負荷履歴の影響を考慮した経年圧力設備の高信頼度弾塑性破壊評価手法の開発

文献情報

文献番号
200201423A
報告書区分
総括
研究課題名
負荷履歴の影響を考慮した経年圧力設備の高信頼度弾塑性破壊評価手法の開発
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 哲也(独立行政法人産業安全研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 本田尚(独立行政法人産業安全研究所)
  • 松原雅昭(群馬大学)
  • 伊澤悟(小山高等工業専門学校)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
7,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では各種産業プラントにおける圧力設備の経年化が急速に進んでいるが、経済の低成長化のために更新は困難であり、既存設備の寿命延伸に対する要求が強くなっている。このため、既存圧力設備の寿命延伸を可能にすることを目的として、破壊力学の手法を取り入れた維持基準の整備が産官学の協力体制の下で進められている。しかし、従来の弾塑性破壊評価では、負荷履歴等の影響は考慮されていないため、長期間運転した圧力容器や配管の破壊評価に適用した場合には、非安全側の評価となっている可能性がある。そこで本研究ではこれまで研究の行われていない弾塑性破壊挙動に及ぼす負荷履歴の影響を明らかにするとともに、その影響を信頼性工学的手法によって解析して現状の簡易弾塑性破壊評価手法へ組み入れることにより、信頼性の高い弾塑性破壊評価手法を開発することを目的とする。
研究方法
本研究は3年計画で独立行政法人産業安全研究所、群馬大学工学部、小山工業高等専門学校の3ヶ所で実施する。初年度に当たる平成14年度は次のような方法で研究を実施する。
まず、産業安全研究所では、R6法オプション1を用いてパラメータの影響度評価を行い、各確率因子が破壊確率に及ぼす影響度を明らかにする。また、赤外線計測に有限要素解析を併用したハイブリッド赤外線計測による応力拡大係数の非接触評価手法を開発する。
群馬大学、小山工業高等専門学校においては、既に開発済みの軸力・曲げ同時負荷制御試験機の改良を行う。そして、オーステナイト系ステンレス鋼製の切欠き付き平板を用いて、(1)軸力・曲げ同時負荷試験、(2)軸力負荷後曲げ試験、(3)曲げ負荷後軸力試験の3種類の負荷履歴について実験を行い、塑性崩壊点や崩壊形態の違いを調べる。また、光弾性法によって切欠き付き平板の塑性崩壊を評価する手法を開発する。
さらに、本研究は互いに離れた3研究機関の共同実験であるため、遠隔地共同実験者との実験データの共有及び試験の円滑な実施のため、インターネットを用いて軸力・曲げ同時負荷制御試験機を遠隔制御し、実験データの取得が出来るようにすることを試みる。
結果と考察
産業安全研究所においては、周方向貫通き裂付き配管の曲げ破壊に対して、R6法に基づくパラメータの確率論的影響度評価を行い、曲げモーメントが最も大きな影響を及ぼすことや降伏応力と弾塑性破壊靭性の影響度は破壊評価線図上の位置で変化することなどを明らかにした。ただし、この解析結果は特定の解析対象・条件下で得られたものであるから、今後種々の解析対象・条件下で同様の解析を行う必要がある。また、赤外線計測法と有限要素法を組み合わせたハイブリッド赤外線計測法の開発を行った。これにより、応力拡大係数範囲の保守的な評価が可能になった。しかし、解析解と比較して10%程度大きい値となっているため、今後誤差を小さくするための検討が必要である。
一方、群馬大学、小山工業高等専門学校においては、既に開発済みの軸力・曲げ同時負荷制御試験機を改良して試験速度・精度の改善を図るとともに、軸力と曲げの負荷順序を3種類に変えたオーステナイト系ステンレス鋼製の切欠き付き平板を用いて負荷履歴が塑性崩壊荷重に及ぼす影響を明らかにした。その結果、従来の理論崩壊曲線は軸力と曲げの組み合わせとは関係なく、安全側の評価を与えることが明らかになった。今後は別の材料、試験片形状について同様の結果が得られるかについて検討する必要がある。また、光弾性被膜法によって負荷履歴による塑性崩壊形態の違いを調べた結果、塑性変形域における最大すべり線は、光弾性縞の進展経路と非常によい一致を示した。
さらに、軸力・曲げ同時負荷制御試験機のインターネットによる遠隔制御では、群馬大学をサーバー、産業安全研究所、小山工業高等専門学校をクライアントとして、試験条件の入力、試験の実施及びデータの共有に成功した。
結論
平成14年度の研究により、以下の結論を得た。
(1) 周方向切欠き付配管の曲げ破壊における確率論的影響度評価を行い、曲げモーメントが弾塑性破壊おける信頼性に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。
(2) ハイブリッド赤外線計測法の開発を行い、応力拡大係数範囲の保守的評価を可能にした。
(3) オーステナイトステンレス鋼製切欠き付き平板を用いて負荷履歴を変化させた弾塑性破壊実験を行い、負荷履歴が塑性崩壊点に及ぼす影響を明らかにした。
(4) 光弾性法で負荷履歴による塑性崩壊形態の違いを明らかにした。
(5) 互いに離れた3研究機関での共同研究を効率的に行うために、インターネットによる弾塑性破壊試験機の遠隔制御を試み、基礎実験に成功した。

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