医療・福祉関連予資源の配分における科学的根拠となりうるものである。本研究では、まず疾病負担指標について整理を行い、疾病負担の代表的指標であるDALYs(Disability-adjusted Life Years、障害調整生存年)の意味と算出法を明らかにした。また先行研究における試算をレビューし、簡便法による試算を試みた。その結果、1.疾病負担指標は科学的根拠に基づいた政策決定、
資源配分に有益な指標であること、2.疾病負担の指標であるDALYsは死亡と障害をあわせた統合健康指標で、現時点で最適な指標といえること、3.簡便法は算出も容易で低コストであるが、正確性に欠け通常法に比べて科学的根拠が劣ること、4.わが国の政策応用のための疾病負担指標としてDALYsを推奨し、正確性の上からも通常法で算出することが望ましいとの結論を得た。
資源配分に有益な指標であること、2.疾病負担の指標であるDALYsは死亡と障害をあわせた統合健康指標で、現時点で最適な指標といえること、3.簡便法は算出も容易で低コストであるが、正確性に欠け通常法に比べて科学的根拠が劣ること、4.わが国の政策応用のための疾病負担指標としてDALYsを推奨し、正確性の上からも通常法で算出することが望ましいとの結論を得た。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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