診療報酬における医師技術評価に関する研究:内保連-外保連方式

文献情報

文献番号
200300019A
報告書区分
総括
研究課題名
診療報酬における医師技術評価に関する研究:内保連-外保連方式
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
茅野 眞男(国立病院東京医療センター 循環器科)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 久夫(学習院大学経済学部教授)
  • 田倉 智之(株式会社三菱総合研究所主任研究員)
  • 一色 高明(帝京大学医学部附属病院循環器科教授)
  • 青木 矩彦(近畿大学医学部内分泌・代謝・糖尿病内科教授)
  • 石田 暉(東海大学医学部専門診療学系教授)
  • 棟方 昭博(弘前大学医学部内科学第一講座教授)
  • 高橋 進(日本大学大学院グローバルビジネス研究科教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
背景として中央社会保険医療協議会(中医協)診療報酬基本問題小委員会に対して平成15年11月に、同診療報酬調査専門調査組織医療技術評価分科会から、医療技術の客観的評価を行なうために難易度・時間・技術力に関する提言が行われた。一方内科系学会社会保険連合(内保連)は医療技術評価に時間要素の他に“総合負荷"の採用を希望している。本研究の目的はその提唱された総合負荷が時間とどのような関係にあるのかを内保連の協力を得て検討することである。
研究方法
“総合負荷"とはある患者に対して診療行為を行う際の負荷全て、すなわち時間・身体的ストレス・精神的ストレス・判断の難しさ・手技の難しさ・それを得るための経験等を全て総合した負担感のことである。米国の診療報酬支払いresource based relative value scale(RBRVS)でも使われた計量心理学的方法を使い、専門医が必要と考える時間(必要時間)と総合負荷をDelphi法で測定した。初年度は合計623の医療サービス設問を作り以下の3分類をそれぞれ付与した.すなわち1)重症分類(緊急・重症・標準の3水準)、2)部門分類(循環器・神経内科・消化器・腎透析・開業医・リハビリ・心臓リハビリ)、3)技術行為分類(外来診療43%・訪問診療・説明同意・入院診療・生体検査18%・手術処置・画像診断)である。部門間の関係をみるために全部門共通設問をそのなかに作成した。各専門分野の医師が一堂に会するexpert panelを15回開催し、個々の医療サービスについて必要時間・ 総合負荷・必要な経験年数(=責任卒年)の回答が得た.全体班会議を4回開いて、まず総合負荷と必要時間の関係を検討した。
先行研究で は“負荷密度"(1分当りの総合負荷で0.6-0.2の間に分布)を算出したが、今回の研究では総合負荷を従属変数y、必要時間を説明変数xとする1次式モデルy=ax+bに関して、各分類ごとに単回帰分析・重回帰分析を用い,時間当たり総合負荷量(傾き)aとサービス開始時の総合負荷量(切片)bに分類された項目との間で違いがあるのかを解析した.
解析用データとして, 1設問につきDelphi法で複数回答が得られていたデータを1設問1回答(中央値)の形式に要約し、4人以上の医師から回答が得られていた576設問を解析対象にとりあげた.さらに解析対象を共通設問と外来診療技術に限定して、部門分類別解析を行った.外来技術評価は、現在特定機能病院で行われているDPCのように疾患毎に分類するのではなく、部門別(専門科別)という大きな単位で集計した。
結果と考察
重症分類では予想に反して緊急・重症・標準の間で、傾きと切片に違いはないとされた.共通設問限定の部門分類別解析では各部門間で傾きと切片に有意差はなく、以上から全設問を解析対象とすることが妥当と考えられた。
技術分類別解析において決定係数が0.65とモデルの当てはまりはよかった.傾きの推定値は0.26±0.02で有意であり、必要時間が長くなると総合負荷は増えると考えられた.傾きでは,外来診療と比べて入院診療・生体検査・訪問診療で時間当たりの総合負荷が小さいと考えられた.切片では,外来診療と比べて入院診療・生体検査・手術処置でそれぞれ有意差があり、その3技術は外来診療と比べてサービス開始時の総合負荷量が高いと考えられた.予想に反して、外来診療と比べて説明同意が異なる技術とする根拠はなかったが、解析対象から重症と緊急を除き標準のみにすると結果は微妙に異なった。
外来診療に限定して部門分類別解析をおこなうと、腎透析部門のモデル式はy=0.08x+3.02であり、腎透析と比べて,神経内科・循環器・心リハでは切片が低いが傾きは逆に大きいと考えられた.この意味するところは支払い方法で例えば全部門共通式が採用された場合、神経内科等には不利になると思われる。
部門分類別解析結果は,外れ値と技術分類分布差で影響されると考えられる。例えば手術処置は、循環器部門では46問中13問もあるが、他分野では少ない。
今回調査した医療サービスは限定されたものだが、調査外の社会保険収載項目や未収載新規項目の総合負荷を将来決定する際に基本となるデータと考えられる。本調査では疾患頻度は調査していないので、医療費総額に与える影響はわからない。また専門医間の差異も調査していない。
結論
総合負荷は必要時間と多くの分類項目で有意に相関し、切片(サービス開始時の総合負荷量)しか考慮しない現行診療報酬は技術を適切に反映していないといえる。時間要素に補正係数(本文中の傾きと切片)をかければ解決する項目もあるが、解析モデルが不適切な項目もある。第二年度は、経験年数(責任卒年)を加味すれば更にモデル適合性が良くなるか、特に手術に関しては卒業年次をいれた外保連式も使い検討する。外来診療に偏った調査対象技術を管理指導・在宅訪問・手術等に拡大し、部門を癌治療・血液・内分泌糖尿病等にも広げたい。診療において医師以外のコメディカルが加わる場合は、総合負荷等にどのような影響を与えるかを検討する。

公開日・更新日

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