SARSに関する緊急研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200300076A
報告書区分
総括
研究課題名
SARSに関する緊急研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
吉倉 廣(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部信彦(国立感染症研究所感染症情報センター長)
  • 谷口清州(国立感染症研究所感染症情報センター第一室長)
  • 滝本秀美(国立健康・栄養研究所国際栄養協力室主任研究員)
  • 倉辻忠俊(国立国際医療センター研究所副所長)
  • 岩本愛吉(東京大学医科学研究所教授)
  • 内山巌雄(京都大学大学院工学研究科環境工学専攻教授)
  • 吉澤晋(愛知淑徳大学現代社会学部非常勤講師)
  • 山田章雄(国立感染症研究所獣医科学部長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
73,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症急性呼吸器症候群(SARS)の国内集団発生の防止には、検疫体制の強化等による本感染症の国内侵入の防止、患者の早期発見及び効果的な感染予防策の実施による二次感染の防止が重要であり、併せて正しい情報の収集・リスクの評価並びにその迅速な還元等を行う必要がある。本研究では、我が国の公衆衛生の水準や人権擁護の観点を考慮に入れ、我が国の実状に即した感染予防マニュアルや検疫マニュアルを作成し、医療や検疫の現場へと広く還元することを主たる目的とし、的確な疫学調査の実施による正しい情報の収集・分析及び感染源や感染経路の解明、科学的根拠に基づく予防策の確立、標準的治療法の開発、建築物衛生の観点からのSARS予防、環境媒介中におけるSARSコロナウイルスの生残性の検証等を行う事とした。
研究方法
かつて経験のないSARSに対する緊急行政対応の為であるので、内容をSARSの疫学情報収集と予防措置の研究を行うグループ(岡部、谷口)に加え、検疫(瀧本)、物品汚染(山田)、院内感染対策(倉辻、吉澤)、標準治療法(岩本)、流行時のリスク伝達(内山)に分担し、班研究としての効率を上げる事を狙った。主任研究者は、半年の研究期間中3回の連絡会議を召集し研究調整を行った。
結果と考察
SARSに関する世界の情報を収集しサーベイランスの為の電子情報システムを設計構築した(岡部)。SARS疫学調査ガイドラインを策定し、更に経験に基づき改定も行った。SARSのホームページを作成した(谷口)。
成田及び福岡空港でサーモグラフィーの有効性評価を行った。福岡では検疫対象者1日1700名で、3日間調査でcut-off価以上が86人いたが38度以上のものは1名のみであった。成田ではcut-off以上のものの中での38度以上の体温のものは22%程度である。福岡の例を考えると5000人中サーモグラフィーで引っかかったのが86名であるから、false-positive 1.7%で機械は十分な能力があると見て良いであろう。しかし、実際高熱の人の頻度が5000人に一人なので、このように大量のfalse-positiveを出すことになる事が分かった(瀧本)。
SARS院内感染の特性を抽出し、対策マニュアルを完成し厚生労働省結核感染症課に提出した(倉辻)。同時に、SARS感染に関し建築衛生学的な手法により対策法を提案した(吉澤)。
国外事例に基づきステロイドの使用をベースとする暫定的治療指針を策定した。インターフェロン、リバビリン、HIVプロテアーゼ拮抗剤の併用については今後の検討が必要である(岩本)。
環境中でのSARSの生残を調べる為リアルタイムPCRでSARSを0.1TCID50迄検出出来る条件を求め、これを用い次の結果を得た。カニクイザル経鼻接種で感染1週後ウイルス分離を試みたが、小腸回腸からはウイルスが検出されたが大腸、便には検出出来なかった。環境中の安定性を見ると、4度では3日間感染性低下はないが、室温では10-100分の1になり、20日で、5乗感染価が下がった。国内飼育ハクビシン13頭糞便は全て陰性であった(山田)。
SARSの事件の際の情報伝達につきアンケート調査を行い、問題点の発掘を行った(内山)。
当初はSARSウイルス自体の入手が困難な程であったが、短期間に種々の問題を解決し、当面、次年度の本格的な研究につながる基盤が出来上がったと考える。
結論

公開日・更新日

公開日
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更新日
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