ホームレス者の医療ニーズと医療保障システムのあり方に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200300012A
報告書区分
総括
研究課題名
ホームレス者の医療ニーズと医療保障システムのあり方に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 研二(大阪府立大学社会福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 逢坂隆子(四天王寺国際仏教大学大学院人文社会学研究科)
  • 高鳥毛敏雄(大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学)
  • 下内昭(大阪市保健所)
  • 中山徹(大阪府立大学社会福祉学部)
  • 的場梁次(大阪大学大学院医学系研究科法医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大阪市内におけるホームレス者を対象に、質問紙調査、健康診査データ分析、大阪社会医療センター付属病院入院患者調査、監察医事務所保管の死亡データの分析などを通じて、その健康破壊・生活破壊の実態を明らかにする。また、医療ニーズと医療保障のあり方を検討する。
研究方法
1.高齢者特別清掃事業登録者に対する健診事業および健康相談活動、2.大阪社会医療センター付属病院における入院患者調査、3.大阪府監察医事務所が扱ったホームレス死亡例の行政解剖記録等の分析の3つのアプローチを行った。
結果と考察
1.健診結果および大阪社会医療センター入院患者の医学検査等の分析より、以下のことを明らかにした。ホームレス者にはやせている者が全国平均と比して多い。血液検査結果では赤血球数・総蛋白・総コレステロール値等が低い者が多い。歯の状況が極めて劣悪な者が多い。野宿生活者は強いストレスを有して暮らしている。食事摂取に事欠き必要な栄養摂取ができていない。同年齢男性に比べて高血圧者が多い。結核に関してはきわめて高い有病率である。医療を要する人の割合が多いが、必要な治療を受けていない、など。2.特別清掃事業従事者に対して、健診実施後、受診者の健康相談を実施しており、実践と研究をむすびつけるとともに、健康保持のための態度の変容を図ろうとしている。次年度以降、健診受診者の追跡調査を行なう予定である。3.ホームレス者の社会復帰を支援するための心理的・社会的支援を行うソーシャルワーカー等の役割を検討し、病院と他の社会資源とのネットワークの構築、生活保護ワーカー・保健師・ケアマネージャー等との連携、利用者への心理的サポート、家族関係の調整、必要な医療の継続の確保などの課題を見いだした。4.大阪府監察医事務所が扱ったホームレス死亡例の行政解剖記録等を分析し、肺結核などの感染症や肝疾患以外に、膵線維症や冠動脈の細動脈硬化、心筋線維症などの問題となる疾患があることを明らかにした。こうした所見は、ホームレス者の健康管理上、有益な基礎データとなるものである。
結論
ホームレス者は、一般の同年齢の者に比べて、健康が阻害された人々がきわめて多い。生活のストレス、食事内容の貧困さ、飲酒、医療受診から排除されていることなどが、その要因と考えられた。こうした健康阻害要因を改善するには、医療扶助の単給を認めるなどの対策を講じることによって、必要な医療を受けられるようにすること、健康を保持できる食事の確保、必要最小限の居住条件の確保が要請される。

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