健康増進効果の高い保健指導の方法等に関する研究-情報化による支援体制-

文献情報

文献番号
200201418A
報告書区分
総括
研究課題名
健康増進効果の高い保健指導の方法等に関する研究-情報化による支援体制-
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 勝美(聖マリアンナ医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田行恭(桐蔭横浜大学)
  • 伊津野孝(東邦大学医学部)
  • 須賀万智(聖マリアンナ医科大学)
  • 市村 匠(広島市立大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康管理活動において、従来の健康診断は早期発見早期治療の手段としていたが、健康増進活動の支援から健康診断を活用することが期待される。そのためには、従来からの健康異常を診断するだけでなく、健康診断をはじめとする一貫した健康増進活動の環境を整備することが望まれる。一方、職域地域において情報環境が整備されてきており、個人の携帯端末をはじめインターネットの利用などを介して継続的にかつ個別的で時間空間的な制約を無く効果的な保健指導体制が提供できるものと期待される。本研究では、本研究では、ネットワーク対応の保健指導、糖尿病治療支援システムの開発、現行の一版健診の診断から保健指導コメントを生成するアルゴリズムの開発を検討した。
研究方法
以下の課題について、分担研究を行った。(1) ネットワーク対応の保健指導:ネットワーク対応の保健指導の事例調査では、対象領域を健康管理まで広げ、①在宅健康管理、②地域保健情報システム、③インターネットによる健康管理の3つの分野について、自治体のシステム開発状況を調査、③については、職域健診における導入の状況も調査した。次に商品化されているシステムの調査を行った。商品の中で、導入実績を持つNTTグループが提供しているインターネットによる健康管理システムを事例として採り上げ、システムの機能を分析し、そのメリット、課題を整理した。(2) 糖尿病治療支援システム-システム開発の背景:PubMedによる文献検索から、これまで報告されたコンピュータ・システム、とくに、糖尿病治療を支援するコンピュータ・システムと生活習慣改善を支援するコンピュータ・システムについて調べた。そして、糖尿病患者の食事・運動療法を支援するコンピュータ・システムの開発にむけ、具体的構想をまとめた。(3) 糖尿病治療支援システム-システムの開発の具体的構想:意思決定支援とインターネットによる双方向性の情報提供による,以下の2つを主な機能にする.
A 食事・運動療法計画の作成(Guideline-based Decision Support; GDS),B インターネットを利用したフォローアップとアドバイスの提供(Tele-Consultation; TC)(4) 生活習慣病予防のための保健指導システムの構築:現行の一版健康診査の評価において、検査値の以上の出現前に、生活習慣の偏りに保健指導を行うことを目的に、自覚症状のない段階での保健指導に対して行動科学的な保健指導のあり方に関するアルゴリズムを開発することを目的に、今年度は必要とする問診情報の整理を行った。
結果と考察
(1) ネットワーク対応の保健指導:在宅健康管理は、バイタルセンサー、TV電話等を用いた遠隔健康管理、保健指導であり、1980年代から検討が開始され、自治体等で試行導入されていたが、TV電話が高価であったことやネットワークインフラの整備が不十分であったこともあって、期待されていたほどの普及はみなかった。しかし、1990年代後半からのTV電話の低価格化とネットワークインフラの充実とともに、近年このシステムの検討が活発化してきている。地域保健情報システムは、住民の健康意識の向上を狙い、医療機関・保健所・公民館等をネットワークで結び住民に対し、健康情報を提供するものである。インターネットによる健康管理は、Webやe-mailにより、受診者個人が健診の結果を閲覧するとともに保健指導を受けるものでインターネットの普及が大きな原動力となっている。(2) 糖尿病治療支援システム-システム開発の背景:背景として、糖尿病治療の現状、コンピュータ支援システムに期待される点を整理して、過去の糖尿病治療支援システムの総括を行い、糖尿病治療において重要な一次予防を支援するシステムの意義について整理した。糖尿病治療支援システムに要求される上限として、a 診療ガイドラインなど、ある程度確立された知識を基礎にする。b 診療ガイドラインを越えない範囲において、個々の患者の特性を考慮した目標や方針を提案(もしくはアドバイスを提供)する。c 経済的負担や作業負担を最小限にする。d 医師その他、医療従事者に対しては日常診療業務の流れを乱さない。患者に対しては生活パターンを乱さない。以上の点から、意思決定支援による治療計画の作成、あるいはインターネットによる双方向性の情報提供による医師-患者間の情報の共有や患者アドバイスを実現しうるコンピュータ・システムは1つの打開策になると考えられた(3) 糖尿病治療支援システム-システムの開発の具体的構想:システムの概略として、knowledge control center下に診療所や糖尿病患者のアクセスが可能なように環境を設計した。機能としては、Guideline-based decision support(GDS)とTele-communication(TC)の設計が行われた。(4) 生活習慣病予防のための保健指導システムの構築:保健指導のために必要とする栄養指導に関しては、食生活習慣の把握のためには、糖尿病予防の栄養教育のための65食品リストからなる食物摂取頻度調査票(FFQW65)や自記式食事歴法質問表(Self-administered diet history questionnaire; DHQ)及びその解析ソフトを用いて行った個別栄養評価・指導も行われているが、健診システムのなかに取り込むのは問題がある。簡便に食物摂取状況が把握できる質問票の開発が必要である。喫煙・飲酒指導として、禁煙・飲酒指導を行う場合には指導に対するコンプライアンスが低いことや、指導が実現不可能なものになってしまうことが多い問題がある。受診者の生活様式変容の動機付けが必要である。運動指導に関しては、運動指導する場合には普段の運動量を把握することの困難性、運動できる環境が未整備であったり、指導後の継続性の問題がある。経年変化による保健指導として、健康診断は同一個人の経年的な健康データの追跡調査であり、この個人変動を生かした評価法について5回以上の連続値をもとに、判断する方法について項目間で血糖値、白血球は早期の判定が可能であるのに対してヘモグロビンA1cでは難しいとのことが示され、項目間での適応に注意が必要であることが示された。
結論
健康増進の観点から、健康診断成績は保健指導と連携することにより効果的な指
導に連携できるものと期待される。特に、個別的かつ時間的空間的に近接した保健指導を実現するためには、IT環境を生かした保健指導システムの応用性が期待される。また、現状の健診項目から個別性のある保健指導を生成するアルゴリズムの開発も現状の健診から効果的な保健指導を期待する方法であると考えられる。

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