線維筋痛症の実態調査に基づいた疾患概念の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200300080A
報告書区分
総括
研究課題名
線維筋痛症の実態調査に基づいた疾患概念の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
西岡 久寿樹(聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 青葉安里(聖マリアンナ医科大学神経精神科学)
  • 井上和彦(東京女子医科大学・附属第二病院整形外科)
  • 浦野房三(厚生連篠ノ井総合病院リウマチ科)
  • 尾崎承一(聖マリアンナ医大・難病治療研究センターリウマチ・膠原病・アレルギー内科)
  • 西海正彦(国立病院 東京医療センター内科(膠原病))
  • 松本美富士(山梨県立看護大学短期大学部内科(リウマチ学)
  • 臨床疫学)
  • 宮崎東洋(順天堂大学医学部・ペインクリニック痛風制御学・麻酔科学一般)
  • 村上正人(日本大学医学部・内科学教室心療内科学)
  • 行岡正雄(行岡医学研究会 行岡病院整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
-
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)線維筋痛症の疾患概念確立のための多くの潜在患者に対する実態調査。
2)線維筋痛症の臨床症状は、筋・骨格系を中心に激しい疼痛や種々の精神症状を呈するため、神経精神科、心療内科、小児科、神経内科など、整形外科等の領域で把握している種々の疾患に紛れ込んでいると考えられる。そのため広範囲に及ぶ疫学的な立場からのそれぞれの専門医による実態調査。
3)これらの関連各多科に渡る多彩な病態像の解析と本邦における臨床診断など及び治療の指針、啓発活動。
4)正確な患者数の把握のための疫学調査。
5)患者の病期の進行度に対応したFM診断のためのガイドライン作成。
6)ほとんど確立されていない本症に対する治療方針の確立。
以上の6点を主要研究目的として研究を遂行した。
研究方法
1)患者の実態把握
本研究班員の所属する各診療科において線維筋痛症と思われる患者の臨床症状の実態を把握した。
2)日本リウマチ財団の協力を得て、同財団に登録されているリウマチ専門医4,000名対象とした疫学調査を行なった。これをもとに疾患概念の検討を行なっている。
3)厚生労働省の「特定疾患の病疫に関する研究班」の協力を本邦においての病院を対象とし、無作為調査を行ない、調査を依頼している。(途中)
4)欧米の診断指針は本邦の患者にはほとんど役に立たないため、特に重症の患者を対象とした病類期分を作成し、それに基づいて本症の診断指針を作成した。
5)本疾患に対する啓発活動に役立つような情報提供活動を、関連する学会または団体を通して行なっている。(途中)
結果と考察
1)実態把握
本症の関心が高まるにつれ専門的に本症患者の治療にあたる施設には患者が集中し、直接的に主任研究者の関連する施設だけでも、本研究班発足後1年間で150名以上に上った。各研究班の所属する診療施設で、その患者数は350名以上に上り、病像はきわめて深刻である。すなわち疼痛に対する的確な診断や治療がなされていないため、患者のQOLは著しく低下していることが明らかにされた。
2)疫学調査
日本リウマチ財団に登録されているリウマチ登録医を受診している患者は途中集計の段階で1601,000人であるが、その大半はまだ未回答である。2)でのFM患者が受診しそうな全国の病院を対象とした調査でその全容が明らかになると、患者数は欧米並みになると考えられる。
3)病期分類
1990年に提唱された米国リウマチ学会の診断基準に適応しない患者数が多いため、研究班では病期の進行度に対応したステージ分類を作成し、それに基づいて診断及び進行度分類を作成した
4)病期分類
心療内科、精神神経科等、FM患者が受診しそうな科におけるFM患者の認識度を調査していたが、これらの診療科でも本症に対する認識度は低く、また患者の実態の一般へのより一層の啓発活動の必要性がある。
結論
今回の調査はいわば予備的な調査研究であり、研究結果の項目でも述べたように日本における本症の実態は単に医療面のみならず、患者自身のおかれている状況、QOLの低下等、極めて深刻である。今後の実態調査、疫学調査が進むにつれて、さらにその状況は深刻になっていることが考えられ、高度に細分化された医療体系のもとでは患者は本症に対する認識度が医療関係者の間で希薄なため、いわば「たらいまわし」にされている。
今後、本格的な疫学調査に基づいて患者の実態を的確に把握し、診断及び患者を受け入れる体制作り、治療方針の確立が急務である。

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